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伍長メリアン・サドール

「クロダさま方の処遇ですが、委員会は遊撃隊……サワダ卿を除く異世界人の皆様をミカドの四天王として正式に承認し、計画の核に組み込む方向で調整が始まっております」

「委員会?」

「今回の会議で三界の調整が済みますと改めて作戦実行委員会が発足されます。その際ミカドとそれを守護する戦士、四天王として皆さまを認め、ご出陣いただこうと」

「召喚魔法陣の誤作動ではなく、我々が必要とされて召喚された、という説が支持されましたか?」

「左様、クロダ殿率いる遊撃隊は今までの人間界での功績にとどまらず、今回の巨大魔獣討伐においても時空の乱れは起こっておりません」

「それほどの事を成したというのに、我は報告を聞いた後までも時空の乱れは感じておらなんだ。全くの正常だと言う事だ」

 ホーラがウェンを引き連れて話に入ってきた。引きつれてと言うか、誠一にはウェンはホーラに貼り付いているように見えた。ホーラの言によると彼女の後輩であり、妹分的なポジらしいが。

「ここに至っては、貴公らの存在はアデスにとって必要なものだったと認めざるを得ない、という意見が大勢でな」 

「腫れ者扱いから四天王にまで出世できたのは、些か出来過ぎ感もあるが……何かどんどん、故郷へ帰れなくなるような気になってくるなぁ」

「大丈夫よ。半年後には必ずチキュウとやらに叩き帰してやるから!」

 誠一は、なにやらケンカ腰だがやたら可愛らしい声で話し掛けられ(罵倒され)、そちらに目を向けた。声の主はホーラの陰から誠一を睨んでいるウェンであった。

「ウェン、なんだその荒い物言いは? 初対面であるに」

「フン!」

 何故だか、えらくご機嫌が良ろしくなさそうである。

「ホーラさまがお付き合いなさってる御方だからさぞ素敵な殿方と思いきや、噂通り枯れかけた老いぼれじゃない! がっかり!」

「おい、失礼であろう。どうしたんだウェン、お前らしくもない」

「ホーラさまは騙されてるんだわ。どうせ口八丁手八丁で丸め込んだんでしょ! 12神に取り入れば何かと都合いいもんね!」

「いい加減にしないか! これ以上は座興ではすまんぞ!?」

「だってライラ陛下や自分の部下もペテンにかける様な男なんでしょ!? そうに決まってる!」

 それを聞いてフィリアとローゲンセンは思わず噴き出しそうになり、口で手を覆った。

「勘違いするな! セイイチには我の方から求め、彼がそれを受け入れてくれたのだ! もうよい! 我はセイイチと話がある、お前はアイラオたちと駄弁っておれ!」

 ホーラに咎められたウェンは一瞬、誠一を睨むと頬を膨らませ、唇を尖らせて離れていった。


「やれやれ……ラーからホーラべったりの娘だと聞いてはいたけど、嫌われたもんだね」

 と、溜め息交じりに零す誠一。

「日頃のツケが回って来たのではないですか?」

「故に、あの手の手法は余り乱発せぬ方が良いと御忠告した次第で」

 ここぞとばかりにからかうフィリア、ローゲンセン。だがしかし、

「二人に言われましては形が無いですなぁ。精々精進させて頂くことにしましょう」

当の本人はそれほど堪えてはいなさそうだ。

「すまん、セイイチ、不快であろうが許してやってくれ。口さがないのが短所だが、普段は職務に忠実でまじめな奴なのだ」

「気にする事じゃあ無い。彼女のホーラに対する思いがそうさせただけだろう。かわいいじゃないか。俺にとっても大事なキミのことを思っているが故の言動だ。不快になど、なるはずもあるまい?」

「セイイチ……」

 今までもらったことの無い、歯の浮くようなセリフを並べられホーラの眼はうっとりと潤んできた。

 対して、声に出す事こそ憚ったが誠一を見るフィリア、ローゲンセンの眼は「そういうとこだぞ?」と言いたげな眼であった。


「なぁにやってんのよぉ?」

 一部始終を見ていたアイラオがウェンを手招きする。

 不機嫌丸出しでアイラオの前に来たウェンは座るなりエールを一気飲みした。

「おじさんの事、気に入らない?」

「あたりまえじゃない! あんなくそじじい、ホーラさまに相応しくないわ!」

 激昂の余憤がいまだおさまらないらしく、ウェンは思うに任せ、ぶちまけた。

「聞こえるぜ、おねぇちゃん?」

 ウドラが親指で良二らを差してウェンを諫めた。

 気を使ってもらったはいいが、良二らとしてはまあ、苦笑いするしかなかった。

 自分らの隊長を貶された事には一言ないわけではないが、彼女の言っている事には同意できる部分が多々ある、かなりある、随分ある。

 知人のお相手として紹介するには一癖も二癖も有り過ぎる男である。

 しかしながら、ウェンは坊主憎けりゃ袈裟まで憎いと思うタイプではなさそうだ。良二や美月らには別に悪印象は持っているようには感じない。

 それもあってか、ウドラの指摘にはちょっとバツが悪そうに、言い訳じみた口調で答えてきた。

「別に彼らまで悪く言うつもりは無いわよ。むしろそこのひとならお似合いかなって思うけど……」

 ウェンちゃん、良二くんをチラ見。

「リョウジ兄ちゃんはメーテオール猊下ハメる男だよぉ?」

 またアイラオちゃんたら余計なことを。

「ちゃんと猊下から聞いてる、あれは偶々だって」

 うむ、その解釈は良二としては助かるが、自分に都合のいい話だけ信じるタイプであれば要注意である。そう言う手合いは、男女問わず面倒くさい事になりがちだと良二は思っているもので。

 例の件にしたって、誠一ほど確信を持って引っ掛けたわけでは無かったが、自分が猊下をハメた事には違いない。

「ねぇ、ウェンさまって随分ホーラさまにご執心なのね? もしかして特別な感情か何か?」

 容子が小声で隣のシランに聞いてみた。ちょいと下世話な勘繰りも入っちゃいるが。

「ウェンさんはホーラさまを敬愛してるんだよ。心底、尊敬できる先輩って感じでね」

 シラン、同じく小声で耳打ち。

「素直に祝福できる相手じゃないってかぁ。ま、気持ちはわかるけど」

 誠一の、相手の本音と核心をつこうとするその手管は、味方からすれば確かに頼もしくもあるけれど、その手法を味方にすらやってのける節操の無さは、決して褒められるところではない。ウェンの危惧する部分を、誠一の部下として否定しきれないのは、まっことビミョーである。


「ところでブレーダーの姿も見えないけど、どうしたの~? あいつも来ないの~?」

と、ライラ。あれだけ大男だと居る居ないはすぐわかる。

「いえ、いらっしゃるはずですわ。本日の後処理が残ってて遅れるとの、ご連絡は有りましたが……あ、お見えになりましたわよ?」

 ラーが庭先を見ながら答えた。良二らも目を向けるとブレーダーと、あと一人が一緒にやってきた。

 もう一人は、女性らしい。身長差があり過ぎて、遠近感が錯覚を起こしそうだ。

「夜王殿、遅れて申し訳ない。言い訳になるが、野暮用に追われておりましてな」

「ようこそ閣下、さあ、こちらへ……あら? そちらの方は? 閣下が女性連れとは、お珍しい」

「野暮用の一環でしてな? ところでコバヤシ中尉は、いずこかな?」

 ブレーダーは周りをぐるりと見まわすと、容子を視認し、連れの女性に指を差して教えた。

 女性はブレーダーとラーに一礼すると、足早に容子のテーブル前に駆け寄っていった。

「あ、あのコバヤシ中尉殿!」

 呼ばれて容子は話しかけてきた女性の顔を見上げた。

「あら? あなた……」

 容子は一瞬、戸惑った。が、すぐに思い出した。

 今日の魔獣戦で負傷し、蘇生させたあの女性兵士だ。

「混成討伐隊第10分隊のメリアン・サドール伍長です! 本日は大変お世話になりました!」

「あの時の人! 元気そうね、よかったわ。でも、もう動き回っても大丈夫なの?」

「はい! 外傷はほぼありませんでしたし、蘇生後も回復魔法で治療して頂きましたから、本部での治療にはそれほど時間はかかりませんでした!」

「夜王殿に招待を受けておるとつい、話してしまっての。吾輩からちゃんと伝えるから養生せよと言い聞かせたのだが、どうしても中尉にひとこと礼を言いたいと聞かなくてな」

「まあ、この方がヨウコさんがお助けしたと言う兵士さん? よくいらしたわ、ヨウコさんのお隣に座らせていただきなさいな」

 ブレーダーが頷くとメリアンはラーに「ありがとうございます!」と礼を述べ、容子の横にそそくさと移動。

 メリアンに椅子をすすめる容子。腰かけたメリアンに、駆けつけ三杯とばかりにグラスを渡す。

「ありがとうございます!」

 メリアンは元気いっぱいで返事した。

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