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姑+小姑

 取り敢えず、備え付けの夜着を纏った二人は並んでベッドに座っていた。

 目の前には夜王ラーが、それこそ苦虫を噛み潰した顔の見本みたいな表情で立っている。

「……私としてはお二人の、このおめでたい成り行きに水を差すような無粋なマネは避けたいところなのですが……」 

 ショボーンとする二人。

「あまりにも、周りへの影響が大き過ぎました。例の計画の会議開催中は魔王府城の防御結界が強化されておりましたので、あちらこちらの棚や書類が転倒、散乱する程度で済みましたが、外壁は通常通りの結界でした。おかげで魔震の直撃でかなりの範囲で補修が必要となりそうです。シランさま以下、魔王府軍は非常呼集され、ブレーダー閣下率いる国防軍も城下に展開されました」

 あちゃ~………良二とライラは頭を抱えた。

「先程、8魔王の方々には『陛下がとてつもない悪夢でうなされた由、私が付き添うので通常業務に戻られたし』と通達いたしましたわ」

「悪夢~?」

「ホントの事なんか言えるわけ無いじゃありませんか! 陛下が絶頂をお迎えしてたがが外れて魔震が起こったなど、どう言葉を繕ったって魔王府の、陛下の威信はガタ落ちですわ!」

「んなこと言われたって~、あたしだってこんなん、なるとは思わなかったよぉ~……城下町の方は大丈夫だった?」

「外壁の外側結界までで何とか抑えましたから、幸いにも城下町には影響は有りませんでしたわ」

「よかったぁ~」

「でも鳴動や、外壁損傷時の音などで不安に思っている臣民もいるようですが……」

 フーっと大きくため息つくラーさま。

「あまりこう言う事を根掘り葉掘り聞くものでは無いのですが……状況が状況です、敢えてお聞きさせて頂きますが、お二方とも昨夜は如何でしたか?」

「え?」

「昨夜のご感想です」

「え~、そんなの言えるワケ~……」

 ジロッ!

「う……あ~、その、初めては痛いとかぁ、あまり感じないとか? よくないとか、こんなもの? とか……聞いてたんだけど~。あの~、リョウくん凄く優しくて~。頭も身体も足の指先まで痺れちゃったって言うか~、とろけちゃうって言うか~……頭真っ白になっちゃって~……かな?」

 頬を赤らめ、恥じらいながら話すライラ。手を合わせ両の人差し指をツンツンし合ってている。

 良二は自分も正真正銘の童貞だったので、ライラがそこまで満足していてくれた事には驚きでもあったが、素直に喜びもしたかった。

 そりゃ自分自身も生涯忘れる事の出来ない、最高の初体験だったと思っている。

 今思い出しても感動で打ちひしがれそうだと言っても過言ではない。

 そんな二人の様子を見て、ラーは手で口を覆い、しばし考え込んだ。

「予想はしておりましたが……やはり、あの説を認めざるを得ませんね」

「あの説?」

 良二が聞いた。だがなんとなく予想はついている。

「チキュウ人の性的スキルですよ。セイイチさまと同様、何らかの能力が後押ししているようですわ」

「そう言えば、あなたもアデスの男と隊長さんとでは全然違うって言ってたよね~」

 おかげさんで、おたくのエロメイドに貞操奪われそうになりました……

「それに関してはホーラさまも同意見でした。ハッキリとは言えませんが、シーナやメアはセイイチさまが初めてのお相手でしたが、今の陛下と同様の印象だったようです」

「そんなのあるのかな?」

 自覚が無いので、我が身の事とは思えない良二。確かに射精に至る突き上げ感と一緒に込み上げて来た、あの熱い感覚は一人プレイの時には無かったものだ。

「証明するとなれば、陛下がどなたかアデスの男と性交渉を持つくらいしか」

「冗談じゃないわよ! リョウくん以外の男なんて死んでもイヤ!」

 ライラぁ……

 そう言われて良二は涙が出そうになった。自分は三界一の果報者ですぅ、と。それに相応しい男になるべく一層精進せねば~と……おう、頑張れ良二くん。

「と、なると。リョウジさんがカリン殿下やヨウコさんと結ばれた場合の差でしょうか。仮説通りならカリン殿下は陛下やシーナたちと同様の、ヨウコさんは巷で言われているような反応となる可能性が高いと思われますが」

 なるほど、容子は同じ日本人、地球人だし、エロブーストは関係なく、普通の性交渉になる可能性は高いというのは得心がいく。

 とは言え、良二もそんな実験目的で彼女らとセックスをしようとは思わない。

 それに、ライラと結ばれたからと言って、じゃあ今度はこの娘、その次あの娘、などと流れ作業の如く、ましてやエロスキル証明のために相手を求める気など無い。やはりライラのように、求め、求められての契りを交わしたいと思う。

 大体が、あのカリンや容子だ、そんな気持ちで抱こうものなら引っ叩かれるか、蹴っ飛ばされてしまうわ。

 ………考えてみると、ハーレムってこんなに神経すり減らしながら抱えるもんなんだな~、と良二はしみじみ思った。

「しかしながら、今後は陛下の自己結界に頼らない、新たな対策が必要になりますね。さしあたっては魔石結界による寝室の防御結界を強化せねばならないでしょう。営繕部に通達して早急に手配してもらいます」

「え~、強化の目的とか分かっちゃうでしょ~。なんか恥ずかしいなぁ」

「その都度、外壁を壊されては魔王府の機密費など、あっという間に底をついてしまいます! それとも陛下のへそくりから、いくらかお出し願えますか? 今回は概算で金貨3万枚くらいだと言ってきてますが!?」

「あ~、それはちょっとぉ~」

「営繕にはちゃんとそれらしく言っておきますから、了承してくださいな。それとも周辺に被害の出ない、砂漠のど真ん中辺りに出張って逢引きなさいますか?」

「わ、わかったわよぉ~。もう、意地悪なんだからぁ~」

 そんな、頬を染めながら唇を尖らせてブー垂れるライラに、ラーは強張っていた目の力を緩めた。

 やがてもう一度、今度は軽くため息をつくとラーは「お小言はここまでです」と言いながら良二とライラの前にしゃがみ、二人の手を取り重ね合わせた。

「陛下……要らぬおまけが付きましたが、陛下が愛する御方と想いを添い遂げ結ばれましたこと、心よりお祝い申し上げます。この目出度き日を迎えられ、私は大変嬉しゅうございます……」

 ラーの話し方の変化に良二はちょっと戸惑った。

 先程までの口調と打って変わって、ラーの口から出る言葉は穏やかで、且つ柔らかく、そして暖かさも感じるほどであったから。

 更に良二は、自分の手に乗せられたラーの手に少し力が入るのを感じた。

 同時に、彼女のライラとはまた違った赤い瞳が良二に向けられる。

「リョウジさん……これからも陛下のために……影に日向に、どうか陛下の支えになっていただけますよう、このラー・フロムポータリア・レイサー……伏してお願い申し上げます……」

 そう言うとラーは、重ねた良二とライラの手に自分の額を当てた。

 良二は、思わぬラーの嘆願に戸惑いを隠せなかった。

 どう返答したものか思いあぐねる良二だったが、不意に自分の手に、何か暖かいものが流れて来るのを感じ、手の甲に神経を集めた。


 涙?


「お、お顔を上げて下さい、ラーさん! あ、あの、その……お、俺なんかまだまだ若輩の半人前で……その、全然頼りになりませんが、は、早く一人前になって、頼って貰える……ていうか、ライラやラーさんがいつも笑っていてもらえるように……が、頑張りますんで、その、これからも助言と言うか……いろいろ、こちらからも、どうぞお願いします!」

 良二は、つたない言葉だと自覚しながらも、両手で重ねられたラーとライラの手を取り、誓いを込めて話し続けた。

 ラーは一度頷くと、ゆっくりと顔を上げた。やはり、ラーの両の目からは涙があふれていた。

 ラーのその顔、その面差しには、いつものエロさ満天の笑みではなく、姉のような、母のような、形容する言葉が見つからないほど暖かな微笑みを浮かべていた。

 それを見た良二はもう、語る言葉を失った。

 ただただ、ラーの手を固く握り、彼女の目を見つめ何度も頷くだけが精いっぱいだった。


 ラーは「それでは仕事がございますので……」と言葉を残し、部屋を去って行った。

 寝室は、再び良二とライラ二人きりになった。

「……ラーさん、泣いてたね」

「うん……あたしの事、いつも気にかけてくれてはいたんだけど……うん、嬉しいな……こんなに、喜んでくれるなんて…」

 ライラは眼をしばたかせながら言った。

 紅い瞳に加え、白目も若干赤らんでいる。

「リョウくんとの事、一番理解して応援してくれたのもラーだったの。あたしが召喚儀式に干渉してリョウくんや隊長さん巻き込んじゃった時も、あたしの不審さに真っ先に気付いてて、それを責めることもなく、むしろ応援してくれてさ……」

「さっき手を握られた時のラーさん、なんかライラのお姉さんと言うか? お母さんと言うか……本当に親身で喜んでくれてたよね……」

「もともと天界にいた彼女が魔界に堕りてきたのも、あたしに仕えたいって言うのが理由だったんだけど……なぜそこまであたしにこだわるのかは、正直今でもわからない。でも、本当にいつもあたしの事を気にかけてくれててホントに、嬉しい……」

「なんだか、アレだな? お嬢さんを僕にください! とか、あんな気分になっちゃったよ」

「ふふ、リョウくんにとっては姑と小姑がまとまった様な感じかしら?」

「ああ、ライラの事泣かせたら、メチャクチャ責められそうだ……」

「ラーも怒ると怖いわよぉ~」

 そう、ラーの怒りに触れたユズ一味は未だに、死ぬ事も出来ずに苦しみ続けていると言う……

「俺も頑張らなくちゃな。ラーさんもライラにも笑ってて貰えるように!」

 そう言いながら良二はライラの肩を抱いた。

 ライラはその手を握り、良二の肩に顔を預けた。

 周りに思わぬ迷惑をかけてしまったけれど、やはり二人にとっては、生涯忘れられない最高の夜であった。

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