願い/Wish
のんびり見て頂けたらと。
雑で短いです。
よろしくお願いします。
「ぜぇっ、ぜぇっ……ふぅっ……疲れた……」
「お疲れ、ケント」
俺が五十五周(約二十五キロメートル)走り終わるのを、みんなは待ってくれていた、
はずもなく、
みんなそれぞれ、白河部長と茨木先生、そして葛西さんに鍛えられていたようだ。
ヘトヘトである。
「……って葛西さん!?何でいるんですか!?」
アロハシャツにサンダル姿、ひらひらと手を振っている。
「ははっ、歳を取ると、色んなお仕事を兼務するようになるんですよ。実は私、ここの学士課程部で教鞭を揮っております」
「葛西さんは若いでしょうに、これからまだまだお仕事は増えますからね」
「ひゃー、怖い。ブラック上司ですか。ブラックローズ先生?」
「ふふっ、私ほどホワイトな人間はいませんよ。ねぇ、ブラックリリィ先生?」
「はぁ……お前らな……内輪ネタは通じんからな?」
ちんぷんかんぷんである。
「私だけ短くて、その、すみません……」
おずおずと、申し訳なさそうなアコに、
「ヒトには得手、不得手があるからな。白山にしかできないこともある」
「そうです。それを見つけて、伸ばすのは私たちのお仕事です!」
「は、はいっ、頑張りますっ!」
部長と先生が応えた。
ふんすっ!
ぐっ!と両手を握りしめて息巻くアコ。
(うーん、癒される)
「ふぅっ……、ハルは何してたの?」
クールダウンのストレッチをしながら、俺より三十分ほど早くゴールしていたハルに尋ねた。
「あぁ、葛西さんから、『各筋群の作用および配置から考察される効果的な重力下トレーニング』ってのを教わっていたよ。今まで自己流でやってたけど、目的によって変える必要があるんだってさ」
「へぇ、難しいことやってたんだね」
「ケントッ!凄いよ、このトレーニング方法!そんな難しくないから、後で一緒にやろうよっ!」
「やーめーてー!もうヘトヘトなんだって!」
おもちゃを与えられた子供のように、キラキラした目でケントを誘うハル。
「さてと、そろそろだな。お前たち、セラスへ向かうぞー?」
「そういや、学園の≪デウス≫ってどこにあるんですか?」
「ふふふっ、ついてからのお楽しみだ」
ニヤリ。
(いやーな予感がしてきた)
『学園長室』
ババーン!
やたら立派な、木製のドア。
コンッ、コンッ
『合言葉は?』
「愛」
『恩?』
「永劫」
『よし、入りなさい』
んんんんんんん????????
めちゃくちゃ馴染みのある声が、中から聞こえた。
(いや?まさかな)
ガチャッ!
現れるエプロン姿の女性。
「いらっしゃ~い」
「母さん!!!!!!!!!!!!何やってんの!!!!!!!!!!!」
「驚いた?ねぇねぇ?驚いた?お母さん頑張っちゃった!」
「そりゃ驚くわっ!!!!何やってんだよ!!!!!」
「掴みはおっけぇ?それじゃ、ゲート開けるわね~。ポチっとな」
急な展開に理解が追い付かないまま、
突然、
ガコンッ
床が抜けた。
ひぇっ!?
ひっ?
ドサドサドサドサッ
クッションの敷き詰められたカゴに落とされ、
「いってらっしゃ~い」
ガタンッ!
ゴトゴトゴト……
トロッコに乗せられて、地下へと運ばれる一同。
「何だったんですか、今の……」
「この一発ネタのために、協力者たちが頑張ったんだ、楽しんでくれたか?」
(母ちゃん、なにやってんだよ……)
「ネタ詰め込みすぎて、混乱してますよ……」
「ははっ。後で直しておこう」
検査着に着替え、茨木先生による注射を終え、≪デウス≫のベッドに寝転ぶ。
「しかし、ここからセラス行きですかぁ……ヘトヘト状態で迷惑かけませんかね?」
体圧分散機能のついたベッド。
疲れた体にその感触が、
心地良い。
このまま寝てしまいそうだ。
『フフフ、またきっと驚きますよ?それでは皆さん、ボン・ヴォヤージュ(良い旅を)!』
目を閉じる。
ふわっと、
消える感覚。
―――
……
体が形作られる感覚。
そっと目を開くと、
「うおっ!?体が軽っ!!!」
(疲労感が全回復してる……)
「ははっ、これは驚いたな……」
「気分はリフレッシュできたか?これで楽しくセラスで遊べるだろう。よしっ、いくぞっ!」
『召喚の間』のドアへと向かい、堂々と進む白河部長。
その力強い姿は美しかった。
その背中を追う、部員たち。
世界を変えうる銀弾。
(潰されるなよ)
リリィは願った。
ノックの回数に迷った。
少しでも面白おかしく作れたら、と思います。




