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異世界冒険部  作者: ノラえもん
23/25

悪霊/Evil Spirit

よろしくお願いします。

学園の地下施設へと連れだって移動する。


「本日のセラスでの予定なんですが、早速魔獣と戦えることになりました」


歩きながら、茨木紫檀が話し始める。


「王都に近い町の周辺で、小規模の群れが発生したらしい。あらかた掃討は終わって、弱そうなヤツを数匹見繕って捕獲してもらっている。闘技場を借りて、いわばチュートリアルバトル、といったところだ」


それに続く、白河百合絵。


「魔獣……ですか」

「発生って、突然、ポンっと出てくる感じです?」


ゲームでよく見るモンスターの出現を想像した。


「ふーむ。何となく、そんな存在だと思って聞いてくれ」


「歓迎会でもさらっと伝えたように、元はごく普通の、野生の生物だ。悪い精霊、う~む……悪霊とでも呼ぼうか。それに憑依されて狂暴化した状態、それが魔獣だ。

最下位の悪霊に憑依された生物でも身体強化の精霊魔法を無意識下で使うため、素早く、力強い。衝動の赴くまま、周囲を荒らしている。

悪霊は憑依した生物を扱いやすくするために、ある程度、構造を変化させるんだ。それが外見的特徴としても現れ、強さの判断材料にもなる。

面影を留めないほど変化している場合なんかは、大体ヤバいヤツだな」


んー?体を乗っ取られちゃう感じなのか。


「ついでに説明しておこう。ヴァイスやランツなどの精霊種、そして悪霊を形作る根源、『精霊素』ってモノがセラスにはあるんだが、ソレは純粋で透明な魔素の流れに乗って、普段はセラス全体を循環している。

流れには良い精霊素も、悪い精霊素もごちゃ混ぜに含まれている。さながら濁った川のように。

そして、その流れを滞らせる事象が発生したトキに、微弱な精霊を形成してその場にサラサラと降り注ぐ。良い事象は良い精霊素を引き寄せ、悪い事象は悪い精霊素を引き寄せる。好循環・悪循環、そんなところだ。


ここまでで質問はあるか?」


すっと、手を挙げ、


「部長、アースでも起こりうることが、セラスでは精霊の力で、良いことも悪いことも影響が拡大されてしまう、という認識で合っていますか?」


確認するハル。


「その通りだ。そして、ここからが問題でな。

集まった精霊素が大地へ降り注がず、(オリ)のようにドロっと、星の流れに戻ってしまうことが往々にして起こっている。降り注ぐ前に状況が逆転したか、何らかの力が働いたか。

一度凝集したカタマリはほどけることなく星を漂流する。その間に少しずつ成長し、やがてどこかへと落下、その周囲一帯に、良い事象なり、悪い事象なりが突発的に発生する。


精霊といっても、自我を持つモノはほんの一部だ。良い精霊の場合、降り注いだ場所に存在した生物が快適に過ごせるよう、助けようとする。大地は豊かになり、樹々は芽吹き、家畜や野生動物は肥える。そこが穀倉地帯ならば豊作が約束されるだろう。

だが、それが悪霊だった場合、周囲への侵食を始める。その場に野生動物の群れがあれば、それがそっくり魔獣の群れとなる。どれだけ貪っても飢えや渇きは満たされない。微生物は土地を腐敗させ、細菌は悪疫となる」


(それって、つまり……薬と毒のような、表裏一体の存在なのか?……いや違う、そもそも、そんな法則が『存在』することがおかしい。『なぜ』、その先にあるものは何だ)


「それぞれの町にもヴァイスの様な守り神が存在しており、良いモノは引き寄せようと、悪いモノは弾き返そうとしている。しかし、住民に負の感情が蔓延していたり、守り神の意思が薄れていたりすると、守護の隙間から町に悪いモノが流れ込んでしまう。

程度にもよるが、一人二人、悪魔憑きと呼ばれる狂人になることもあれば、酷い時には町全体に広がり、守り神が消滅することもある。

そうなってしまえば、数年~数十年単位でヒトが住める土地では無くなり、残念ながらその町は地図から消えてしまうわけだ」


ふーむふm…う!?


「うぇっ!?って、ヒトにも憑くんですか!?」


マジかよ。


「もちろん。ヒトも生物だからな。善き心、強き心であれば、抗うこともできる。しかし、悪しき考えの持ち主や、心が弱っていた者であれば、簡単に呑まれてしまうだろう。ヴァイスから『経験』と言って渡した、アレに近い」


ゾクッ!!!


脳裏をよぎる。

自分を真っ黒に塗り潰される、深い恐怖。そして、塗り替えられてゆく、諦観。


「ヴァイスは大国の首都を守護する精霊だ。あそこまでの力を持つ守り神は少ない。あれを基準にしちゃダメだ」


(もしも、善悪の精霊素が等量だった場合、善の精霊素を取り込み続ける町の外は悪霊ばかり、ということになるけど、はたして)


「セラスで最も酷かった時は、国一つを覆う大きさまで成長した悪いモノが落下し、一つの国が滅びたこともあった。始まりは小さな澱みだったが、着地点を見つけることができず、盥回しにし、どうしようもなく肥大化したそのツケを、大国の集団的無意識で、非力な小国に押し付けた。

それが、五十年前の大侵攻だ」


茨木先生が救ったそうだけど、


「万を超える魔獣を統率していた魔獣王は、狂人化した小国の王だったと云われる。しかし、本当に狂っていたのかは、な?」


隣の、茨木先生を横目で見る部長。


「はい。当時の私では、彼を、そして彼らを、救うことはできませんでした。

後に聴いた話ですが、彼は、臣民を愛し、また、愛されていたそうです。領土拡大などの野心は無く、彼の手が届く範囲を幸せにしようと治めていた。

だからこそ、魔獣化した後も王国民を束ね、汚染された王国から脱し、飢餓に苦しむ民を、ある意味で正しく導いていたのかもしれません、ネぇ……」


苦笑する先生。


「大侵攻なんてのは、押し付けた側の言い分だな。前触れもなく理不尽に土地を奪われ、食糧を求めて彼らは大移動していた、との見方もできる。自分たちで元凶を生み出しておきながら、異世界人であるローズに『殺戮』の咎を背負わせた。これが、『セラス』の、『ヴァイスシュテルン』を含む、大国の罪だ」


つまり茨木先生が斃してきた魔獣って……



なんかそれって、



それって……



『≪善悪の天秤≫を用いて、波長の合わないヒトをカットする、取捨選択したらどうなると思う?』



部長の言葉を思い出す。



先生は、




「過去は変えられません。ですが、未来を変えることはできます」

「さて、そろそろセラスへ移動しよう」


真っ直ぐな表情の先生と部長を見て、


気持ちを引き締めた。






――――――








セラスの、『召喚の間』へ移動すると、


ぽすん。


「いらっしゃ~い☆」


陽気な声と共に、早速ヴァイスが現れた。


「ヴァイス、お前すげーやつだったんだな」

「ふっふ~ん?気付いちゃったか~♪もっと敬っていいんだよ☆」


引き締めた気持ちが緩みそうにもなるが、


このお調子者の姿も、きっとヴァイスの一面でしかないのだろう。




オレが憧れていた魔法の世界は、




もっと心躍る物語なんだよ。




いつか修正。

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