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二人だけの夜 三度目の正直

 酔って寝息を立て続けるカリンを部屋に寝かしつけてきた良二は、ライラと一緒に自分の部屋に戻った。

「でも、ひっどいな~、リョウくん。あんな食べさせ方アリ?」

 ライラは先程の初のお刺身の試し方について柔らかながら抗議した。

「ごめんな。でも、ホントにおいしかっただろ?」

「うんまあ……まだちょっと抵抗あるけど、美味しかったのは確かね。でも他のみんなの反応見れば、美味しければ正義ってモノでもないでしょ?」

 そう、良二らとプロマーシュはあの後、刺身デビューさせようと、その場の全員を追い掛け回していたのだ。

 メアとシーナは誠一の勧めで早々に落ち、メリアンは「お姉さまのお勧めなら!」と気合を入れて試してくれた。

 その後、ホーラやラー、ローゲンセンは支持派に回ったが、その他はやはり生食いは抵抗があるみたいだ。

「ローゲンセンさんは肉の脂より、こちらの方が良さそうだって喜んでくれたけどね」

「あ~、これからプロマーシュが調子に乗って、事あるごとに持って来るわよ~」

「今度は白身がいいな~」

「魔獣のサシミ持ってきたりしてね」

「それだけは勘弁!」

 と笑い合う二人。

「ヨウコちゃん、なんか妹分が出来たみたいね? ずいぶん懐かれて」

「閣下は帰ったのに、泊まってく~って容子の部屋に押しかけてるみたいだ」

「どう? 彼女を女に寝取られた感想は?」

 おいおい……

「そんなんじゃないだろう、恩義もあって懐かれただけさ」

「おかげで二人っきりになれた、ね……?」

「…………」

「…………」

 正に、どちらからともなく、良二とライラは身を寄せ合った。

 そのまま二人は、スゥッと抱きしめ合い、キスを交わした。立ち上がってベッドへ移り、二人一緒に沈み込むと、唇から頬、頬から額、額から耳と互いにキスし合った。

 そこでフッと眼が合う。

「あたしの……部屋に、来ない?」

 ライラが誘った。

「あそこなら……誰にも邪魔されないよ?」

 前回は海辺の別荘で寸前まで、ホント寸前まで行って海生魔獣に邪魔された。

 その記憶は無理な魔力同期により、かなり消失していたはずだが、邪魔をされた……と言う断片と言うか、欠片みたいな記憶は有るのかもしれない。邪魔と言うワードが随分重く感じていた。

 それに、専属で宛がわれているメイド連中に、ライラと一緒だからと外で待機と命じてはいるが……

 恐らく彼女らは戸板に耳を押し付けているはずだ。

「そ、そうだね、ライラの部屋へ行くのは……は、初めてだ……」

 良二も決意を新たに、ライラの誘いを受ける。

「じゃ……」

 ライラは良二をギュッと抱きしめると転移魔法を使った。


 良二が目を開くと、そこはライラの寝室のベッドの上だった。

 部屋の広さはテニスでも出来そう……と言うとちょっと大げさだが、かなりの広さがありそうだ。

 その中央の壁寄りに今乗っているベッドが鎮座している。

 南側? と思しき方向に窓があるが、今は重そうなカーテンが閉められ、外の景色も外から中の様子も見られない状態だ。

 品のある寝具は、触れているのか、いないのか分からないほどの肌触りの良さで、その品質はこの世に二つと無いのでは? と思えるくらいである。

 内装は質素で落ち着いており、華美た装飾はほとんどない。むしろ、ライラが安らかな睡眠を取るためにあらゆる気遣いがなされている、そんな感じの部屋だ。


 間を持たせるために、部屋の中の事をあれこれ聞くことは可能だった。

 だが、今の良二にはそんなおためごかしは不要、一言「いい部屋だね」と言うと再びライラを抱きしめる。

 そして今一度目を合わせ、二人、どちらが先でもなく服を脱ぎ始めた。

 先に脱ぎ終わった良二は、シーツの間に身体を滑り込ませる。続いて脱ぎ終えたライラが良二の右側に、これまた滑り込むように入ってくる。

 余人に邪魔される可能性は無い。落ち着いた内装故に、それに気を散らされることもない。

 シーツは二人を優しく包み込んで二人を守る……正に最高の舞台。

 良二はライラを抱きしめた。

 この辺りは本当は二度目だが、今の二人にとっては初。

 それでよい。

 前回のように熱列なキス、お互いへの愛撫、何一つ滞ることは無い、海の別荘での再現であった。

 そして迎える、結ばれる時……

 その二人の時を害するものは何もない。


「あ!」

 ライラの声が良二の耳を貫く。

 痛がってるのだろうか? 通説、俗説の類しか知らない良二にとって、この辺りの対処は悩みどころ。出来る限り緊張を解いてもらおう、前回同様、念のため唾液をローション代わりに、とか、やるだけはやっておいた。

 あとは焦らず、スローテンポで腰を動かし負担を掛けさせない様にするくらい。

「ああ、はァ……は、リョ、リョウくん……」

 喘ぎ声に紛れて自分の名を呼んでくれたことに、良二は強烈な嬉しさを感じた。

 ライラが受け入れてくれている。ライラが求めてくれている。それが良二の身体も精神こころも高揚させてくれている。

「ライラ!」

 良二もライラの名を呼んだ。背中に回されたライラの腕がより強く良二を抱きしめる。

 猛烈なキスをした。腰を動かしながら、吸い合う唇はジュボ! ジュバ! と、ややもすれば下品な音が混じってしまう。

 だが、それがどうした? 良二はもっと感じたかった。

 ライラの温もり、ライラの声、ライラの想い、全てを感じ取りたかった。

 良二の高揚も頂点にさしかかる。ライラを思う精神と刺激される身体が共に昂り、更にライラを求める。その上に、まるで魔素ブーストを掛けたような熱い猛りが身体を駆け巡り、ライラとの繋がりを通して流れていく。

「あ! あ! リョ、リョウくん! リョウくん!!」

 ライラの声が良二の鼓膜をくすぐる。

「ライ、ラ! ライラ、ぁ!」

「うあ……な、に……リョウ、くん……こ、これ、あ、あああ! あああぁ!」

「ライラぁ」

「リョウ、くん! ぁあああー!!」


 ズウゥオオオォオオーン……


 二人は遂に想いを遂げた。

 想い想われ、愛し愛され、求め求められてこの日、二人は結ばれた。

 心地よい性の快感の余韻の中で二人は見つめ合い、今までに無い幸福感に浸りながら抱き合い、そのまま眠りについた。

 朝が来て、ラーが乱打の様なノックをするまでは。


 夜半、魔王府は防御外壁にひびが入るほどの魔震に襲われていたのだ。

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