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綱紀粛正

 外はそろそろ冷えて来たのか、良二と胸出……ライラが入ってきたようだ。

 因みに良二も誠一と同様、頭痛に襲われてそうな顔であった。お互い、頭痛が持病になりそうだ。

「ええ、どこかの発情オバサンのこと言ってたんだけどぉ~」

「出す胸が無いからって僻まないでほしいわねぇ~」

 そのライラとて深夜アニメのエロ担当キャラのように爆乳をこれでもかと強調しているわけではなく、シャツの間から谷間がコンニチハしている程度なのだが。

 しかし、どう頭を巡らせばここまで言葉を刃物に出来るのか? そりゃ国家のトップ階級は話術も武器かもしないけど……先程のイチャラブからの展開に良二は頭が追いつかない。

「で、少佐? 答、聞いてないわよ。入れてくれるのよね?」

「答は何度も言っている、入隊は認められない!」

 毅然と答える誠一。だが彼もわかってはいる。カリンは、「入隊を許可する」と言う以外は答として認めない事を。それ以外は耳に入れないと言う事も。

「ふ~ん、じゃあ今日聞いたこと、外でバラしちゃおうかなぁ~?」

 すっとぼけた顔と口調で脅迫モードに入るカリン殿下。

 それを聞いて、さすがに良二も割って入る。

「ちょ! タチ悪ぃだろ、それ! 仮にも王女が脅迫かよ!」

「あら? リョウジ知らないの? 外交の基本は経済と軍事力、つまり賄賂と恫喝よ?」

 開き直るなー!

 んでライラ。

「今日の事バラす~? いいわよ、その前にあんたバラしてやっから~」

 ちょっとぉ! バラすの意味、変わってんですけど!

「少佐? アーゼナル皇国皇帝府からの推薦をとってもいいのよ? 入隊を認めて」

「部屋がありません!」

 誠一はすでにヤケ気味だ。実際、自室の拡張で外来用の部屋は無くなってしまったし。

「ならリョウジと一緒の部屋でいいわ」

「お、おま!」 

「ざけんじゃないわよ! それならこっちも考えがあるわ! 隊長さん、あたしもここ、入隊するからね!」

 ズコー!?

 ライラの入隊宣言に誠一は、椅子から転げ落ちるほどずっこけた。

 冗談じゃない。カリン以上に冗談じゃない! 魔界の大魔王さまが軍役とか、んなバケモン相手に命令出来るか! 

 無いわ! 絶対無いわ!!

「おい、良……」

 誠一は疲れてきた。

「え? 何?」

「お前に任せた。俺、机の修理するから」

 更に現実から逃げ始めた。

「ちょ! なに丸投げしてんだよ! 隊長の仕事だろこれ!」

 今まであんなカッコつけといて今更逃げ打つとかそうはいくか! てな思いの良二。当然と言や当然。

「でもよぉ、大元の原因はとどの詰まり、お前の交友関係だろがよ。お前の甲斐性でどうにかせえよ。な?」

「責任転嫁すんなよ! 隊長としてビシッと入隊断りゃいいんじゃんか!」

「このコたち、俺よりお前の方が言う事聞きそうだしよぉ……うん、頼んだ」

 ……ほう? そう言う事かい……それならそれで考えがあるぞ? 良二の目付きが些か悪くなった。

「いいよ! その代わり俺に任せるんなら二人とも入隊認めても文句言うなよ?」

「ちょ! おま! ふざけんじゃねえぞ! それをお前にやめさせろって言ってんだぞ!?」

「任せるってそういう事だろ~? 責任は黒さんだけどなぁ!」

 ライラvsカリンに続いて良二vs誠一も始まった。さて、そうなると?


「いいかげんにしなさい! あんたたち!」


 風紀委員長お出ましである。

「さっきから聞いてりゃ、揃いも揃って自分勝手な事ばかり言って! 隊の規律ってもんを何だと思ってるの!」

 新隊舎が出来上がり、良二が朝帰りしたころからメキメキ頭角を現してきた? 容子委員長のお説教開始である。

「ライラさん! あなたとカリン殿下とで今まで何があったのか知らないけど、ここで喧嘩する正当な理由は有るの? それの鞘当てのあげく、我が隊に入隊を希望する正当な道理は有るの!?」

「え! そ、それは~、そう言われますとぉ~……」

「魔界じゃ大魔王陛下かもしれないけど、ここでは普通にライラさん! そうだったわね!?」

「は、はい! 勿論です!」

 意外な人が、意外な立ち位置から説教してきてライラは気圧されてしまった。

「カリン殿下!」

「え? 私!?」

「カリンてお名前の方は殿下だけでしょ! あなたは、元々あたしたちの召喚騒動には無関係なのに居座ったうえ、喧嘩やらかすわ、無理やりな入隊要求するわ! それが臣民の上に立つ者の言動ですか!」

「そ、そりゃ言われてみればそうだけど! で、でも居座りは外交官特権もあることだし!」

「あたしは殿下の命の恩人ですよねぇ? 恩人の言うことが聞けないの!?」

「ず、ずるいわよ! そこでそれ出すなんて!」

「特権で道理捻じ曲げるのと、どっちがズルいですか?」

「う、ううう……」

 カリン撃沈。

「隊~長~~?」

 やっぱ俺もか! 誠一は思わず嫁に説教される気分になった。

「何を自分の職務、良さんに丸投げしてんですか! それが指揮官のする事ですか!?」

「え、あ、いや~、ほら、俺って病み上がりだし? 疲れてるし? こういう時のために良に副隊長やらせてるわけだし!?」

「さっき、ホーラさまをあれだけイジって、ジャレまくっていたわよねぇ~?」

「あ、いや。あれは!」

 まあ、言い訳出来んわなぁ……

「どんな状況でも部下の尻拭いも、やってのけての上官でしょう!」

「すんませんでしたー!」

 誠一陥落。

「良さ~ん?」

「は、はい……」

「モテモテでよろしゅうございますねぇ~?」

「い、いや、それは……」

「いくらモテようが知った事じゃないけど隊内で痴話げんかとかしないで頂戴! 目の前でハグとかイチャラブとか目障りなのよ!」

「容子、そりゃちょっと私情が……」

 さすがに偏ってるので誠一が口を出すが、

「あん!?」

睨まれて怖かったので引っ込めました……

 で、矛先は戻りまして……

「全く、良さんは服務規定や風紀、綱紀を何だと思ってるの!」

「いや、だから俺が焚き付けてるわけでも無くてさ……」

「だったらさっさと収拾つけなさいよ! 大元はあなたなんだから、上官に甘えてばっかじゃ道理が通らないでしょ!」

「収拾つけるったってさ……」

と、煮え切らない良二。惚れた女の子相手に好きだと宣言出来るまでにはなったが、修羅場の収め方など分かろうはずもない……

「もう! ……とにかくライラさん、カリン殿下!」

「「はい!」」

「あなた方の入隊は、隊長も言ってたけど認めるわけにはいきません! なにより志望理由が良さんと一緒にいたいからって、仮にも軍に入る理由になんかならないでしょ!」

 正論である。基本、軍は戦うための組織である。

 が、正論言われたからってそれで即納得、なわけもなく、ライラもカリンも渋面満面だ。

「課業中はダメだけど、お昼休みや5時以降の課業後は会えるんだから納得しなさいよ。ライラさんはパスがあるし、カリン殿下は特権で入場できるでしょ?」

 もっともライラはパス関係なしに、転移で好き勝手にやって来そうだが。

「でも私は命を救ってくれた恩返しも、したいのよ。私もリョウジを救う側に立ちたいの!」

 カリンもえらく入れ込んだものである。良二とは会ってからまだ1日ちょっとしかたっていないのに。

 もっともその中身が濃すぎるし、脳裏に強烈に焼き付いたとしてもまあ、やむを得ないところではあるが。

「我が隊は痩せても枯れてもエスエリア王国の軍隊。他国の臣民を受け入れるわけにはいかない。これはどの国の軍隊でも同じでしょうが?」

 と、誠一も補足する。

「でも、ほら、軍が冒険者を雇って共同作戦とかは珍しくないでしょ? だから、少佐が私を傭兵とか外人部隊とかで雇ってくれれば可能なんじゃ?」

「んな余裕ある訳ねえでしょ!? 少佐だの士官だの言っても俸給は最低の一号俸だよ? それで、ブルボンで飲むたびに、隊長だからって支払いの半分タカられてんだよ? 俺、酒飲めねぇから普通でもワリカン負けするってぇのによ!」

 それを聞いたカリンは遊撃隊の面々に目を向けるが、良二を含め全員が目を逸らした。

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