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カリンと言う名のお姫様 4

「とまあ、そんなおまけが付いちゃってね」

 ガサ入れから二日たった日のお昼、休日の良二はライラと一緒に街のオープンカフェで昼食を摂っていた。

「あっはっは~、不意打ちにもほどがあるね~。で、シーナちゃんはそれで収まったの~?」

「なんか黒さんにせがんでたみたいだけど、まあ俺らがどうこう言える立場じゃないから容子たちと部屋出ちゃったよ」

「隊長さんも大変だね~。ただでさえ、魔王様と神さま相手にしなくちゃいけないのに、若い娘にまで慕われてね~」

「本来のストライクゾーンは40~50歳くらいらしいんだけどね」

 下はシーナの17歳(メアは21歳、良二と同い歳)で上はラーの18700歳と真ん中がまるで無い。まあ、見た目はホーラもラーも30前半くらいではあるのだが、それでも本来、射程外であろう。

「リョウくん、羨ましい?」

 ライラが若干目を細めて聞く。

「前にも言ってたよね、それ? 同じだよ、俺はそんなに、たくさんの女性と同時に付き合える甲斐性は無いし、自信も無いし」

「覚悟があれば、自信は後でいいんじゃなかったっけ?」

「な~んか意地悪だなあ。て言うか、ライラはどうなの? その……」

「うん?」

「例えば、その……俺が他の女性と同時に付き合うとか……」

「誰かいるの? そう言う人……」

「いや! だから、例えばだよ、例えば!」

「うーん、そうねぇ……まあ、その人に寄りけりだろうな~。蹴り飛ばしてやりたいってくらい小憎たらしい人だったら当然イヤだけど、一緒に旦那様支えていこう! って思える人なら……いいか、な?」

「そ、そうかぁ……」

 聞いておいて何だが、やはり良二はまだ、アデスのそう言った風潮に戸惑いを感じざるを得ない。シーナやメアにしてもそうだが、こちらでは一夫多妻(おそらくはその逆も)抵抗が無いのだろうか?

「アデ……うぉ!」

「ん? どしたの?」

 アデスの人って、みんなそう言う考え方なの? 良二はそんな質問をしてしまうところだった。

 が、(すんで)のところでそれを何とか飲み込んだ。それは、自分が異世界人だと白状してしまうも同然の問いかけである。

 ライラにはまだ、自分の身上を教えてはいないし、知られるわけにはいかない。

「い、いや、なんでもない……」

「やっぱいるの? お姫様のお屋敷って綺麗なメイドさんとか多いもんね~。同僚のヨウコさん、ミツキさんだっけ? 二人とも可愛いしい~」

 なんで容子や美月まで引っ張り出すかな!? とか思う良二だったが、まあ気のある相手はいないし、第一自分はライラで手いっぱいだし。

「いないってば。そんなに器用でも無いし余裕も無いよ。今の俺はライラで……」

「うん? あたしが? なに?」

「あ、だからその……俺、ライラの事で……一杯一杯だから……」

 最後はボソボソ声である。

 しかしライラにはちゃんと届いていた様だ。ニコ~っと笑うライラさん。

「うれしいな。あたしもリョウくんだけだよ?」

「今のところ……かな?」

「あ~、そう言うイジワル言うの~? あ、さっきの仕返しかな~?」

「そう言うつもりじゃないけどね~。俺も嬉しいしな」

 フフフ、ハハハ。二人は一緒に笑い合った。

 

 傍から見れば、良二とライラのやり取りは、恋人同士の甘~い語らいに見えるだろう。

 だが実際、良二の頭ン中では怒涛の冷や汗の濁流が渦巻いている。

 こんなこと言って呆れられないか?

 アホなこと言って滑ってないか?

 自覚なく、たわけたことをそれらしく言ってしまい失望されないか?

 デートを重ね、最初の頃ほどでは無いにしろ、未だにそう言うところが慣れていない良二であった。

 でもライラは相変わらずニコニコしてくれている。滑ってるわけでも呆れられているわけでもなさそうだ。

 ならばそろそろ自信を持って来ても良いのではないか?

 構えなくても普通に地で言っていれば良いのではないか?

 だが、残念ながら中々そうはならないのが良二なのである。

 とは言うものの……

「……あの時、嬉しかったからね……」

 ライラがしんみりと言った。

「え?」

「あの宿の朝……」

 安宿での、あの朝。始めて口付けを交わしたあの朝……

「……ん、俺もだよ」

 あの朝、あの宿で、良二は告白した。

 もっと気の利いた言い方は出来なかったかな?

 あんな成り行きで、ああいう安宿が舞台で良かったのか?

 御多分に漏れず、良二も反省する事しきりではあった。

 だが、自分の気持ちはしっかり、ライラに受け入れてもらえたし、今はこうして彼女と向き合ってる。それで十分だろう。

「でも……朝だったからね~」

「ぐっすり寝ちゃったもんなぁ、お互い」

「バタバタしたよね~」

「そのまま出勤だもんなぁ」

 何かもどかしいというか、お互いが肝心の本筋に近寄りたいのに近寄れないというか……そんな会話である……

 が、ライラ。

「あの時……リョウくんが寝ちゃう前にあたしが起きてたら……」

「え?」

「リョウくん、どうしてた?」

「ど、どうって……」

 こ、これは……さらに進展の予感……で、いいのか? ライラの問いは……んなもん、その先の事に決まってますよねぇ? それ以外、無いですよねぇ!

 ここは踏み切るべきか! 行く手に石橋があっても、必ず叩いて確認しなければならないわけでもあるまい! 恋愛の神さま、オラに力を分けてくれー! 

「その……さ、誘った、かも……」

 うお! 言っちまった、言っちまった! 調子に乗った? 乗り過ぎましたか!?

 や、だってそんな雰囲気じゃん! ここで言わなきゃさあ! 言わなきゃダメっしょ! メアじゃないけどヘタレっしょ!

 いやいや、言い訳めいた事、考えてる場合じゃねぇ!

 ライラだよ、彼女の反応だよ! 彼女……

「そ、そう……」

 ライラは……はにかんでいた。ショックを受けたり、嫌がったりと言う感じではない、と思う……。眼がちょっと、泳いでいる。ヤベ、やっぱかわいい!

(あの手の宿は、24時間っすよ)

 メアから吹き込まれた、いらん情報が脳裏をよぎる。

 昼間っから? いや、俺、門限あるし、夕食終わってからとかバタバタするし。

 とは言え、こんな真昼間……誘えるもんなのか!? いや、ダメってことないし!

 需要あるから24時間なんだし!

 ……もう、行くこと前提でしかモノ、考えてねーし……

「あ、あの、ライラ?」

「う、うん!」

「よ、よか……」

 よかったら、これから……良二は根性振り絞って、そう言おうと腹を括ったのだった。

 が、

「そこのあなた!」

 へ?

「あなたよ!」

 突然の声の乱入に良二はもちろん、ライラも時が止まる。

 良二は声のした方に顔を向けた。

 そこには、身の丈145……以下?、 歳の頃13~4くらい? 金髪に近い栗色の髪の毛をツインドリルにしている少女が立っていた。

 その少女は些か険しい表情を浮かべながら、良二に右手人差し指をビシッと向けていた。

 ――誰だよ? 

 良二にとってその少女は全くの初対面であった。

 と言うか、そんな少女との縁とか付き合いなど日本・アデス両界共に全然思い当たらない。

 ――いったい誰と間違えてるんだ?

 そう思いつつ、あたりにそれらしい対象がいるんじゃないか? と周りを見まわす良二に対し、その少女は改めてビシッと指を差して言った。

「なにを、誰と間違えてるんだ? みたいな顔でキョロキョロしてんのよ、間違いなくあなたよ!」

 彼女の人差し指は更にビシッと良二を差し直した! それはもうビシッと!

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