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インターミッション2

 一日の課業も終わり、良二は夕方から外出してライラとの夕食を楽しんでいた。

 午後7時も回ると、仕事帰りに至高の一杯を求めて労働者らが集まって来る、ブルボンと言う名のこの店は、とてもしんみりと飲んだり、男女で甘く語らいながら……などと言うムードには程遠い店だ。

 しかしながら、店内は活気に溢れ、一日の疲れをいやすには持って来いの、気楽な雰囲気に包まれた店で、今では良二のお気に入りだ。

 ライラに誘われて、最初に連れてきてもらった店だが、その雰囲気の良さに誠一や容子ら遊撃隊の連中とも利用するようになっていた。

 店長夫婦は、以前は冒険者として活躍していたが、夫の負傷と共に引退し、この店を開業、そのつながりで客には冒険者も多いようだ。

 良二とライラはヴェアと言うビールそっくりな酒と、馬の燻製肉で始めていた。

 昼間の乗馬訓練を思い出し、もしかしたら近い内にハリーもこうなるのではないかと、良二はちょっと引っ掛りもあったが、食べてみるとこれがなかなかに美味く、そんな懸念もどこかへ吹っ飛ぶほどだった。

「へえ、美味しいねこの燻製、いい香りで臭みも無いし……」

「でしょ~。店長お手製の逸品だよ。ヴェアにすごく合うしさ~」

 ライラもご満悦である。

 発泡酒は以前の宴で振る舞われた自然醗酵のエールと言う酒が一般的だが、この店の奥さんが魔法で炭酸とアルコール強度を高め、エールより強烈なのど越しが味わえるように改良したとかで、この店の名物にもなっている。

 客の好みに合わせて常温、氷入り、強冷などが選べ、ライラは氷入りで呑むのが好みのようだ。

「おどろきだね~、訓練中に神さまがね~」

「もう、びっくりだよ。軽い冗談だったのに、あの神さま……」

 今日の乗馬中のアクシデント、それを肴に盛り上がると言うか愚痴ると言うか。

「でもさ~、その神さまって最上級神でしょ~? すごいよね~、ホント雲の上の方って感じだよね~。あたしなんか、こないだのお姫様でさえカチコチだったもんね~」

 いや、あれでかよ……

「リョウくんの隊長さんも何モンなんだろうね~? そんな神さまを夢中にさせるとか~」

「うん、あれにも驚いた。最初ホーラさまとお会いした時はもう、取り殺されるかも? とすら思ったし、なんかその……ドSとか言う人も居たし……そしたら翌朝……」

 今思い返しても謎である。

 しかも、その翌日の朝に、また同じような光景を見ることになったひにゃ……

 あの、歩くフェロモン女史の魔王ラーさまがホーラと同様に誠一にしがみ付いて食堂に現れたのだから。

 ホーラと違う事と言えば、ホーラは右腕、彼女は左腕にしがみついていた事くらい。

 ケモ娘には好かれそうだとは美月・容子の見立てだったが、神さまや魔王までたらし込むとは想定外……いや人外にモテると言えば確かにそうかも……

 まあアデス的に考えればシーナやメアを人外と呼ぶのは断じて違うわけだが。

「神さまと魔族の女の人、両手に華ってすんごいよね~! リョウくん、うらやましい?」

 目を細め、ちょっと意地悪く聞いてくるライラ。

 その質問を良二は一笑に付した。

「いやいやいや……まあ、モテるのはうらやましいと思うけど、相手が相手だよ。黒さんすごいわ、俺じゃとてもとても……」

「勃たない?」

 ブ━━━━━━!

 良二は飲みかけたヴェアを噴き出した。さすがにライラに直撃させるような事態は避けられたが……うら若き乙女の口からそんな言葉が出るとは、童貞の良二には不意打ちにもほどがある。

「いきなり何て言い方!」

 そんな()に育てた覚えはありません! とでも言いたげに良二が叫ぶ。

「だって職場の男の人が言ってたしさ~。あんまレベルの高い女性だとダメなんだってぇ~」

「いや、それにしても、もうちょっと言葉選ぶとかさあ!」

「あ~あ、ヴェアがもったいないなあ。あ、おばちゃーん、ヴェアふたつ追加ー、ひとつは氷入りね!」

 あいよー! と奥さんの返事。

「もう……普段からそんな直球で言うの?」

 手拭いで口周りを拭きながら良二が聞いた。

「まあ、よくガサツ~、みたいなことは言われるかなぁ~? でもあんまり飾るのもさぁ~……リョウくん、そう言う娘って……キライ?」

「う!」

 ライラは首を少し傾げ、上目使いの視線をくれて聞いてきた。あの宴の夜のように。

 ズルい、この見つめ方はズルい!

「キライ……?」

 カタカナで聞いてくるのもズルい!

「そ! そんなことないよ! き、キライだなんて……」

「どうなの?」

「も、もちろんその、嫌い……じゃないよ……」

「つまり?」

「そ、その、つまり……」

「……」

「す、好……」

 ドンッ!

「はい、ヴェア二つ! それにトリ肉のハーブ焼きと、トマトリゾットお待ち!」

 奥さんが追加のヴェアとメインに頼んでおいた料理を持ってきてくれた。

 絶妙のタイミングで邪魔されて、ちょ~っとご機嫌ナナメそうなライラ。

「おばちゃ~ん……」

「なんだいなんだい? なぁ~んか珍しく色っぽい話してんじゃないのぉ」

 取り敢えず良二は胸をなでおろした。正におばちゃんGJではあるが……そこは素直に認められない自分。ライラに面と向かって言えるチャンスではあったワケで。

 しかし女の子に、好きだと言う事が、これほどのエネルギーを必要とするとは……

 まあ映画や恋愛アニメだけではなく、男女問わずクラスメートのコイバナとか、耳に入ってくる事だけから考えても告ること、それ自体にかなりの勇気やら気合やらがいるってのは分かってはいたが……あれ?

「からかわないでよ、もぉ~」

「ライラちゃんはいっつも大勢か、女同士でしか来てなかったからねぇ。彼、二回目だっけ~、三回目?」

 あれ? 俺……

「だからぁ、からかわないでって! 趣味悪いなぁ~」

「ハハハァ~、ごゆっくり~」

 ……好きって答え……しか……出て……来てない……

「ったくぅ~。あのおばちゃん、人からかって面白がるのが趣味なんだから~、マジ悪趣味だね~!」

 ……俺…………ライラの事……

「もう! リョウくん、さっさと食べて店変えよ! 次は静かに飲めるとこ行こ! ね!」

「あ、ああ、いただこうか」

 ……ライラの事……好きになってる…………

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