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またまた

「さて。何からお話しすればよろしいかな?」

 魔界の賢者は誠一を見据えて訊ねた。初見でも思った事だが、その眼差しは誠一のそれより鋭く、そして深いと、良二には直感できた。

 誠一はどう出るのか? 良二は誠一に視線を移して注目した。

 その誠一は同じく賢者を見据えながら切り出した。

「勇者新生計画の進捗状況を、お教えいただければ嬉しいのですが?」

「!」

「!……」

 ライラをはじめ魔界天界組の眼が反応した。

 良二たちも反応はしたがどちらかと言えば疑問形の反応だ。初めて聞くワードに何だそりゃ? と言った感じだ。

 だがライラ達の反応はわずかではあるものの、焦燥の類だと感じる。

 

 勇者新生計画?


 今回の召喚を含む作戦の本筋だろうか? 良二の脳裏にそんな想像が浮かんでくる。

 同時に、先程のサル芝居、あながち事実も入っているのか? とも。

 容子や美月らも大なり小なりそんな感じだった。

 ライラやホーラらは平静を装ってはいるが、眉のあたりに強張りが感じられる。

 ……黒さん、どこまで知ってる? 見抜いてる?

 良二はローゲンセンの返答を待った。

「……クロダ殿、でしたな?」

 賢者はそう言うと一旦眼を閉じ、フーっと鼻からひと息つきながら続けた。

「老婆心ながら言わせていただくが……そのような手法はあまり乱発するものではありませんぞ?」

 ローゲンセンは戒めるような口調でそう言うと、若干上目線で誠一をジロッと見据えた。

 対して睨まれた誠一は、しばし賢者と視線を合わせたままで微動だにしなかった。

 だが、やがて口元に不敵な笑みを浮かべながら、

「失礼いたしました……」

と、観念するように謝罪の意を示した。

「やはりこの世に生まれて50年やそこらの私が賢者殿を出し抜こうなど、身の程を弁えぬ言動でした。お許し願いたい」

 そう言いながら誠一はゆっくり頭を下げた。

 またハッタリかい! 良二は胸内でそう叫ばざるを得なかった。容子や美月も眉間にしわを寄せた。漫画やアニメなら、ズコーっとコケてるところだろう。

 んで、数万年以上生きてて先程、その生まれて50年かそこらの鼻たれ小僧の手管に引っ掛かったライラやホーラは、冷ややかな目で誠一を睨んでいた。

「いや、貴殿の胸の内を察するに致し方ない事と判断しましょう。小官としても今回の横紙破りな方法しか策定出来なかった事、心苦しくは思っておりますが……」

「異世界からの召喚……魔法学の無い我々からすれば、想像もつかない方法ではありますね」

「正直に言わせていただくと我々とて、全ての全体像が見えているわけではございません。ただ、このアデス三界の安定を図るための計画だと認識して頂きたい」

「思うに、魔素異変の頃から端を発する?」

「いや、それ以前からでしょう。魔素異変はその経過の出来事と考えております」

 ここで誠一は話が原因云々に偏りはじめた事に気付き、話題を戻すことにした。

 原因・原点にも興味は尽きないが、今は現状の把握が最優先だ。

「しかし、沢田君にどんな任務を負わせるのかは、すでに明らかなのでしょう? それもお聞きするわけにはいかないのですか?」

「サワダ卿にはその安定を担う依り代として一肌脱いで頂くことになります。三界の安定が図られたあとは皆さまと共に元の世界、チキュウでしたな? お帰り頂くことに……」

 そこまで聞いて美月はホッとした表情を見せた。彼女にとって、とにかく史郎の無事が一番の気掛かりだ。


「そうなりますと、やはり我々は不要な存在になりますね?」

 誠一がさらに問いかける。そこは良二にも気掛かりな部分だ。

 なるほど、聞いた限りでは確かに俺たちはその三界を安定させる計画には不要なはずだ。

 ライラが見染めてくれたおかげで自分は召喚の対象にされたが、アデスのための召喚とはとても言えない。

 ましてや完全に巻き添えに過ぎない誠一・美月・容子らはアデスにとって、異世界から来てまで存在している意味がない。

 良二は、そう考えると、それを許しているアデスと言う世界に、天界、魔界、人間界、今まで関わったそこに住む人々に、強い疑問と言うか、違和感を感じざるを得ないでいる。ホント、モヤモヤする。

「……そのはずでした。召喚儀式の結果を聞いた時、申し訳ないが皆さんには御退場願う事にもなりかねないとの考えも過ぎりました」

 それを聞くと、さすがに容子・美月は徐に嫌な顔をした。当然であろう、言葉は選んではいるが結局は自分らの抹殺である。

 なぜかバカ正直に心情を吐露した賢者はさらに続ける。

「ですが、それが好まらざる事象であるならば、我々がどうこうする間もなくアデス世界そのものが皆さんを拒否したはず。小官は直ちに天界の時空神方に連絡を取り、状況を確認して頂きました」

「時の流れですね?」

「左様、そのような事が起きれば時の流れに異常が出ないはずはなく、サワダ卿召喚にしても先程も申しました通り、常軌から外れたやり方ですのでその恐れは十分に予想出来ます次第。故にホーラさま始め、時空神の方々には三界のどこかに、その乱れた流れの影響が現れないか警戒を厳にして頂いておりました。それが……」

「全く異常なしだった……」

 ホーラが結論を引き受けた。

「ホントに拍子抜けするほどだった。我から一番下の下級神まで総出で三界の流れを見つめていたのだが……全然、変わらなかった」

 部屋の中の誰もが頭を傾げた。得心が行くような行かないような、スッキリもしないしモヤモヤするばかり。

「そんな……」

 容子が呟くように言う。

「テクニアの粉塵爆発……あの程度で時の流れが乱れて、ホーラさまがお怒りになって。なのに、よその世界から5人も存在しないはずの人間がやって来たのに……それも本当に必要な人以外4人もがイレギュラーな存在なのに……何故……」

 容子ならずとも当然の疑問であろう。

 それらの詳しい事情を知らないカリンだけは、フンジンバクハツ? 何? その香ばしい響き……てな印象を持っていた。

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