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命中

 実は良二くん、ライラとあそこまで良い雰囲気になって来ていたのに、カリンと容子の乱入で未だ卒業できず留年中なのである。

「三竦みじゃあるまいしね~。これ片付いても今日は泊まりでしょ? チャンスじゃん」

「ま、決めるのは良くんてことで三人とも納得はしてんだけどね」

「良さん決められるかしらね~」

「全員に気を使ってくれてるってのはわかるんだけどねぇ」

「ホーラさまと黒さんみたいに、逆レイプ級でないとダメだったりして」

「そういや隊長も食えない男よね。必死に奥さんに義理立てするかと思ったら」

「神さまも魔王様もしっかり手玉にとっちゃってるし。メアやシーナはどうなんだろ?」

「二人ともキスまではしてもらってるみたいだけど、お情けはまだだってボヤいてたな。お薬要るしね~」

「モテ期は無かったとか言ってるけど、もう4人だもんね」

「モテ期が無かったってのはそうなんじゃない? いい性格してるし、日本でモテるとは思えないわ」

「そうね、悪党じゃないし頼りがいもあるけど、恋人とか、結婚相手にとか、そちらの見方は無いわ~」

「無理ね~、結婚が人生七不思議筆頭は納得だわ」

「あのキャラじゃ奥さんも苦労してたんじゃない~?」

「色モノにはモテモテ、お姉さんの女にモテない分犬猫にモテるってのは当たりね」

 もう言われ放題である。しかしまあ仕方なかろう。上官と言うものは部下の愚痴や悪口のはけ口になるのも仕事の内なのだ。


(美月、容子、そちらの様子は?)

 言われ放題から念話が来た。

「容子です。美月と共に配置につきました。いつでも実行できます」

(よし、これから目標を挑発する。別命なければ、そちらの判断で撃って良し)

「了解、お気を付けて」

(お前たちもな)

と、ここで念話は終了。作戦開始である。

 誠一が立てた基本的な作戦は狙撃であった。

 大地を走る相手なら遊撃隊でなくとも何とかなったろうが、彼奴は空を飛ぶ。

 おまけにその速度も速く、それだけでも狙うのは困難である上に、俊敏な機動性を持っていては、空に上がられた時点でほぼ、こちらの負けである。

 美月に散弾火球の魔法を取得させるやり方も考えられたが、鴨クラスの大きさならともかくも相手がでかすぎる。

 そうなると飛び立つ前に攻撃するしかあるまい、との結論で狙撃による作戦が立案されたのだ。

 そのため、先程の音速越えの火球を撃ち出す魔法の実現は必須条件であった。

 銃声がしてから弾着したのでは、そのわずかな時間で(かわ)されるかもしれない。

 故に音速を超える火球射撃が必要だったのだ。

「さてと……風の状況はどうかな?」

 そう美月に尋ねられ、容子は風魔法による風読みを行った。

「……300mから380mあたり……。周りより1割程度強い、右からの流れがあるわね。周期は……15~6秒くらいかな?」

「じゃ、2ほど修正して、と」

 下を覗くと、良二、誠一、メアが50m感覚で広がり、目標への接近を開始していた。

 不自然ではないが音を隠す気も無い、そんな歩き方だ。

 こうした陽動で、いい具合に鳥魔獣の気を引き付ける。

 上手くすれば、魔獣から一撃の攻撃も受けずにカタが付くかも……

 

 良二らが250m付近まで近づいた時、良二は水剣を、誠一は光剣を起動させた。

 メアも慣れない長刀を抜いた。とにかく自然に目立て? との誠一の指示だ。

 グウウゥ……

 自分の領域に入ってきた侵入者に気付いたらしい鳥魔獣は、小さく呻きながらのっそりと立ち上がり、洞窟から周りを警戒しつつ、顔を出した。首をキョロキョロと動かして、辺りを見回し始める。

「頭出た」

 容子が報告。美月も照準眼鏡を覗いて確認。

「……頭を撃てれば一撃だけど……ホント、鳥の頭はよく動くわねぇ。やっぱ狙うもんじゃないわ」

 と、美月がボヤくように漏らす。

「もうちょい、もうちょい出てきて……」

 美月は狙撃錫杖に念を込め始めた。

 実銃なら機関部に当たるところが既に薬室であり、そこから濃縮された魔素による火球を撃ち出すイメージに繋げるわけであるが、同時に銃身部に相当するアダマンタイトの直管内にも魔力を送り、ライフリングと同様の効果を作り出し、火球の直進安定性を向上させる。

 それ故、一発当たりの魔力の消費量は多く、連射は利かない。精々、5~6秒に一発だ。

「翼を広げるには、あの洞窟は狭い。必ず前に出てくるはず……」

 容子は観測員用遠眼鏡越しに魔獣を睨みながら予想した。


 平地では良二ら三人が列を乱さず、全員同時に歩きから小走りに移り、徐々に接近する素振りを見せる。

 鳥魔獣は岩の出っ張りに身を乗り出し、良二、誠一、メアの位置を視認。

 バサ……ズサ……

 ゆっくり両の翼を広げる鳥魔獣。次いで、

ザ!

三人に対し攻撃するべく翼を全開して飛び上がるため、腰を落とし、脚を踏ん張った。

 その時である。


 パァン!


 と、何かが破裂したかの音とともに、鳥魔獣は自分の左の翼に未だ(かつ)てない激しい衝撃を受けた。

 音に面食らって一瞬間を置いて頭を左に振った鳥魔獣の目に、見事に大穴が空いた自分の翼が映った。

 続いて直後、


 ヴォォーン!


遠くから響く豪音を聞いた。

 鳥魔獣が狙撃錫杖の撃発音に気付く前の着弾。

 美月の火球は見事に音速を越えて見せたのだ。


「向かって右側の翼に着弾、風が出たからそのまま、もう一発」

「OK!」

 次弾の魔力をチャージした美月は、続いて撃発用の念を込める。何が起こったか分からず、翼の損傷ですぐに飛び立つ事も叶わぬまま、頭をキョロキョロさせて索敵している鳥魔獣に向けて、美月は第二射を放つ。

 ヴォォッン!

 二発目は風の影響を受けて左に流れ、後退を始めた標的の胴体――腹部を捉え、まともにこれを撃ち抜いた。

 着弾の衝撃で鳥魔獣は脚の力が抜け、その場に転倒した。

「命~中~。お見事、美月」

 フーッとひと息つく美月。

 改めて照準遠眼鏡を覗くと、鳥魔獣は瀕死ながら尚も立ち上がろうとしている。

 だが、胴体を撃ち抜かれているので、中々力が入らないと見える。

(やったか?)

 再び誠一から念話。

「胴体に命中してますが、無力化には至っていません、もう一発行きます」

 容子がそう報告すると、美月も狙い直した。

「風は止まってるわ、10秒以内なら左へ2戻しでいけるよ」

「了解。さて、どこを狙おっかなっと」

 美月は、踏ん張る鳥魔獣の前脚の付け根部分、人間で言えば肩のあたりに照準を合わせた。

 ブルパップ型でもそうだが狙撃錫杖には引金と言うものはない。

 安全装置も撃発も美月の意思によるもので、マインドトリガーとでも言えばよいのか?

 実銃に有りがちな、撃鉄・引金の作動等による弾道への影響が出るとかは全くない。その意味では、装薬銃より高性能と言えるかもしれない。当然ロシア語で考える必要もない。


 ヴォッン!

 三回目の発射音。

 その放たれた三発目は踏ん張っていた鳥魔獣の脚部分に狙い通りに着弾し、食い込んだ火球は前脚付け根の関節をほぼ完全に粉砕した。

 支えを無くした鳥魔獣は再度転倒。勢い余ってそのまま岩場から転げ落ちていった。

 羽の損傷と、胴体、前脚付け根への着弾で、魔獣は翼を羽搏(はばた)かせることも叶わず落下し、一直線に地面と激突した。

 良二は魔素ブーストダッシュで落下地点に急行。まだ僅かに動きはあるものの、魔獣はもはや反撃が出来る状態ではない。

 到着と同時に良二は水剣で鳥魔獣の首を斬り落とし、とどめとした。


(お見事、美月。容子もお疲れ。撤収してくれ)

 誠一からの労いの念話に、了解です、お疲れ様でした、と返事をし、容子と美月は撤収準備に入った。

「任務完了! 全て計画通りにいったね」

「魔獣の処理して村に戻るのがお昼過ぎごろ。いろいろ手続きして……やっぱ今日帰るのは無理ね」

 意外と半端な時間になってしまい、容子はボヤき混じりに言った。

「いいじゃん、その分のんびり出来るじゃない。ここのジャガイモ美味しいしぃ」

「だからヤバいんじゃない。夕べ食べ過ぎちゃったわよ。また体重計が怖いわ~」

「運動、運動! 良さんと散歩がてら、逢引きしてらっしゃ~い」

 分解した狙撃錫杖を背負いながら美月が容子をからかった。

「そうねぇ……邪魔者はいないし……………………いい機会かもねぇ……」

 嗾けといてなんだが……容子の思わぬ悪い顔にちょっと冷や汗の美月であった。

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