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総員7名事故1名

 半分は行楽とは言え、名目は訓練だ。それぞれ自分の得意武器は当然の事ながら、携行している。

 誠一は光剣の柄を握り締めるものの、相手魔獣の巨大さに「これで歯が立つのか?」と思わざるを得なかった。

 出現した魔獣は、先程ポリペイアンが話してくれたクジラ型の魔獣そのものだった。

 推定全長は25mほど。ペインの言う最大値には至らないが、十分すぎるほどデカい!

 しかも太さはクジラの大きさそのものだ。これだけ体積があると体感的には30m以上の存在感がある。

 幅は5m位は有るだろうか? 剣だの槍だので如何ほどのダメージを与えられるものなのか。

「こいつの目的は食いもん……人間だよな? 俺たちが目的なのか?」

 誠一が迫るクジラ魔獣を観察しながらペインに聞く。魔獣の進行速度はペインが話してくれた通りで結構遅く、対策を練る時間が稼げるのが唯一の幸運か?

「まあ、目の前に来れば喰い付くだろうけど、ここは上陸の足場にしただけだろ。本命は西の漁村だろうな。人口もそこそこいるし、商売用の乾物も作っているし」

「何人くらい居るんだろう?」

「ちょっと待ってよ……」

 そういうとペインは指をこめかみに当てて念を込める。索敵でも使っているのだろうか。

「ざっと300人と言ったところか。若い衆を中心に自警団らしいのが集まりつつあるけど……まあ歯が立たないだろうな」

「最上級神サマとしては、やっぱり人間界には直接手は出せない、か?」

 ペインは豊満な胸を下から抱えるように腕組みしながらため息をついた。 

「悪いね、まずはキミたちだけで何とかしてくれ」

と、あっさり。

「あのな!」

 誠一の声が荒ぶる。

「あんなバケモノ、人間の5人や6人でどうしようってんだよ! 通常、アレ倒すのに軍なら中隊どころか大隊が要るぞ!」

 と、苦虫噛み潰しまくりな顔で怒鳴る誠一。無理もない、ナルの村ではあのオークですらあれだけ苦労したのだ。

「そうなんだけどね~、こっちも辛い立場でさあ」

「昼間、ラーやホーラがやりあう時は止めたじゃないか。何故こっちは手を出さない!? 両方とも海を守るためなら出来る事なんじゃないのか!?」

「だからあれは魔族と神族を止めたんだよ。今度のは皆、人間界の問題だ」

「ミカド計画には俺たちが必要って可能性もあるんだろ? 死んじまったらどうするよ?」

「そだね~。だから瀕死の重傷くらい負ってもらわないと、手出し出来ないって言うかさ~?」

「とんでもねぇコトさらッと言ってんじゃねぇよ! 致命傷で済んだね、とかアホなギャグ飛ばす気じゃねぇだろな!?」

「あ、そのギャグいいね! 頂き! てかさぁ、何とか頑張ってよ、うまく行ったら僕の胸、自由に触っていいからさぁ」

「よし、人間の底力ってもんを見せてやる」

 即答した誠一は砂浜に飛び出していった。

 ペインはしばらく目を点にして立ち竦んでいた。


 誠一の非常呼集で美月や容子らが集結した頃、クジラ魔獣は浜辺にほぼ上陸を果たしていた。

 上陸しやすい砂浜にたどり着いた後、西へ転身して漁村を狙うつもりだろう。

 別荘と漁村を遮っている丘を越えられる前に仕留められるかどうか、そこが勝負の分かれ目になりそうだ。

「ん? 良はどうした?」

 そう言えば良二の姿が見えない。念話はこの別荘地にいる全員に向けて放たれたから、聞こえていないはずはない。

「うん、見当たらないから、さっきもう一度念話送ったんだけど、応答が無いの!」

 容子が答えた。

「ん? 妙な話だな? しかしあいつを待ってるわけにもいかん。標的が漁村に入いったら障害物が多すぎて美月の火力が活かせなくなる」

 今のところ、美月の火球攻撃が威力、射程共に一番効果が期待できる。それには開けた場所が良い。

「美月、擲弾筒は持ってきてるか?」

 誠一が美月に聞いた。先だっての遠征時に、巨大オークを仕留めるために徹甲爆裂火球を撃ち出した、あのアタッチメントだ。

「持ってるけど……魔力をダブルチャージしても、さすがにあんなバケモノ仕留められないよ!」

 ダブルチャージ――通常の魔力より、文字通り二倍の魔力を詰め込んで放つ方法だ。装薬銃の弾薬で、規格の倍量の火薬を入れて威力を倍増させるやり方と同じだ。

 だが、それにも限界はある。美月の魔力とスキルを以ってすればトリプルチャージも出来なくもないが、例えアダマンタイトや古代樹であってもその充填と放出には負担がかかり過ぎて損傷しかねないことが訓練中の実験で分かっている。最後の一発で確実に仕留められる確証が持てない限り、実質的にダブルチャージが実戦における限度であった。

「分かっている、前脚だけでも無力化したいんだ。あの図体だ、片足だけ潰せれば動く速度は大幅に制限できる。後は時間をかけて削るしかねえな」

「わかった。じゃあ、三分……ううん、二分ちょうだい! その間に魔力チャージするから!」

「よし、美月は火球砲撃の準備! シーナは漁村に行って、自警団を下がらせろ! 砲撃の次は俺が雷撃するから巻き込まれる恐れがある!」

「わかりました、主様!」

 シーナは指示を受けて、漁村に向かって走り出した。

「容子は奴の目を狙って砂嵐で攻撃! 少しでも脚止めしろ!」

「了解!」

 容子もシーナの後に続いて走り出す。目を狙える位置へ移動だ。

「メアとカリンは俺と来い! 美月の砲撃、俺の雷撃の痕を狙って斬り込め!」

「わかったわ!」

「了解っす!」

 誠一とメア・カリンも走り出す。漁村を遮る丘に登り、美月の砲撃後に無防備な背中に憑りついて雷撃や斬撃を加えるのだ。

 誠一らは容子を追い抜き、丘の斜面を駆け上がった。

 それと同時に容子の風魔法が浜の砂を巻き上げ始めた。

 竜巻の様相を呈しているが、どうやら闇雲に砂をぶつけるものでは無いらしい。

 砂の竜巻が高く舞い上がるが、その天辺はどんどん細く、鋭くなっていく。以前話していた風のドリルをモノにしたのか?

 容子の目が険しくなり、狙い定めるようにクジラ魔獣の目を睨む。

「…………ポインテッド・トルネ!」

 容子はその詠唱と共に錫杖の先を魔獣の目を狙って向けた。同時に、うねっていた尖った竜巻の先が一気に加速され、魔獣の目に向かって行った。

 魔獣も、その、己が目を狙った容子の攻撃に気が付いた。

 鈍重なクジラ魔獣とは言え、目を守るために瞼を閉じる速度は素早い。容子の攻撃は空振りに終わるかに見えた。

 しかし容子のドリルさながらの竜巻は巻き上げた砂を刃にするかのごとく回転させており、閉じた瞼の隙間に無理矢理ねじり込まれていく。

「ハァッ!」

 容子は掛け声を放ちながら念を込め、ねじ込まれる砂の動きを、今度は四方へ発散させる方向に変化させた。

 パアァン!

 それはまるで砂の手榴弾、若しくは散弾地雷を思わせる爆裂を引き起こした。

 爆発した砂の粒は、魔獣の左の瞼を吹き飛ばし、眼球を木端微塵に破壊した。

「グバォワアアアアアー!」

 眼球を抉られたクジラ魔獣は、痛みと視界が半減したショックで頭部を激しく振りまくって暴れた。正に半狂乱の如くだ。

 頭を振りまくるが、その頭が殊のほか重いのか、前脚は左右とも踏ん張って浜に固定されていた。

 ――ここだ!

 その状況を逃さず、美月はクジラの左前脚に照準を定める。

「チャージ完了! 徹甲爆裂火球いきます!」

 ドゥヴォオオォォーン!

 前回の爆裂火球より、ひときわ大きな撃発音が夜の海岸に響き渡る。

 それは銃声と言うより、もはや砲声と言っても過言では無かった。

 放たれた火球は美月の狙い通り、奴の左脚に上部に命中、

 ドヴァアァァン!

浜に響き渡る強烈な爆発音とともに、爆裂弾が炸裂した脚から肉片・血飛沫と共に爆炎が噴き出した。

「ギギャアアァァ!」

 眼球に続いて左脚も自由を奪われ、クジラ魔獣は踏ん張りがきかず、その巨体を転倒させた。ほぼ、誠一の目論見通りだ。

「見事だ美月! メア、カリン行くぞ!」

 誠一はメアをおぶり、カリンを前に抱きかかえてクジラの背中を狙い、風魔法での噴射でアシストしながら丘を蹴り上げるように飛びあがった。

「あたしも抱っこの方がいいなあ」

 お姫様抱っこしてもらえなかったメアがブー垂れる。

「また今度な。降りるぞ! 着地と同時に雷撃かますから、その後は思いっきり切り刻め!」

「「了解!」」

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