対決
地球では出来ない神さまとの対面……などと活を入れたはいいけれど、時間が迫ればやっぱり緊張感は増してくる。良二たちが感じている息苦しさは、新調した礼服のせいばかりではあるまい。
最上級神の訪問に、良二たち遊撃隊は初めて礼装と言うものを纏った。
その外観は自衛隊の第一種制服、というより儀仗隊の制服に近い様相であった。基本のデザインは誠一によるものなので、そちらが色濃く反映されたのだろう。
本来、誠一辺りの階級なら胸辺りには過去の実績によって勲章や賞詞、その他の記念章で飾られているものだが、発足間もない遊撃隊では良二らも含め、他に比べて実に殺風景である。
とは言え、鏡を見たり、誠一や容子らとチェックし合って乱れが無いかなど確認するたびに心身ともに引き締まってくる。
軍服と言うものは斯様にそんな側面もあるのかもしれない。
会場は大広間となる。
貴族階級の連中が多数集って大きな催し物、会食や舞踏会などが行えるだけの広さがあり、10人程度の会談では広すぎるが、一番の部屋でもてなす必要がある。
良二たちは今は隣の控えの間で待機中だ。出席するのは、
時空の最上級神ホーラ 時空の第2種上級神オクロ
エスエリア王国第2王女フィリア・フローレン
エスエリア王国魔導戦闘団特別遊撃隊
セイイチ・クロダ少佐 リョウジ・キジマ中尉 ミツキ・マツモト中尉
ヨウコ・コバヤシ中尉
テクニア討伐隊随行員 メア・キャーロル
魔界大魔王府立会人 2名
広間内常駐侍女 メイス・パレット
ロゼ・カーセル
シーナ・エウロパ
以上である。
まだ半人前のシーナが抜擢されたのは、外にいると何をやらかすか分からんからでもある。誠一の言う事だけはしっかり聞くので、近くにいた方が良いと判断されたのだ。
とは言え誠一にとっては余計な負担ではある。そうでなくても、思わぬ異世界イベントに緊張感が張り詰めているワケで……
良二たちも緊張しているが、それ以上に緊張しているのがフィリアである。
神々への尊敬・畏怖の念は良二たちとは比べ物にはなるわけもなく、ましてや相手はエスエリアでは最も崇拝されているホーラである。
緊張するなと言う方がま・さ・におかしい……のであろう。
魔界立会人の2名はまだ名前の通知が来ていなかったが、まがりなりにも天界の最上級神が降臨する席である。低く見積もっても上級神に匹敵する階位の者であることは間違いあるまい。そんな魔界の来賓だけでもフィリアの胸は押し潰されそうである。
「メ、メイス、今何時ですか?」
フィリアが震える声でメイスに尋ねた。
「午後7時41分です。殿下、2分前にも5分前にもお聞きになりましたよ?」
無理もない。
良二にとって時間が長いと言えば、ライラを隠して風呂で時間稼ぎしていたのが記憶に新しいが、あの時の1分1秒も長かったが、その比じゃ無いんだろうな~、とは想像に難くない。
「殿下、ホーラさまは文字通り、時の神さまですから時間に厳しいお方です。指定されたら必ず厳守なさるお方ですし、逆に言えばその時間まではゆっくり出来ると考えては?」
と、ロゼが言うが、んな調子にはいかんだろな、と良二たちも他人事ながら思わざるを得ない。無知は罪などとも言うが、知らぬが仏とも言う。
良二たちの緊張が少なくて済むのは神々の御威光に対して無知であるが故でもあろう。
さて、それが吉と出るか、凶と出るか……
「7時45分です。殿下、大広間に移りましょう」
メイスに促され、腰を上げるフィリア。
「あ……」
「殿下!」
だが緊張で脚が覚束ない。フィリアは思わずよろけてしまい、ロゼに支えられる。
「良、エスコートして差し上げろ」
誠一が良二に振った。
「え? 俺が?」
「腕で支えるようにな」
言われるままに誠一に押し出され、フィリアの横に立つ。
「申し訳ありません、キジマさま……」
フィリアが腕にしがみついてくる。そのままメイス・ロゼに誘導され大広間に向かう。
良二は女性をエスコートするなんて生まれて初めてである。
しがみ付いてくるフィリアが転ばない様に歩調を合わせるくらいが、良二としては関の山であった。傍から見れば両方が酔っぱらって千鳥足宜しく、フラフラしてるように見えていることだろう。
「なんで良さんなの? 隊長の方が経験あるんじゃない?」
小声で容子が誠一に聞いてくる。
「若ぇ男の方が良かろ?」
「ふん、隊長は40歳以上がストライクだもんね」
大広間には四方に計8つの出入り口がある。片方に3つある入り口の真中から王女一行は広間内に入った。
まだ照明は最低限だったが、それでもわかる、二階を吹き抜けにした広く大きな空間は壁にも天井にも様々な美術・装飾が施され、良二たちは如何にもな王侯貴族の力……いや圧力、プレッシャーを感じ、思いっきり圧倒されてしまった。
だがこの後、会談する相手はそれらを軽く凌駕する神サマである。
思わず生唾を飲み込む良二であった。
「取り敢えず少々の時間はあります。座ってお待ちいたしましょう」
ロゼの勧めで一行は、下座方向に用意された長椅子に腰をかけることにした。が、
「!」
格調高く、大きく長いテーブルを囲む形で配置された長椅子の向かって左側一番奥に、ロゼ・メイスらは2つの人影を見つけた。二人は反射的に脇の得物に手を掛け、彼我不明の相手を前に身構える。
「何者!」
ロゼとメイスは一歩前に踏み出し、誠一はフィリアと良二の前に立つ。
一気に高まる緊張感、正に予想外の状況に良二の心臓も「こんな時に?」と早鐘を打ちまくる。美月と容子も、慌ててフィリア・良二の左右に付き、不測の事態に備えた。
だが、その緊張を解くように二つの影の一つから、美しくも威厳のある声で謝罪の言葉が発せられた。
「……無作法な、お邪魔の仕方を致しまして申し訳ありません。噂に聞くフィリア・フローレン殿のお屋敷の大広間を、いち早く見聞したく、無礼を承知で直接上がり込んでしまいました。お許しくださいませ」
その声は、穏やかで優しく、甘く、そしてどこか冷淡な……そんな声だった。
ロゼが手を上げて合図すると、広間内の魔石照明が全灯され、2人の影の顔と姿を映し出した。
1人は黒い清楚なドレスに身を包んでいた。
穏やかに話すその女性はドレス以上に漆黒の髪に赤い瞳、男女問わず誰でも釘付けになるであろう美しい肢体からは、得も言われぬ妖艶な雰囲気を醸し出していた。
「だから言ったのに~」
などとブー垂れているもう一人。
そちらの方は肌は白く、銀髪をポニーテールに纏めていて、ゆったりしたブラウスにパンツルックの活発そうな女性、いや少女と言った方がいいだろうか? 瞳が紫である。
「……お名前を伺っても?」
メイスが2人に名を問いかけた。
「失礼致しました、私は……」
「皆さん、お控えください!」
黒の女性が名乗る前にフィリアの大きな声が広間に響き渡った。
思わず全員がフィリアを見た。黒の女性もキョトンとした眼でフィリアを見つめる。
対してフィリアは良二の腕を離れ、彼女を守る誠一やメイスらの前に歩み出て、膝をつき、両の手を胸の前に重ね、深く頭を下げていた。
「お久しゅうございます、魔界8大魔王が御一方、夜王ラーさま!」
「な!」
「は!」
ロゼとメイスはその名を聞くや、眼にも留まらぬ速さで下がり、フィリアに準じ膝を床につけた。
誠一もその状況を察知し、良二らに目配せするとフィリアやメイスらの後ろに回り、片膝をついて礼を尽くす。
良二、容子・美月らも慌ててそれに倣う、シーナ・メアも然り。
「まあ、フィリアさん。あなた、私の顔を覚えてて下さったの? 確かあなたに会った時は国王陛下の戴冠式ですから、あなたがまだ3歳か4歳の、もの心着く前ではなかったかと……」
「ラーさまのご尊顔、忘れるなどとんでもない事でございます! むさ苦しき我が宅にお越し頂き恭悦の極みにございます!」
緊張の最中、アクシデントに等しいこの状況下でも、多少強張っているとは言え、すらすらと挨拶の口上を述べるフィリア、さすが王族である。それこそ夜王ラーの言う物心つく前から王侯貴族の集う環境下で育ち、成長してきただけにこんな状況でもすぐにナチュラルに対応できる彼女のスキル。
良二は魔王様がどうこうよりも、なんだかそちらに感動すら覚えた。
「ご謙遜を。噂に違わぬ素晴らしい大広間ですわ。ささ、お立ち下さいなフィリアさん」
ラーと呼ばれた女性はフィリアの手を取ると、そのまま彼女を立ち上がらせた。
「ようこそおいで下されました。ご来訪とはつゆ知らずお出迎えもせず、大変なご無礼を……」
「無礼を働いたのはこちらでございますわ。私どもこそ謝らせてください」
「そんな滅相も!」
「あ、こちらは初めてでしたね? 私と共に今日の立会人を務めます、黒王・アイラオですわ」
「こんばんは~フィリアさん、アイラオで~す、お邪魔しま~す」
アイラオと呼ばれたポニテの少女は気さくな笑顔を見せながら挨拶した。
「もう、この娘ったら。すみません、礼儀知らずで……」
「いえ! そのようなことは全く!」
フィリアさん血圧上がりまくりである。本番前に目が回らなければよいのだが。
「黒王アイラオさまと言えば……」
誠一がメイスにボソッと耳打ち。
「ええ。ラーさまと同じく、魔界8魔王の御一人です」
魔界側の立会人は高位の者が来るとは想像していたが、それ以上の様である。立会人とは言え、主賓たるホーラとほぼ同格だ。
「魔界からお立会いの方がお越しになるとは聞き及んでましたが、まさかラーさま程の方が……」
「久しぶりにあなたのお顔を見たかったのもありますわ。すっかり一人前の淑女ですわね」
場の緊張感が若干落ち着くと、気が付けば良二は会話する2人をポーっと眺めていた。
ラーに至っては、なんかマジで次元が違うって言うか……形容しがたく存じますっつーか。
顔立ちにしても、そのプロポーションにしても、なんというか女性の美が全て凝縮されたような……良二はラーから目が離れなかった。いや、離せなかった。
正に、男としての本能が離したがらないのである。
「そこのお兄ちゃーん!」
不意に声を掛けられた。黒王アイラオがニコニコしながら良二に目線をくれている。
この部屋に男は二人、しかも1人は初老級だから、お兄ちゃーんとは良二で間違いあるまい。
「うちのお姉ちゃん、綺麗でしょ~」
アイラオの言葉に自分の心情を見透かされたように感じた良二は、
「あ! い、いえ、し、失礼を」
と、ようやく目線を離すことができた。
恥ずい思いもあったが助けられた気も。
「これ! アイラオったら!」
叱る姿も妖艶である。
しかし美しいというのは確かにそうなのだが、彼女の場合は美しい、綺麗、美人、別嬪、そう言った類の言葉は適正ではなく、一言で言ってしまえば、
エロい
のである。
良二が眼を離せなかったのは、その全く別次元のエロさ故であった。
「さあフィリアさん、そろそろお時間ですわ。彼女は時間の約束だけは正確無比ですから。立会の我らは後ろに下がっておりますので、彼女のお出迎えを」
ラーに促されてフィリアは一礼すると広間中央に向かい膝をついた。
良二らも彼女に続きホーラの降臨を待つ。
そして午後8時00分00秒ちょうど。
パアアァア……
フィリアの前方に光点が現れ、その光が四方にフワーと広がっていき、やがて二つの人影が形作られ始めた。
その人影が完全に人型になると、光はゆっくりと消えていった。
そこに現れた内の一人は召喚時に臨席していた上級神オクロだ。
故に、もう一人の女性が今回の主賓、時空の最上級神ホーラであろう。
「出迎えご苦労、フィリア・フローレン王女。我が時空の最上級神ホーラである。大神帝メーテオール猊下の命により、いくつか質問・確認しに参った」
ホーラは目の間に膝を附くフィリアや良二らを眺めながら来訪の目的を話した。
そのホーラの言葉に応じ、フィリアも歓迎の口上を述べる。
「時空の最上級神ホーラさま……麗しきご尊顔を拝し、このフィリア・フローレン、恐悦至極にございます」
時空の最上級神ホーラ。先程のラーさまに比べると、えらく堅苦しそうな話し方をする方だなと良二は思った。
実際ホーラの言葉は一言一言が力強く、どちらかというと軍の訓示みたいな印象さえ受ける。
しかし魔族のラーにせよ、このホーラにせよ、彼女らから常にプレッシャーの様なものを感じ続けている良二。
ともすれば呼吸すらも苦しくなってきそうな、心臓を摘ままれているようなプレッシャー、これが神の、魔王のオーラというものなのだろうか?
「……後ろの4人か、例の誤召喚された異世界人は?」
「お察しの通りにございます」
「ふむ、名乗るがよい」
ホーラは誠一に目を向けた。フィリアにも目配せされ誠一が名乗りを上げる。
「ホーラさまには、ご機嫌麗しく。元・地球なる異世界住人、現・エスエリア王国魔導戦闘団特別遊撃隊隊長を務めまするセイイチ・クロダ魔導少佐であります」
ホーラは、うむっと頷くと視線を良二に向けた。それを受けて良二も名乗った。
「同じく、特別遊撃隊所属リョウジ・キジマ魔導中尉です!」
言えた。噛まなかった……
「同じくミツキ・マツモト中尉です!」
「同じくヨウコ・コバヤシ中尉です!」
美月らも無事名乗りを終える。最後に随行員としてメアも名乗った。
「うむ……此度は我が配下オクロの行った召喚儀式の異変により、貴公らをこの世界に引き込んでしまったこと、大変心苦しく思う」
ホーラの詫びの言葉とともに、同伴したオクロが頭を下げた。
「本来この召喚は、魔界大魔王府からの要請ではあるが、現時点をおいても貴公らに我ら天界の者がその子細を伝えるは叶わぬ事、承知してもらいたい」
ホーラの言葉に誠一は頭を下げ、同意の意思を伝えた。
「今宵の席は貴公らの身上と、先だって行われた魔獣討伐の一件について、いくつか確認するため設けてもらった」
予想通りである。気構えしていたとはいえ、良二は心臓がキュッと締め付けられる感覚に襲われた。
「我から言うのもなんだが、このまま進めるにはこの議題、時間がかかる。掛けて話さぬか?」
フィリアはホーラの提案を受託し、御心のままに……と答えた。二人の会話に呼応し、メイスがホーラ・オクロを先程の卓に案内する。
奥に座っていたラーとアイラオも立ち上がり、2人を迎えた。
「……魔界から立会人が入るとは聞いてたが、貴様だったとはな」
「大魔王陛下のご命令ゆえ……」
顔見知りなのか? なにやら立会人の人選に不満そうな言葉を零しながら、ホーラは左側の長椅子の中央に腰を掛けた。横にオクロも座る。
ラーとアイラオも腰掛け、次いで右側中央にフィリアが、ロゼに促されてその隣に誠一が座る。
良二たちはメアと共に誠一とフィリアの後ろで横隊に並んだ。シーナはラーたちの後ろで待機。
「お久しぶり! ホーラお姉さん!」
アイラオが能天気にホーラに声をかける。
外見は容子らより若干歳下に見えるが、この張り詰めた空気の中、物怖じせず、見るからに明るく振る舞い、最上級神たるホーラをお姉さん呼ばわりとは、さすが魔界8魔王の一角か。
「場を読まぬところは相変わらずだなアイラオ」
ホーラがあきれたように言った。
「アイラオ、この場はホーラさまと異世界人方との場。私たちは立会人です、お控えなさいな」
「は~い……」
ホーラはそんな魔王らを一瞥すると誠一に目を向け、さて、と切り出した。
「クロダ……とか言ったな? 貴公、こちらの世界に来て、おおよそ一月半といったところか。アデスの生活には慣れたか?」
「はい、我らを庇護して下さるフィリア殿下のもと、日一日と不安の元は薄らいでおり、今ではほぼ、問題のない生活を営んでおります」
うんうん、とホーラ。
「先程も申したが、アデス側の不手際により、貴公らは肉親と引き裂かれるが如くこちらに呼び出されてしまった。その心中、察するに余りある」
「お心遣い、痛み入ります」
「故に多少のはみ出し等も目を瞑ってやりたいところだが……物事には匙加減もあれば限度もあるものでなぁ」
ほらキタ! 良二たちは生唾を飲み込んだ。
「先だってのテクニア……だったか? 魔獣征伐においてはかなりの大戦果を上げたそうでは無いか? 調べさせたところ、必勝を期すなら一個中隊以上は必要な魔獣の群れを、わずか4~5人で平らげたそうだな? 貴公や王女らの前でこう言うのも憚るが、まさに人外の如き功績と言えよう」
「…………」
「貴公らの技の話も聞き及んだ。貴公、中々面白い魔法剣を使うそうだな? 雷で魔獣の首を斬り飛ばすとか? 我ら天界の剣士や魔界の魔王の中にも雷属性の魔法を得意とするものは居るが、大抵は雷を帯びた剣で相手を痺れさす、若しくは焼きつかせるのが関の山だろう」
次にホーラは誠一の後ろに立つ良二に目を向けた。
「もう一人は水で魔獣の体を一刀両断とな? 大したものよの。世の中、水魔法の使い手の数はそれこそ掃いて捨てるほどだが、水で魔獣の肉も骨も切り裂くなど、我々にはとても想像だに出来ぬことだな。異世界人ゆえか? 全く末恐ろしいほどだ」
――恐ろしい? それより、あなたのその含みを持った重い笑顔の方がよほど……
良二は気付いていた。一見ベタ褒めに見えるホーラの言葉、もうビリビリ来るくらい、皮肉を込めていること。いやむしろ挑発?
そんな良二の心境を知ってか知らずか、誠一はそのホーラの言葉を、まともに受けて立つような口調で言った。
「お褒めのお言葉、光栄に存じます……」
その誠一の言葉に、ホーラの誠一を見る目が一瞬で険しくなった。
だが、そんなホーラの視線を誠一は全くの無感情・無表情で受けた。
それが余計にホーラの感情を昂らせた。
「貴公!」
ホーラが声を荒げた。思わずビクッと肩を震わすフィリア。
だが誠一は、変わらず無表情のままだった。
それを見るホーラの眉間のしわが、また一段と深くなる。
「我の言葉が貴公らを称えていない事くらい貴公は百も承知のはずだ! それを臆面も無く褒められただの、光栄だなどと……この我を目の前にして、よくも抜け抜けとほざいたな!」
「…………」
「今の一言で確信した! 貴公は我らがなぜここにいるか、何を言う気で来たのか、しかと理解しておる! 自分らの行いがアデスに何をもたらすか、それを承知でいながらそれをやめる気がないと言う事もな!」
捲し立てるホーラ。凄まじい怒気? オーラ? 崇拝する時空の最上級神の怒声に、フィリアもメイスもロゼもメアもシーナも顔がどんどん蒼褪めていく。
容子や美月も震えだしており、隣の容子に至ってはいつの間にか良二の右腕にしがみついていた。
「ク、クロダ少佐! ホーラさまにお詫びの言葉を! ホーラさま! 彼らはアデスに来て日も浅く、天界のお方々への理解が足りておらず! どうか、どうか……」
震える体で必死に中に入るフィリア。しかしホーラはそれを一喝する。
「今は其方とは話しておらん、控えよ!」
ホーラの怒声を浴び、フィリアは震えの止まらない身体を委縮させ、涙目になって低頭した。
ホーラはソファから立ち上がった。誠一の前に歩み寄り、テーブルにどっかと腰を下ろし、誠一の目を見据えた。
「無作法でございますわよ、最上級時空神さま?」
場の空気をものともせず、のほほんと皮肉交じりに声をかけるラーに対し、ホーラは左手人差し指を彼女にビシッと差し、けん制した。
発言する立場には無く、見ているしかない良二は、会談前に俺に任せろと言った誠一を頼もしく思い、誠一にすべて託そう、自分もついていこうと、腹を括っていたつもりだった。
だが、開始早々のこの大波乱はさすがに予想のはるか上を行った。
正直なところ良二も、黒さん何考えてんだよ! 状態ではあるが、半面、誠一の意図も知りたくもあった。
本人も吐露していたが、ランボー教官の時は確かに半分以上ハッタリだっただろう。
だが今回は魔法を使いこなし始め、魔素ブーストの発動にも磨きがかかり、戦闘能力は飛躍的に上がっているのは理解できる。美月らも含め、お互い逞しくはなってきた。
だが、それだけで通用する相手では無かろう事もまた理解できる。
魔界8魔王や最上級神12柱はいずれも地球で言えば戦略兵器級の面々なのだ。
それでなお、なぜこのように、まるで挑発するかのように立ち向かうのか?
知りたい! 良二はその思惑を知りたかった。
そしてそれを自分の物に出来ないかと……
誠一はいつも通り、そんな大層なもんじゃねぇよ、と言うだろう。
だが良二は知りたかった。
眼で盗め、正にその時だ。




