カリンと言う名のお姫様 6
人から指を差されると言う事を、とても嫌がる人は結構いる。
今からお前を刺すぞと言う予告みたいに感じて不快に思う人もいる。
良二は、あまり気分良くは感じないが、取り立てて騒ぐ気は無いタイプだ。
だがしかし……
「それで? 何の用かな?」
良二は自分にビシッと指を差し続けているツインドリルのロリッ娘……と言って差し支え無さそうな少女に聞いた。
思いっきり昂った気持ちに水をかけ、
思いっきり期待に膨らんだ胸をしぼませ、
思いっきり反応し始めた下半身をビルの爆破解体のごとく崩してくれたこの小娘に、今までの人生で一番の憮然とした言い方で聞いた。
「あなた、アーゼナル皇国の臣民でしょ!?」
エスエリアとは明らかに違う、華美な色使いではあるものの、やや和装を思わせる民族衣装と言った雰囲気の服を纏い、未だ指差しをやめずに妙なことを聞いてくる小童を見ていた良二とライラは、まるでからくり人形さながらに、ギギギ~っとした動きでお互い顔を見合わせた。
ライラの眼も、せっかくいい雰囲気だったのに何を水差してくれてんのよ、このジャリン娘! と言いたげであったように良二にも見える。
かてて加えて、「あんたアーゼナル国民でしょ!」などと、何を見当違いの事を聞きよるんだと。何を、お互いが一生懸命育てたこの雰囲気をブチ壊してくれてんだと。そう言わんばかりの眼の色……。
「違うけど?」
良二は目線を小娘に移すと、今までしたことの無い、これまた最上級の不愛想な口調で返事した。
「ウソおっしゃい! あなたの肌、目鼻立ち、体格、話し方。どれをとってもアーゼナル皇国、それも我がアマテラ国の臣民以外にないわ!」
ジャリン娘は相も変わらず指をビシッと差したまま、良二の返事を嘘と決めつけやがった。良二もさすがにイラっと来る。
更に言えばアーゼナル皇国なる国に関しては良二はほぼ、メイスらから教えてもらった事くらいしか知識が無い。てか正直なところ名前しか知らん!
ゆえに皇国臣民呼ばわりされても違うとしか言いようが無いし、目鼻立ちがどうとか、アマテラ国がなんだとか言われても全くわからん。
が、少しよく見るとこのツインテドリルの童は、肌の色がライラやフィリアの様な白い肌ではなく、自分や容子らと同じく黄色に近い。ぱっちりとした目が印象深い顔立ちだが良二ら日本人みたいな? いやまあ、今はそれはともかく!
「いきなり嘘と決めつけるなんて、ちょおっとばかし失礼なんじゃないの、お嬢ちゃん?」
ライラが良二より先に反論した。お嬢ちゃん、と言う言葉には思い切り毒気が込められているのは良二にも伝わってくる。しかし、それに答える小娘は小娘で、
「あなたには聞いてないわよ。黙ってらっしゃい!」
と、まあ、坊主が屏風に上手に絵を描いたような高飛車な言い方である。
良二には、言われたライラのこめかみに#の字が浮いてる気がした。
ライラの気持ちは十分わかる良二であったが、言われているのは自分だし、ここは俺が言わないと、であった。と言うワケで毅然として小娘に反論。
「俺はエスエリア王国の臣民だし、アーゼナル皇国には行ったことも無いよ」
事実である。なんせこの世界に来てまだ3カ月と経っていないのだし、ましてやアマテラ国なんて国名すら初耳だ。
しかしツインテのガキんちょは、
「不敬な男ね! なぜそこまで我らアマテラ臣民であることを隠すの! 納得できる理由があるなら言いなさい。私は寛大な人間なの。道理の通った理由ならそれを酌むのはやぶさかではないわ」
と正に糠に釘。どんな根拠か知らないが、このロリ娘は良二がアマテラ国の臣民だと信じて疑わないご様子だ。ここまでくると良二もイラつきはもちろんあるが、なぜそこまで言い切るのか? そもアマテラ国ってなんぞね? という興味も湧いてきた。
「アマテラぁ? アーゼナルでも極東のド田舎じゃん!」
地理的な疑問はライラが答えてくれた。まあライラはずっとアデス人だし、そう言う事の知識もあるだろうが……田舎呼ばわりは火に油ではなかろうか?
「無礼よ、そこの女! 口の利き方がなってないわ! こんな都市計画もろくに考えず手あたり次第、あてずっぽうに町づくりとか、こっちの方がよっぽど遅れてるじゃないの! 目的地までたどり着くのに効率の悪い事悪い事! そういうことは実際に我が国に来て、我が国の見事に区画整理された農地や町の様子をその目で見てから言うのね! 単位面積当たり、人口当たりの農産物の生産量も税収も、他国より頭一つも二つも抜きん出ているわ!」
指差しをやめた小童は、ここぞとばかりに身振り手振りを加えて、母国の優秀さをアピールし始めた。
「陸続きでありながら険しい山脈に阻まれて、海路以外に隣国へも行けない辺境国家がなんですか? なぁんですかぁ~?」
ライラも負けずに言い返す。サゲる気満々、貶す気満々。だが良二としては、そんな中でもアマテラの情報を聞かせてくれるくれるのはありがたい話。
――へ~、ライラってそう言うことも詳しいのかなぁ。メアの話聞くと、当然のことながらエスエリアには義務教育なんてものは無いし、そんな遠くの外国の知識など一般的ではないように思うが、詳しいなら他の国の事もいつか聞いてみようかな……?
って、そんなん考えている場合ではない!




