プロローグ
ここは父の執務室。
執務室内の机には、書類の山が出来ている。
正直、この書類ばかりの机で仕事が出来るのかさえ分からない。
机が書類の山過ぎて父の姿さえ、全く見えないのだ。本当に父は居るのか疑問。
父が嘆息をしたら書類が崩れるのでは?って思う程だ。父に呼ばれて執務室へ着いてから、かれこれ数時間が経過したのではないか。
そう分かっていても父に声を掛けないのは、声を掛けた途端に机の上の書類が崩れる様に思えるからだ。
暫くして父の仕事が片付いてきたのだろう。私の方へ顔を向けたから。
そして真剣な顔で重い口を開いた。
「ライラ、待たせて悪いね。退屈であっただろう?」
「いいえ、お父様はお仕事が忙しいのですからお気になさらないで下さいませ。ところで、私にお話しとは?」
父が私を呼んだ本題である問い掛けをしてきたわ。なぜか私の表情を窺う様に、書類の山の出来た狭いスペースに両肘をついて、手の指を組ませるという姿勢でね。
無駄に父はイケメンなのですけどね。髪の毛は銀色で、蒼い瞳に鼻筋も通っていて、笑うと少し甘い顔をしてる。だけど賭け事や仕事でのお顔は、眼光が鋭くて獲物を狙う鷲の様なのです。その今は、獲物を狙う鷲の様なお顔をされてますね。
「ライラは、王太子様と結婚したいかい?」
「いいえ、王太子様と結婚したく御座いませんわ」
「あんなに厳しいマナーや、お妃教育を受けてきたのに王太子妃様、王妃様になりたくないと?」
「ええ、王太子妃様も王妃様にもなりたく御座いませんの。お父様には申し訳ありませんが」
この会話って縁談のお話しであって、仕事じゃないですよ?
でも父からしたら自分の利益や、出世などにも関わるからでしょう。まるで父は娘を見ている様に眼光が鋭く、私は膝が震えそうですね。
父が私を試す様に問い掛けてくるから、私も負けずに満面の笑顔を向け答えた。
「それならライラ、王太子様に気に入られてはならないと思うのだが?」
「そうですわね。王太子様に気に入られては困りますわね」
「そこでだライラ、王太子様に嫌われる様に出来るか?」
「王太子様に嫌われるのですか?」
急な父の問い掛けに、クエッションマークが炸裂したわ。でも何か裏がある気がする。
「そうだ。王太子様に嫌われる事が出来るのかい? 嫌われられる事が出来たら、ライラの縁談は暫くの間はなしにしよう」
そんな事を父に急に言われまして、私の脳内ではパンクしそうですけどね。でもね、縁談を暫くの間はなくなるなら、まだ良いですね。
「王太子様に嫌われてみせますわ。そして暫くの間(この先、ずっと)、自由になってみせますわ」
「王太子様に嫌われてからにしなさい。自由になれるかどうかの話はな」
これは父と私の賭け事となった。まだ賭ける物は決まっていない。
☆☆☆
遡る事、1年前の私の誕生日だったのを覚えてるわ。
お決まりの様に父、母、兄、弟、妹と誕生日を祝って頂いた。大好きな両親に、兄弟妹たちと一緒に過ごせて幸せだった。
ご馳走にケーキ、お菓子、ワインに紅茶、プレゼントに囲まれて楽しく過ごしていたのに。
そんなお祝いの日に父から爆弾を投下してきたのですね。
「ライラ、もうお前もお年頃だ。そしてな縁談が来たんだ。喜びなさい」
そう父が1つ目の爆弾を投下したのですね。
「父様、姉さんの結婚相手って誰ですか?」
「お姉ちゃま、結婚してしまうの?」
そう弟のリアンと妹のマリーが尋ねました。
すると父はドヤ顔で自慢する様に言いました。
「シュバーダリー国の王太子フェラン様だ。嬉しいだろ?」
ここでドヤ顔の父からの2つ目の爆弾投下でした。この爆弾のお陰で、誕生日はメチャメチャになりましたね。
「姉さんをフェラン様にですか?いくら王太子でもないでしょう!」
「お姉ちゃまは、まだマリーの側に居て欲しいです。お父ちゃまのバカー」
「父様、いくら何でもライラの誕生日に変な報告しないで下さい!折角のライラのお祝いなんですから!!」
こんな感じに弟、妹、兄が父に抗議したのですけどね…。またしても父は爆弾を投下したのですよ。
「祝いの席だからこそ、祝い事である縁談の話をしたのではないか。間違ってないだろう?それにな、アランもリランもライラが好きなんだろうが、まだライラに婚約の申し込みしてないだろう?」
「お父様、何言ってるんですか?」
「実はな、ライラはアランとリランとマリーと血が繋がってないんだ。だから、アランとリランがライラを好きでも構わない。ただな、まだリランは幼過ぎるので待て。アランは、ライラ次第だ」
ちょっと待って欲しい。縁談のお話しより、更に大きな爆弾が投下されてなかろうか?
妹は泣き出し、弟は怒り出し、兄のアランだけは、父に説教してました。母は、ニコニコと楽しそうに現状を観てました。
まだ私は、8歳だったのですが?
お年頃に入るのですか?
それ以前に私って、兄弟妹と血の繋がりがなかったのですか?今のガヤガヤと煩い状況から、聞けずに居るのですが。
何で今まで血の繋がりないと、私は気付かなかったのでしょうね?確かに兄弟妹と雰囲気が違うでしょうけどね…。
私は普通に家族だと思ってたのです。
そんな事よりも私の誕生日のお祝いで、父の投下した爆弾が思いのほかに、衝撃が強過ぎて私の思考回路は機能しておりません。父をガン見してました。
それは兄も弟も暫くの間は同じだった様で、妹は幼くて理解出来て無かった様子。いつも冷静沈着な兄も驚きを隠せず、弟は更に煩く、妹は意味が分からないけど泣いている。兄と弟の思考回路が復旧してから、母はこの現状が面白いのか、引き続きニコニコと笑って観ておりました。
思考回路の復旧が早かった兄は、ひたすら父に説教し、弟は父に説明しろと大声で叫び続けてたわ。この現状で、母は楽しそうに笑って観てたのです。(お母様、普通なら止めてくださるのではないか?)って良く分からない現状だったのですわね。
この時から私の中で王太子様との結婚は、まず考えたくないなって思ったのですよ。まだ、その王太子様に会った事さえ有りませんけどね。




