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異世界冒険部  作者: ノラえもん
15/25

思い付きで

間のこと考えてないです。

よろしくお願いします。



「【勇者】さまがいらしたぞー!」



町は、冒険者ギルドはその話題で持ち切りだった。一目見ようと、皆がギルドから飛び出す。



そんな様子を眺めながら、



「【勇者】さまね。大層な肩書ですこと」



「『草むしり』も行こーぜ?【王子】様、【聖女】様も一緒だとよ。見るだけでご利益あるかも知らねーぞ?」



「いいや、自分が惨めになるだけだ。いつもの仕事いらいに行ってくるさ」



『草むしり』と呼ばれる、隻腕の男は今日も今日とて、薬草摘みで日銭を稼ぐ。







―――








町を出て、いつもの森までの道中、脇道に逸れながら地面に目を凝らし、薬草を探す。



「おっ!あったあった。アルテミスリーフ。よく育ったなぁ」



弓の女神、アルテミスの名を関する、多くの薬効を含む薬草だ。

煎じて飲めば胃腸薬となり、磨り潰したものは腰痛の外用薬となり、独特の苦みや香味を持つため、料理や薬草酒に使われることもある。


アルテミスリーフを使った代表的な薬草酒、アブサン。

苦みの中に、すうっとする香味成分を含む、美しい緑色のリキュールである。

幻覚などの向精神作用があるとされ、特に芸術家たちの間で愛飲されていた。

しかし、アルコール度数が高く安価であったため、大量摂取で身を滅ぼす者が後を絶たず、美しき狂気、緑色は、悪魔の誘惑の色などとも呼ばれる。


月の女神とも呼ばれるアルテミス、ルナティック。

その狂気に魅入られた者の運命は破滅へと繋がっていたのかもしれない。


「昔は弓も引けたんだが、今では腰の短剣一本です、って誰が短小や!」


なるべく新芽を多く摘み取り、腰に下げた麻袋へ入れる。


「は~あ、どこかに女神様はおらんかねぇ」



ぼやきながら森に辿り着き、薬効がある樹を見つけては、短剣で樹皮を削る。



片手での採取も、慣れたものだ。



合間に、森に自生する果物をかじり、夕飯の嵩増し用に山菜を摘む。



「おっ、こいつはラッキーだ!これも【勇者】御一行のご利益かね」



精力剤に使われる、貴族御用達のキノコを見つけた。



ギルドで高値で買い取ってくれる。



「伯爵夫人、オレのキノコもどうですか~?まぁっ!お下品ですわっ!」



「こんなもんか。あんま奥行って魔獣に遭いたく無いもんね~」



ズキンッ。



幻肢痛。



魔獣の恐ろしさは、身に染みていた。



野生動物と違い、魔核を持つ魔獣は賢い。



「狩れると思って弓を引いたら、もう一匹が死角からガブリッ!」



待ち伏せされていた。



「【狩人】だったはずなんだけどなぁ、バカなオレは恰好の餌だったわけだ」




命からがら、




逃げ出せたものの、




その後の生活は、






転落の一途だった。






「今日の山菜雑炊は豪華だなっ!臨時収入で肉が入るっ」








―――






ギルドに戻ると、物凄い行列ができていた。



中から出てくる人は笑顔に満ちていた。感極まって泣いてる人もいる。



(最近見なくなったジジババ勢ぞろいじゃねぇか)



「「『草むしり』!やっと戻ったか!」」



馴染みの冒険者たちに呼ばれる。



「噂の【勇者】さまでしょか?」



「【聖女】様が町の人を治療してるんだ、しかも無料タダだとよ!」



「お前も診てもらえよ!ホントすげーから!」



並んでギルドの中に入ると、人の山、人の山。




その中央付近を開けて、




横たえられた、ボロボロの子供たちの前に、身なりの整った集団。




(ボロ小屋の悪ガキども、みんな虫の息じゃねぇか……)





前にいる、黒髪の可愛い子ちゃんが噂の【聖女】さまかね。




「《スキャン》」



【聖女】の眼が虹色に輝く。



「《アナライズ》うっ……」



「大丈夫か?何が、診えたのだ……」



一瞬顔を顰めた【聖女】に金髪の青年が、心配そうに尋ねる。




「やります、みんな助けます。サイトカインが高い、至急、多めに準備をお願いします」



ギルド職員が慌てて裏手に走る。




「消化管出血による貧血、呼吸器までにカビ、私たちは肺真菌症と呼んでいます。



口腔内には乳歯脱落の瘢痕、菌血症は多分ここから。



そして、この子たちも、肝臓を中心に大量の……寄生虫」




金髪の青年が苦しい表情で、【聖女】に頭を下げ、後ろに控える文官が、【聖女】の言葉を、記録していた。




「お、お待たせしました!これで、足りますか!?」





職員二人の手には、計三十キロ程の大きな肉塊が抱えられていた





立派なお肉。




神様へのお供え物かぁ?食いて~なぁ。






「有効領域設定」





【聖女】より発せられた輝く力場が、三人の子供を包む。




「《リカバー》」



(お、エリート【魔法士】さまお付きの【神官】が使うやつだ)



子供の全身が優しく、光る。




「消去対象のDNA誤差を確定、《イレイス》」






「《グロース》 生きなさい」




ひと際強い輝きを放ったかと思えば、




血色の良い三人の子供が、




穏やかな息吹を取り戻していた。




「「「「うおおおおお!?すげええええ!!」」」」




周囲が歓喜に染まる中、




来たばかりのオレは、




ガキどもに肉塊が吸い込まれる奇跡に、




唖然とした。




(魔法で肉を喰わせたのか……?)




「安全な場所へ運んで下さい」




武官と思しき付き人たちが、子供たちを抱き上げ、連れて行った。




「根本的な解決にはなりません。栄養状態、衛生環境の改善を急ぎなさい」



【聖女】は、黒髪の少年から渡された『聖水』を飲みながら、



「私の手が届く範囲は、全員、一度だけ助けます。二度目は無い」



「今回の旅で、徹底的に『膿』を出し切る」




「王都から遠いと云って、随分好き放題していたようだな」




金髪の青年に威圧され、ぷるぷる震える肥えた豚。




あれが【王子】さまかな?ぷぷぷ、ざまーみやがれ。




淡々と指示が飛ぶ、




身なりの整った集団




どいつもこいつも、




オレを惨めにしてくれる。







―――








「へへっ、魔獣相手にヘマしちまって……」



男(草むしり)に順番がまわってきた。



「肉をこちらへ」



淡々と指示を出す、目の前の【聖女】さま。



こんな可愛い子ちゃん見たことな~い。




ど~せ私はただの雑草。住んでる世界が違いま~す。




そして、下卑た気持ちが浮かんでくる。




夜は【勇者】さま?【王子】さま?



どっちのモノを咥えるんでショ~!



いいキノコ、ありますぜ?ぴょこんっ!





ズクンッ


「っ!?」




なんだ?今の寒気……




「腕をこちらに出してください」





包帯を解き、差し出した腕の断端部より先に、



大まかな形で骨付き肉を並べられる。




「《スキャン》、《アナライズ》」




「《クリエィション》」




聖女が唱えると、断端部と肉片が輝き始め、



光の泡となり、その構造、配置をみるみる組み替えてゆく。



幻肢をかたどり、徐々に実体が現れ、



光が収まると、失った腕が、完全に復元されていた。




「「うおおおおおお!!!すげえええええ!!!」」



恐る恐る、手を握り締める。



久しく忘れていた、感覚があった。




「ありがてぇ!ありがてぇ!」



「ゆっくりと慣らしてください、次の人」



いかん、涙出てきた。



「良かったなぁ!『草むしり』!」



仲間と一緒になり、はしゃぐ男。






「良かったの?《アラート》表示されてたけど」



「一度は助けると言いました。下卑たものを感じたので、制限を掛けました」



「そっか。間違えるようなら、消すね」



「はい。お願いします。きっと、大丈夫」



(生きて、ください)



黒髪の男女の静かな声は、【聖女】の願いは、喧噪に掻き消された。






―――





その夜、町では勇者御一行歓待のため、盛大な宴が開かれていた。



喫緊の問題である栄養状態の改善、体調回復の慶事も兼ね、領民へ食事、そして酒までもが無料で振舞われ、町は大いに湧いた。



久しぶりにありつけた酒に、宴の空気に、『草むしり』と呼ばれる男は、酔っていた。




「腹いっぱいの飯、うまい酒。せっかく、【聖女】様に手をもらったんだ~。女でも抱きて~なぁ」




用を足し、宴の会場へ戻ろうとする途中で、



ギルドでいつも薬草採取の依頼を出す女を見つけた。



宴の熱に浮かされながら、女に声をかけた。



「へへっ、こんばんは~?」



「はい?あ、こんばんは。手の調子はいかがですか?」



「おう、ばっちりだ!」



違和感を覚えるものの、数年ぶりの利き手を、馴染ませるように握って開いて。



「これからは実入りがいい狩猟、そして魔獣討伐で活躍だ~」



魔素を多量に含む魔獣の肉は、高給取り【魔法士】の主食となり、



そして何より、魔素の結晶とも呼べる魔核は、



様々な魔道具に用いられており、高額で取引されている。



「これでも昔は【狩人】だった、次こそ、失敗しねぇ。借りを返してやる!」



男は上機嫌で語る。



「そうですか、薬草はもう……」



その言葉で、男の表情は険しくなった。



「っもう、誰にもっ、オレを『草むしり』なんて、よばせねぇ!」



頭に血が上り、同時に下半身も滾る。



「ごっ、ごめんなさい!」



慌てて女は謝るが、



「こっちに来い!」



宴の会場から少し離れた場所へ女を連れ出し、路地裏へ怒り任せで押し倒す。



「『草むしり』はっ!もうっ!ごめんなんだよっ!」



愛用の短剣を脇に置き、女を乱暴に押さえつけながらズボンを下そうとして、




滾りを叩きつけ、女を滅茶苦茶にしようとして、




酩酊し、発情した頭で、ふと、気付く。





萎んでいた。





「くそっ、くそっ!なんでっ!たたねえんだ!?」



「痛いっ!」




宴の喧騒で、女の声は届かない、はずだった。




「なるほどね」




空気が凍る。




酔いも醒め、興奮も冷め、ゾッとする声に振り替えると、




「っ!【勇者】さ……ま……!?」




「気になったから、見ていたよ」





「へへっ……、これはですね、そうっ、宴の空気に充てられまして」



男は冷や汗をかきながらも、女から離れ、近くに置いた短剣にこっそり手を伸ばすが、




(くそっ!どこにいった!?)




ちらりと見ると、




【聖女】に治してもらった腕が




肩口から消えていた。





「『善意』を喰い物にするクズは許さない。



反対の手も邪魔だね」




(へっ?)




青ざめた。




傷口さえ残さず、




消えていた。




「ひっ!ひいいいっ!!!」




たまらず、腰を抜かす。




「クズの頭でも分かるよう説明してあげるよ」




そっと男に近づき、頭を掴む。





「『善意』にすがって、醜く生きろ」





耳元に冷たく言い残して、【勇者】は立ち去った。







絶望する男。





『冒険者』としての知識しか持たなかった彼は、




『草むしり』と嗤われながら、薬草を集めるしか、




生活の糧を得る術を知らなかった。




そして、今、両腕を失ってしまった。




【物乞い】という言葉が脳裏に浮かぶ




抜け殻となった男。




そこへ。




「いきなりで、びっくりしたけど!」





女は涙目になりながら、男を睨む。





「次はっ!あたしが、あなたを助けるからっ!!」




「!?」




突然の言葉に、男は酷く動揺した。





女は、





踏まれて生きる雑草だった男を知っていた。





小遣い同然の報酬にも拘わらず、





薬草採取の依頼を受け続けてくれた彼を、





小さな薬屋を支えて続けてくれた彼を、





薬屋の娘だった女は、





目で追っていた。






「あたしの家は貧乏薬屋っ!あなたの薬草に、ずっと助けられてきた!」




「体一つで、この恩を返せるなら、求められるのは、嫌じゃないんだよっ!」




「だけどっ、もっと素敵なっ!初めてにしてよっ!」





泣きじゃくる女。





「足があるでしょっ!立ちなさいよっ!」



「……はっ?」



「いいからっ!ほらっ!」





無理やり体を引っ張られ、





よろめきながら、






女に支えられながら、





醜く、立ち上がる。





「口があるでしょっ!口説いてみせてよ!」

「すっ、好きです……」


女の言いたいことも理解できず、咄嗟に出た言葉。


「そんなんじゃ響かないっ!やりなおしっ!」




力強く、女に掴まれ、見つめられる。




「あたしがっ、支えているからっ」



ぶわっと、



視界が歪み、




「オレのっ……




支えに、なって、




くださっ……うっ、うあっ!」




顔を歪ませ、男も泣きじゃくる。





「ははっ、ぶっさいくだなぁ……





でも、今の言葉は





響いたよ





よく、頑張ったね」





体も心も支えられ、抱きしめられながら。





雑草では無い、






暖かな『人』であることを理解した。






「二人なら、なんとかなるよ」






―――







「無学な男でしたが、それでも、女の支えで必死に言葉を覚え、人に響く話を考え、


田舎の道端、ひっそり始めた話屋が、視察にいらした【貴族】さまのお耳に入り、


今では王都酒場の隅っこで、日銭を稼ぐ、しがない【噺家】をやっております」





「「「「泣かせんなこらああああああ!!」」」」





「まぁまぁ、お待ちください、皆さん。



この話には続きがありまして、



異世界には「たるをしる」という言葉があります。



「生活に満足している、それを知る者は幸せだ」という意味だそうです。



異世界の文字で、足るは『足』を意味しております



『足』を知る。



腕を失った醜い男は、




彼女のお陰で、『足』を知り、




愛を知り、





そして、なんとっ!





可愛い娘を授かりました!



醜くも、幸せ掴んだ男の半生、



お聴きいただき、ありがとうございました」



ペコリ。





「「「「めでてえなああこらああああああ!!」」」」






【噺家】の隣に、花は無いが素朴な顔立ちの給仕が、娘を抱いて、そっと寄り添い



羽織の下に隠していた腕を出し、【噺家】は女を抱き寄せた。



「うぇっへっへ」



【噺家】の顔は、とてもだらしなかった。





「ひゅー!ひゅー!お熱いねぇ!」

「麦酒だ!麦酒をよこせっ!」

「こっちにも追加っ!」

「よっ!この幸せ者ー!」







―――







王都で【噺家】の噂を聞いた勇者パーティは、夫婦に会い、



「《クリエイション》!また、幸せなお話をきかせてくださいねっ!」



男は泣きながら、その両手で、生まれたばかりの赤子と、愛する妻を抱いた。




【遊び人】モードで王都観光中の一同。




「ところで、ハルさんや?」

「何ですか、ケントさん」


「この【勇者】、ひど過ぎない?」

「これは人情噺ですから、多少は盛っても良いのではないでしょうか」


「どこまで実話なのっ!?ねぇっ!?」

「ふっふっふっ、想像するのも楽しいですよ?」



「ハルの鬼畜【勇者】モードも凄いけど、アコの冷徹【聖女】モードも、中々……」

「あうっ、お恥ずかしい……」


「そういえば、『愛』しあっていたら、その、できちゃうんだよね?」

「な~にがデキちゃうんですか~?ナツキさ~ん?」


 ピピッ

《アラート》



「ふんっ!」



ローズ直伝、右足踏み込みからの、顎先を刈る鋭い右フック!



 ピコーン!

≪ブロッキング≫



(あっ!これっ!組手で見たヤツだっ!)



タイミングを合わせ、軽く上方へ攻撃を反らす。



(軸足が右に動く、見える!私にも攻撃が見えるぞ!)



次は、全身の回転を利用し、



ブロック毎吹き飛ばす、上段左後ろ回し蹴り。



(こっちが本命っ!甘いっ!)



 ピコーン!

《スウェー》



ガンッ!



上体を反らせた瞬間、後ろにあった街路灯に思いっきり後頭部をぶつける。



(あっ……)



ヒュッ!



止まった頭部をナツキの上段が打ち抜く。



ズガアアアアアンッ!!!!



(結構《BP》減った。冗談じゃない……)



「何やってるんですか、二人とも……そうですね、今ほど細かな調整は使えなかったので、簡単な制約にしていました」



倒れれていたケントがむくりと起き上がる。



「つまり、彼はあれから真面目に、『幸せ家族計画』を続けていたわけだ」


「そうだね、アコはあちこちで、性教育を頑張っていたよ(※冷徹【聖女】モードで)」




「「「人は変わるもんだなぁ」」」



「言わないで下さーーーーい!」







「『悪意』に反応して萎えさせる制限、か。イイネ」



幸せな光景を眺めながら、王都の守り神は悪い顔で呟く。



しかしあの奥手な【聖女】ちゃんに、下世話な知識を与えたのは、どこの守り神かな?







もちろん、愛恩あいおんの女神、白河部長です。


アブサンについては諸説あり。

ジンなどと混ぜるとナインピックという、ビリヤードで『勝利』を意味するカクテルができます。

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