ステ振り
短いです。
よろしくお願いします。
『ケント・クロノ』Lv.3
BP:150/150
MP:400/400
総合力:2350
演算力:72
超感覚:12
持久力:70%
残りSP:2(+6 初心者ボーナス)
習得可能スキル一覧
《BP強化》NEW!
《MP強化》NEW!
《総合力強化》NEW!
《演算力強化》NEW!
《超感覚強化》NEW!
《持久力強化》NEW!
「おぉ、SPが増えてる!」
「白河部長、初心者ボーナスという文字が見えるのですが、これは何ですか?」
「もともとレベルアップ毎に1ポイントのSP獲得、Lv.10からは追加で+1、Lv.20からは+2……と設定していたのだが、それだと初心者が成長を実感できないと思ってな。まずは異世界を楽しんでもらえるように、Lv.10まではレベルアップ時の獲得SPが+3されるよう調整してみたのだ」
「全部パシブスキルみたいですけど、SPでアクティブスキルは習得できないんですか?」
「アクティブスキルのレベルアップにSPを使うことはできるが、習得には経験が必要だ。要求ステータスや前提スキルも存在する。というのも、RPGで定番の火炎魔法などは、使い方を誤れば大火事になるわけだ。前提スキルに、消火するための水魔法が設定してある。ちょっとしたヒントだな。色々と挑戦してみることだ」
「ひえぇ……確かに、火事は怖いですね……」
VRMMORPGだと主力でバカスカ打ってた火炎魔法。高火力・高範囲攻撃で便利だったけど、原っぱや森で打てば、そりゃ野火、山火事になるよなぁ
「一度習得したアクティブスキルは、思考で選択、発動できるようになる。誤爆を防ぐために言葉に出すのもいいぞ。雰囲気も出る」
「なんとっ、呪文詠唱! そうだな……
“我、誘うは静謐なる終焉。汝、その封印の中で安息を得るだろう……
――極寒の眠りを! 『氷の棺』”! 」
その瞬間、周囲の温度が下がった。
そんな気がした。
「さて、お勧めの構成も伝えておこう」
(つらい!この空気っ!)
「まず青海には、剣と魔法を使いながら最前線で戦う【勇者】を担当してもらいたい。バランス良く習得してみろ」
「分かりました、とりあえず、全部のスキルに2ポイントずつ割り振ってみます」
そう言って手早く割り振るユウト。
「6×2=12、割る4だから3?……ハルLv.4?」
「いや、Lv5で4ポイント余るんだ」
「まじかー、オレLv.3だった」
「私Lv.6なんだけど……」
「わ、私Lv.7になってましたぁ」
「えぇっ!?オレだけレベル低い!?」
「黒野はヴァイスから受け取った経験が少なかったからな」
「あー……気ぃ失ってすんませんでした……」
「あまり気にするな。お前はお前のペースでレベルを上げろ」
「うっす、頑張りまっす」
「黒野は魔法を使いつつ、前線で素早く状況を判断する司令塔、【賢者】だ。MP、演算力、超感覚、持久力が重要となる」
「演算特化はダメ?」
「ふむ、そうだな。演算は魔法の行使でも重要だが、それを発動するためのリソース、つまりMPと持久力がすぐに枯渇してしまう。この世界でMPを失うとアバターが消える、と言ったのは覚えているか?」
「あーっ!そうだった……」
「ケント、いくらなんでも説明を聞き流しすぎでは?」
「大丈夫!演算あげれば理解できるようになるはずっ」
溜息を吐く部長。
「……そうだな、まずは話を理解するための演算力を優先しよう。MP、演算力、超感覚、持久力に1ポイントずつ割り振り、残りを演算につぎ込め」
「自分で言ったことだけど、バカって言われてる気がする……」
「気がする、じゃなくて言ってるんだ。さっさとしろ。この後には腹黒共が待っている。青海も、ポイントを余らせるのはもったいない。演算と超感覚でも上げておけ」
「ひどいっ!……りょーかいっす」
「分かりました」
ポチポチとスキル習得。
「白山は後方支援、【ヒーラー】担当だ。魔法の中でも回復魔法は特に高い演算力が要求される。行使するためのMPと持久力も必要だ。MP、演算力、持久力を均等割り、もしくは演算力を高めに割り振るといい」
「はいっ、分かりました」
「うんうん、素直な子は大好きだ。【ヒーラー】にはMPや持久力を味方に譲渡するスキルもある。皆を支えてやってくれ」
「えへへ……」
アコの頭を優しく抱き、髪を撫で梳かす部長。安堵の表情で眺めるハル。
(良かった、アコの調子も戻ってきたようだ)
「赤座はBP、総合力、超感覚を優先してくれ。BPを上げておけば、攻撃を受けた際に消費するMPや持久力を軽減することができる」
「演算力を上げなくて良い理由を教えていただいても?」
「赤座は既に社交界というものを経験しているだろう。甘い誘惑なんぞに騙されるバカじゃない」
(そうだった。ナツキの家は財閥だったな。……騙されるバカってオレのことかよ!)
「この場で演算力を上げても、赤座には付け焼刃にしかならん。黒野は……付け焼刃でも無いと、何をやらかすか分からないからな」
(言葉の刃がグサグサくるっ!お願いBP、豆腐メンタルのオレを守って!)
「赤座は【騎士】役を頼む。魔法にはあまり頼らず、物理的な方法で皆を守って欲しい」
「あ、なるほど、脳筋ってヤツですn」
ピコーン!
《バックハンド・ナックル》
ふんっ!
ガンッ!
「今まであまり気にしてませんでしたが、頭上の《この》表示は何ですか?」
(さんきゅーBP、ちょっと痛かったけど)
鋭い裏拳で顔面を殴られながらも、平然と尋ねるケント。
(むうーっ!BPさえ無ければっ!)
ナツキはとても悔しそうだった。
「パーティメンバーへの通知機能だ。自分が次に何をするか、実戦でいちいち宣言する余裕なんてほとんど無いだろう。支援や連携に有用となる。例えば」
部長はそっとナツキの手を取り、
ピコーン!
《付与:痛覚強化攻撃》
ナツキの右手が淡く光りはじめた。
(はっ!?)
ピコーン!
《正拳・順突き》
「せいっ!」
ドスッ!
「ぐっふぅうう!!!」
踏み込みから腹部への一撃。かなり痛く、たまらず膝をつく。
(むふーっ!)
ナツキはとても嬉しそうだった。
「通知はお前たち以外には見えないから安心しろ」
「くぅっ……、この痛み、さっきと違って中々消えないんですが?」
「60秒持続する痛みに設定した。《付与:痛覚強化攻撃》は精神干渉系スキルの一つだ。魔法の所有者である私と、攻撃を受ける冬野では総合力の差が文字通り桁違いだからな。BPで軽減できなかったわけだ。物理攻撃でもBPの減少量が大きければ、それだけフィードバックされる痛みは大きくなるぞ?」
「つまり、私が総合力を上げれば……」
「うむ。そうなるな」
ぱぁっと輝く笑顔を浮かべるレイカ。
(うわー、ナツキがとてもやる気になってる)
60秒きっかりで痛みがすっと消える。
「ふぅっ……、しんどかった。ちなみに、部長のステータスってどのくらいなんですか?」
「ふむ。ちょっとだけ見せてやろう。《ステータス・オープン》」
『【管理者】リリィ』Lv.8191《制限》
BP:524287/524287《制限》
MP:524287/524287《制限》
総合力:214748364《制限》
演算力:131071《制限》
超感覚:131071《制限》
持久力:127%《制限》
( ゜д゜) …
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゜д゜) ……
(つд⊂)ゴシゴシゴシ
(; Д ) 。。ポロッ
思わず三度見した。
「メルセンヌ素数で統一してみた」
「あなたが異世界の神か」
「ただの『フルリンク型異世界体験マシ~ン(仮)』の【管理者】だ」
「えっと?理解が追い付かないのですが……」
「この世界に『魔法』が存在することは理解したか?」
「ええ、そこはすぐに」
「それを解析し、応用して、この星全域を覆う広域魔法を構築した。惑星魔法《フルリンク型異世界体験マシ~ン(仮)》だ」
「いや、そうはならんやろ……」
(部長、その名前気に入ってるのかな)
「ステータス画面を見た時点で気付くと思ったんだがな。お前たちがよく知るRPGに似ているのは何故か、少し考えれば分かるだろう。ここから先の話は、お前たちにはまだ早い。今はのんびり、とは言わんがこの異世界を楽しんでほしい」
「部長はどうして――」
『この世界で遊んでいれば、その答えは自ずとわかるさ』
ハルが尋ねようとすると、質問を封じるかのように、彼の脳内に部長の声が響く。
(なっ!?)
部長には変わった様子はみられない。
(何だったんだ、今のは……僕たちの成長を促そうという考えは理解できる。しかし、ここまで大規模な舞台を用意するメリットが白河部長には無い。そもそも、部長は僕たちのことを知っていて、あの日、『異世界冒険部』に誘ってきた。一体何が目的なんだ? ……いつもより思考が巡る。なるほど、これが《演算力強化》か)
「どうした?ハル?」
「ごめん。何でもないよ」
何かを言おうとして、少し難しい顔をしたハル。すぐに元のニコニコ顔に戻った。
(……?変なハル)
「さて、レベルアップしたお前たちなら、お食事会に現れるヤツらに呑まれることもないだろう。冬野は……注意しておけ」
「え?なに?どういうこと?」
「ケント……話聞いてたの……?」
「え?なんか怖い人がいっぱいいるんでしょ?」
「精神を害する干渉やスキルならBPで防げるが、美人や甘言に引っかかるな、って意味だ」
「おぉ!そーゆーことね!」
「流石にこれは……悩ましい」
「あはは……」
呆れられてしまった。
次こそお食事会予定。