表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒険部  作者: ノラえもん
7/25

初心者応援

短いです。よろしくお願いします。

できたところでぶん投げました。

「うっ……」


目を覚ますと、『セーブ・ポイント』に横たわっていた。


「二度目だ、自分たちで起き上がれるか?」

「はい、体もしっかり動きます」


手足を軽く動かし、ゆっくりと石の床から起き上がる。


「さて、これからお前たちは、陰謀まみれの『お食事会』に参加するわけだが、出てこい、ヴァイス」


(身も蓋もない。ってか、そんな場所に行っちゃっていいのか?)


ぽすんっ


「呼ばれて飛び出てっ!しゃららら~ん☆彡」


(う、浮いてる!)


「歓迎の式典といったが、海千山千の魑魅魍魎が跋扈する狩場でもある。集まった貴族同士で悪巧みするやつらだけではない。ローズとのコネを作りたいやつらが、お前たち自身を引き込みたいやつらが、『アース』の技術を盗みたいやつらが、あの手、この手で近づいてくるだろう。そこで、まずは身を守るすべを授ける。親切設計、初心者応援レベルアップキャンペーンだ」


「チュートリアルクエストですか?」


「ちょっとごめんね~?」


ヴァイスは、ふよふよと近づいてきて、その手をオレの頭に乗せると、


「やれ」


白河部長の声で、ほわ~んと、暖かな、幸せな気持ちが流れ込んできた。


しかし、それは一瞬のことで、


「ぐっ!?」


悲しみ、飢え、苦しみ、怒り、叫び、憎しみ、嫉妬、恨み、渇き、痛み、恐怖、絶望、諦観、そして死。


幸せに隠された昏い感情がドロドロと流れ込む。


「うっ……!」


刹那、目の前が真っ黒になった。


「ふぅつっ!!!!」


吐き気を堪え、ふらつきながらも、何とか踏みとどまり、ゆっくり膝をつく。


「まぁ、頑張ったほうか?」

「もうちょっと根性みせなよ~、男子~?」


「ケント!大丈夫か!?」

「ケントに、何をしたの!?」

「ひぇっ……」


「そう騒ぐな。経験を送り込んだだけだ。思念の集合体であるヴァイスは、王都民たちの経験の塊でもある」

「今のでメタル系1匹分くらいの経験、かな?きゃはっ♪」


「ふうぅぅっ、ぐっ、頭がぐるぐるする」

「死ぬことは無いから安心しろ、次は誰がやる?黒野は落ち着くまで横になっていろ」

「うっす……すんません……」


「っ…!次は、僕が行きます」

「おっけーっ、頑張れ~☆」


ハルの頭に手を乗せ、思念を送り込むヴァイス。


「くっ!」


顔を顰め、流れ込む感情の重圧に耐えるハル。


(この程度にっ、耐えられなくてどうするっ!屈するな!)


(僕が膝をつくわけにはいかないんだっ!)


「おぉっ、やるねぇきみっ!うん、これくらいでいいかな?」


その声で、ハルの顔から険しさが薄れた。


「っ、ふぅぅぅぅ……」


深く息を吐くハル。


「ナツキとアコには軽めにしてあげてください……」


その頼みは、次の言葉で打ち砕かれる。


「何を言っている、赤座と白山には、倍の経験を受け取らせるつもりだぞ?」


「えっ?」

「ひぇっ……」

「なっ!」



「まずは、君かな~?」

「っ、お願いします」


緊張するナツキの頭に、そっと手を乗せるヴァイス。


一瞬の幸福感から、地に叩き落すかのような、昏い想いが襲い掛かる。


「ぐっぅぅぅぅっ!」


ぐぐぐぐっ、グググググッ


更に圧し潰そうと、『悪意』が上乗せされる。


(何なの!?これっ)


やばいっ、斃れるっ!



『赤座家の御息女とあろうお方が』



脳裏を過る、失望、嘲笑。



(っつ!こんなものにっ!負けてたまるかああああああいっ!)



生まれた想いを胸に、グッと両足に力を入れるが、




ポキッ……



ふらっ


「おっと」


手折たおれ、膝から崩れるナツキを部長はしっかりと支えた。


「ふふっ高潔の片鱗は見えたな」


意識を失った夏姫を、賢冬の隣にそっと寝かせる。


(う……?ナツキか、お疲れさん)


「黒野、赤座に腕枕をしてやれ」

「へっ?いやいやいや、何いってんすか、バレたらナツキに殴られますよっ」

「そうはならんから安心しろ。それに、赤座の回復を早める意味もあるんだ。今、赤座は折れている。支えてやれ」

「はぁ……よく意味は分かりませんが、部長がそういうなら」


もぞもぞと動き、ナツキの頭の下に、自分の腕を差し込む。


(ひゃー、近い近いって。でも、昔はよくこうやって一緒に寝たなぁ……あれ?そうだった……か?……)


眠気がやってきた。


「ゆっくり休め」




「さて、最後は白山だな。さくっと終わらせるぞ」

「はっ、はいっ」


「んじゃいっくよ~☆」


束の間の幸福から、強制的に流し込まれる黒。


「ひっ!」


黒、黒黒、黒黒黒黒、黒黒黒黒黒黒黒黒黒……


(耐えなきゃっ!)


「んんんんんんんっ!!!」

苦悶の表情を浮かべ、必死に耐える東雲秋子。


黒■黒■黒■黒■黒黒黒黒黒■黒■黒■黒■

■黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒

黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■

■黒■黒黒黒黒黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒


黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒■

■黒■黒黒黒黒黒■黒■黒■黒■黒■黒■黒

黒■黒■黒■黒■『……ケテ』黒■黒■黒■

■黒■黒■黒■黒■黒■黒黒黒黒黒■黒■黒


流れ込む昏い想いの中に、知らない人の声が混ざった。


(えっ?)


『タスケテ』


「ひぐっ…くぅううううっ!!!」


涙が頬を伝う。


(そっか)


ペタンと尻餅をつく。それでも、ヴァイスは経験を流し込む。


「止めてあげま――」

「止めるな、続けろ」


一度気付くと、


『タスケテ』『タスケテ』『タスケテ』

『タスケテ』『タスケテ』『タスケテ』

『タスケテ』『タスケテ』『タスケテ』……


昏い感情の裏の声が、叫びが、願いが、頭の中をガンガン廻り、

それに、自分は何もできなくて、悔しくて、涙が溢れ出す。

黒く塗りつぶされる心の隅に、



(救いたい)



小さな光が生まれた。



「ん、おっけ~☆おつかれサマー!」


「すんっ!ぐすっ、わたしっ、何もっ、できなかった!」

鼻をすすり、涙でぐちゃぐちゃになった顔を拭う白山。


「最後まで、よく頑張ったな」


泣きじゃくる白山を、優しく撫でる部長。


「部長!これはいくらなんでもやりすぎですっ!」


そこへ勇春が抗議する。


「ふむ、青海ちょっと来い。白山、すぐ戻る。ヴァイス、少しの間頼んだ」


「うくっ、ひっく、はい……」

「おっけー☆」



部屋の隅へ移動する二人。



「部長!何もあそこまですることはないでしょうっ!」

「お前は白山が、何故泣いていたか、分かるか?」

「えぇっ!それはそうでしょうっ!!あれだけの苦しみが流れ込んできたらっ!」


「きたら、どうなる?」


「きたらケントのよう――にっ……えっ?」


ふいに、冷静になる。


ケントは一瞬ではあるが、意識を手放して膝をついた。


(アコはどうして意識を手放さなかったんだ?)


「青海、お前は『悪意』に耐えるだけだった。対して白山は、受け入れ、必死に理解しようとした、だから涙を流した。赤座は、『悪意』に真正面から立ち向かった。だから折れた。それだけのことだ」


「そん……な……嘘だ…僕は戦った……違う……逃げたんじゃない……」


告げられた事実に、よろめく。


「赤座は今日、一度折れたことでその芯は強くなる。青海、お前が思う以上に赤座も白山も強い」

「僕は、みんなを、守ろうと……」


「お前、【聖女】がどんなものか、知っているんだろう?」


ビクッ!


その言葉に愕然とし、膝をつく。


(そんな、隠し続けてきたのに)


「なるほど、【賢者】か。あいつめ、本当に無茶をしたんだな」

「はっ、ははっ、さすが部長。何でもお見通しですね……」


力なく乾いた笑い声。


「皆を『悪意』から守り抜く、というのがお前の矜持、そして心の支えだったようだが……すぐに立ち直れとは云わん。気持ちの整理だけはしておけ。戻るぞ」


アコが、悲しそうにこちらを見ている。


「全てを守る必要はない。取捨選択をしろ。青海、お前にはそれができるはずだ。支えることも、支えられることも覚えろ。お前たちは四人パーティだ、忘れるな」


(周りにはパーティと喧伝しながら、自分は大切な仲間を信じていなかったんだな……そうだ。大切な仲間なんだ)


それに気づくと、荒んだ心が少し暖かくなった。ゆっくり立ち上がる。


「今は無理ですが、努力します」







『私の隣には二人の王子さまがいた』


『ひとりは、私をつつむ暖かい陽だまりのような王子さま』


『ひとりは、私がいないと何もできない弟のような王子さま』





『私は闇の中にいた』



『ひそひそと、家政婦の、家庭教師の嗤う声がきこえる』



『まとわりつかないでっ』



『もがく、気持ち悪い暗闇の中』



『そんな中でも、確かに感じる』



『暖かい』



『私が落ち込んだ時にはいつも慰めてくれる』


『そう……優しい王子さま……』



暖かさに、手を伸ばす。



幸せな気持ちに包まれる。



すぅっと意識が戻る。



ゆっくり目を開けると、




「おっ起きたか……」

「へっ?」



目の前のケントとばっちり目が合う。


(え?何これ?腕枕!?!?)


そして、甘えるように伸ばした自分の手に気付き。


がばっ!


慌てて跳ね起きる。


「ケント!何してるのっ!?!?」

「おおっ?オレのせいじゃねーって!部長がしろって!」


「【眠り姫】のお目覚めだ。よし、みんな揃ったな」


真っ赤になりながらも立ち上がるナツキ。


「こほんっ、失礼しました。白河部長、どれくらい時間が経ちましたか?」

「三十分といったところだな。少しは落ち着いたかな?ステータスを開いてみろ」




「おぉっ!れべるあーっぷ!」

早く冒険パートにいきたい……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ