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遠征 山間の村ナル

 王都より西へ、馬車で半日ちょっと離れたところの山間の村、ナルの村に出張って来た我らが魔導団特別遊撃隊。

 昨日の夕方に村入りして、今日は朝から現場に出向き、只今、村人からの情報と照らし合わせている最中である。

 ターゲットは空を飛ぶ魔獣だ。

 大きさは2mを優に超え、馬のような、しかし馬よりもずんぐりした図体に鳥の、それも猛禽類のような頭とくちばしと爪を持っているとの事だ。

 その身体を空に飛ばす巨大な翼を広げると、全幅は5mを上回るという。

 イメージとしてはグリフォンに近いのだろうか?

 鳥の様でありながら前足も持っており、野を駆けるスピードは馬並みの速さだとの証言もある。

 飛行中の俊敏さも、でかい図体の割にツバメの如き挙動を見せ、村の自警団はもちろん、手練れの冒険者の弓攻撃、火球など魔導士による遠隔攻撃も見事に躱されてしまうと言う。

 手を拱いた領主は討伐を王国に正式要請し、軍内で協議の結果、良二ら特別遊撃隊にお鉢が回って来たというわけだ。 

 他の魔獣がほぼほぼそうであるように、こいつも獰猛そのもので家畜の山羊、羊、同じ大きさ位の馬や牛まで襲い、当然人間も狙われる。

 昨夜、一行は村に到着してから村長より詳しい情報確認等、協議していた。

 その間にも、犠牲になった村民の遺族や関係者からの敵討ち、村の平穏を嘆願する者が相次ぎ、その悲劇、被害は良二たちにも十分に伝わってきていた。



「情報通り……山腹に洞窟があるな。あそこがねぐらって事か……」

 誠一はロッタ工房に特注していた遠眼鏡で睨みながら確認した。

 良二たちが展開している場所は、山腹と言うより崖に近い急斜面の麓から、300mほど離れた岩陰だ。そこから麓までは、遮蔽物や段差のない開けた草原で、洞窟からは丸見えである。

 今まで自警団や冒険者が寝込みを襲うべく、偽装しながら密かに接近を試みるも、鋭い聴覚で気付かれ、凄まじい視力で発見され返討ちにあっている。

「近寄れるのはここまでかな? この先は隠れるところがホントに無いね」

 岩陰から周りの様子を眺めていた良二も同様の感想を持った。

「メアの忍び足でも近寄れないかな?」

 良二が提案するが、

「無理っすね。こう雑草が生い茂ってちゃ、足の裏だけの問題じゃ無いっすから」

と、敢え無く却下。

「なるほど、自警団や冒険者じゃ手詰まりになる訳だ」

 誠一が口をへの字に曲げる。

「寝込みは襲えない、かと言って一番近づいてこの距離じゃ、弓矢や遠隔攻撃の魔法を使ったって初速も飛距離も足りない。届いたとしても余裕で(かわ)される」

「留守の間に、ねぐらに罠仕掛けても、すぐ見破られたそうっすね?」

「猛禽類の眼は300m離れたところのネズミや虫を識別できる視力を持ってる。おまけに人間には感知できねぇ紫外線を感じる事も出来るってぇ話だ。人間の目は誤魔化せても奴の眼は誤魔化せねぇって、ところかな?」

「黒さんて、そう言う色んな雑学知ってるねぇ? やっぱ年の功?」

「これは自衛隊時代に、偽装の訓練をしてた時の教官が余談で教えてくれた事なんだよ。要するに受け売りだ。もっとも地球ではネットのおかげで再検証できてたが」

 良二の問いに、事実と謙遜を交えて答える誠一。

「でも、鍛冶仕事や木工作業も出来るし、料理は出来るし、政治の考え方も行けるし、ハーブティやらラノベやアニメの話題も行けるし、守備範囲広すぎだよ」

「知識なんざ、どれだけ詰め込んだって持ってるだけじゃ意味が無ぇ。人のために役立てたり、役立てる人に伝授して初めて価値が出るってもんだ」

「そうは言っても、そのおかげで俺たちも助かってるんだぜ?」

「器用貧乏ってやつだ。あちこち広く浅くバラけ過ぎてて、大きな事は出来ねぇ」

 そう言いながら誠一は水筒の水を飲んで喉を潤した。

「通用するんだからいいじゃん。今回の作戦だって俺たちじゃ考えつかなかったし」

「美月のセンスあってこそだがな。あの二人、そろそろ配置に着けれたかな?」

 誠一は、水筒のキャップを締めながら、美月と容子が布陣する予定の場所、標的のねぐらに向かって8時方向にある高台に目を向けた。


 容子と美月は、鳥魔獣のねぐらを視認できる高台に到着していた。

 鳥魔獣が巣にしている洞窟は、麓から30mくらいの高さに位置している。

 洞窟の下部には3m程度の大きな岩の出っ張りがあり、下からの攻撃の妨げになっていて、最短距離の真下に来たとしてもこのでっぱりが盾変わりとなって、遠隔攻撃を当てるのは困難なのだ。

 そこで上から狙う方法が思い浮かぶが、この高台は20mほど上から目標の洞窟を臨める場所で距離的にも一番近いのであるが、対象まで直線で500m強もあるのだ。通常なら観測は出来ても、攻撃に使える立地ではない。あまりにも距離が有り過ぎる。

 だがこの立地で、誠一の知識と美月の火属性魔法のセンスを融合した作戦が、これから行われようとしていた。


 美月は、例のブルパップ型錫杖を発注した時に、同じく製作を依頼した長尺の錫杖を用意していた。

 全長は1.2mほど。先端より20cm辺りに二脚が装着されていて、狙いが安定するようになっており、中心より少し下がったところの上部に専用遠眼鏡が装着されている。

 床尾と握把部分はアレジンおすすめの古代樹で出来ており、その各種寸法は最終段階で美月に合わせて調整され、握把を握った時の手触り、頬付けした時の床尾の肌触りはとても良好であった。

 そう、これはもはや錫杖とは呼べない。シルエットだけを見れば、完全に狙撃銃そのものである。

 デザイン的には細身で軽量な、SVDドラグノフのそれに良く似ていた。恐らく誠一の趣味であろう。

 照準用遠眼鏡はさすがにミルドットまでは無く、単純なクロスラインしか無いが解像度は高く、実に見やすいとは美月の弁。

 遠眼鏡越しに狙ってみると、しっかり洞窟内が視認できる。

 隣で容子が自分で使う観測用遠眼鏡の準備を終えていた。

 三脚で固定し、洞窟内を臨む。

「うん、きれいに見える。アレジンさん、いい仕事してるわね」

 洞窟辺りを狙いながら容子が感嘆。

「でも黒さんもムチャ言ってくれるわ。火球を音速を超えて飛ばせろとか」

「音より遅いと魔獣に気付かれちゃうからね~。美月も隊長と凄く訓練してたよね」

「音速越えのイメージなんてさ~。ムズかったよ~」

「どうやったの?」

「遠くの花火を見た時みたいな? 音の遅れの感覚を逆にしたような?」

「それで実際にやっちゃうんだから、あんたマジで射撃センスあるんじゃない?」

「自分でも驚いてるよ~」

 フフっと笑い合う二人。

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