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異世界冒険部  作者: ノラえもん
12/25

二度目の帰還

雑です。ごめんなさい。

よろしくお願いします。

「これから、セラスの皆さまはどうされるんですか?」


歓迎会が終わり、『召喚の間』への帰り道でふと、疑問に思ったことを部長に尋ねた。


「私たちにとっては遊びの延長だが、彼らにとってはそうじゃない。新たな街に行けば、有力者との会合、市場調査、救護院や診療所の視察など、やることは山ほどある」

「報告書を見るだけでは、どのように機能しているか分からないからな」

「そうですね。そもそも、その報告書が正しいのかどうかも怪しいので」


白河部長の説明に、エルド王子、ミーア姫が続く。


「そうだな。ローズが諦める程度には皆、愚かだったからな」

「うっ……そのことは……」


どうやら、痛いところをついてしまったようだ。


「冗談だ。こうやって私たちのお遊び(ゲーム)に付き合うことが、ローズへの罪滅ぼしだと思ってくれ」

「「はっ、仰せのままに」」


補佐の皆さんと別れ、青白く照らされた『召喚の間』へと入る。









「しっかし、魔法って凄いっすね。アンナさんには悪いことしたなぁ……」

先ほどの歓迎式での一幕を思い出す。



(あのままいけば、初めての体験(×××)が……)



 ピピッ

《アラート》



危ない。うん、笑顔のナツキと目が合ったのは偶然だな。


「魔法の研究は『アース』での科学に近しい進歩を遂げた。こうしたら、こうなった、という試行錯誤の繰り返しだ。そうして積み重ねられた経験則に基づいて、セラスの魔法は成り立っている」

「魔法が科学?」


突然話し始めた部長。うん、意味が分からない。


「不思議に思うだろうが、化学で例えてみよう。一酸化炭素中毒という言葉を聞いたことはあるか?」

「締め切った場所での不完全燃焼で発生すると聞きますが」


ハルが答える。


うん、おれもニュースで聞いたことがある。


「そうだ。その一酸化炭素の構造式を、……黒野は書くことができるか?」

「えっと酸素一個と炭素一個、ですよね?手が二本と四本……あれ?手が余るな……」


んん???どうなってるんだ????


「その考え方は、オクテット則を基に成り立っている。数百年前から続く、経験則だ。『日ノ国』の義務教育でも習うから、お前も当たり前のように、使っているだろう。

最外殻電子数を八個にすると原子やイオンは安定する。共有結合で原子は手をつなぐ、これは化学物質を説明するうえで、とても分かりやすくまとめられている。

では、共有結合とは何か?」


「難しすぎてついていけません!」


授業では聞いた気がするが、考えることを放棄した。


「そうだ。突き詰めようとすると、難しいことだ。そもそも原子とは目に見えない物だ。しかし例えば、アルコールが燃焼し、酸素と結びつくと二酸化炭素と水が発生する、それをお前は知っている。積み重ねられた経験則があるからだな。

それくらい、このセラスで魔法は、経験則として当たり前に使われている」


「だからって……ヴァイスなんて突然現れたり、浮いたり、物理法則を完全に無視してるじゃないですか」

「魔法なんてそんなものだ」



事も無げに、さらりと答える部長。



(えっ?いや、そんな、まさか……――そもそも法則が違う?)



『ふむ、青海は気付いたか。世界は不思議なことだらけだろう?』

(っ!!まさかとは思っていましたが、部長、僕たちの思考が観えているんですね?……そうじゃないと説明がつきません)


『今、お前たちのアバターを形作っているのは、惑星魔法、≪デウス≫だ。そして魔法の【管理者】は私だ。ここで伝えているのは私なりの『善意』であり、お前たちの『母』の願いでもある。話を戻そう、物理法則に≪魔法則≫が追加された、と言った方が正しいな』

(あの、部長、星の総意とは本当に【神】なのですか?恐ろしくなってきたのですが……)


『おいおい、【勇者】の名が泣くぞ。大丈夫だ。知らないから恐れてしまう。幽霊の正体見たり枯れ尾花、だ』

(しかし、世界の法則すら変える存在なんて、それは即ち、【神】なのでは)


『自身の理解が及ばない存在を【神】と呼びたくなる気持ちは分かる。ならばその存在を理解してやれば、それは【神】では無くなるのでは無いかな?』

(メチャクチャな理論だ……部長は、あなたは一体、何者なんですか?……何を知っているんですか?)


『高等教育研究学園、三年A組、白河百合絵。異世界冒険部の部長をしている。最近は惑星魔法デウスの【管理者】も兼任するようになった。【賢者】とは昔馴染みで、『母』とも協力関係にある。

お前たちより知っていることは多いが、それでも知らないことだらけだ。だから私は知ろうとする。知るを知るとなし、知らざるを知らずとなす、これ知るなり、と昔の偉い人は言っていたな』



(部長は凄い。だから同時に恐ろしい。そうか、部長のことを知ればいいのか……よしっ!)



「白河部長、あなたのことをもっと知りたいです。いつか、あなたの全てを教えてください」

「へぁっ!?」

「ハル!?これまでそんな素振りなんて無かったのに!?」


物静かに思案していたハルの、突然の告白にアコが変な声を上げる。流石に俺も驚いた。


「端折りすぎだ、バカモノ。青海、お前にこの言葉を贈る日がくるとは思わなかったぞ……白山、安心しろ。今の言葉に愛は無いからな」

「な、な、な、何のことでしょうか!?」


指摘され、しどろもどろなアコ。動揺してるのバレバレだ。


「ハル、傍から見ていたら、愛の告白としか思えないわよ……」

「えっ?あぁ、確かにそうだね。ごめん、分からないことだらけで混乱しているみたいだ。うん、大丈夫。落ち着いたよ」


いつものニコニコ笑顔のハルに戻った


「ところで茨木先生って、何者なんですか?セラスの色んな方々と知り合いみたいですけど……」

「五十年ほど前、我が国からセラスへ転移した元国防軍所属の技術上級大尉だ。研究所で行っていた実験中の事故に巻き込まれ、作戦行動中行方不明という形式で処理されたがな」


あれ?ん?一体何歳なんだ?あの容姿で米寿迎えてるとか?!?!?


「変なことを考えているようだが、安心しろ。私たちとは逆に、ローズは『セラス』から『アース』へアバターを送っているんだ。転移時の、――我が国では失踪当時の――容姿に設定したことで、大きな問題も起こらず受け入れられた」


「辻褄合わせってこと?」

(なるほど、それで『帰還者』と呼ばれているのか……って、えっ!?!?)


「まぁ、時間跳躍関係の研究室は大騒ぎだったが、もっともらしい仮説を作ってやったら、今はそれに付きっ切りで静かになったよ。答えの無い方程式を解き続ける、やつらはそれで幸せなんだろうさ」


「こいつはひでーや!」


(いや、まさか、そんなはずは、でも、だって、そうとしか……今アバターって言ったし、つまり)

『くっくっくっ。慌てふためくお前の内面プライベートを、涼しげな外面ヨソユキしか知らんファンの子達にも見せてやりたいな』


(もーっ!『セラス』に来て、これまでのことが全て、部長に筒抜けだと知って、こっちは赤っ恥ですよ!……それで、『アース』の茨木先生がアバターなら、つまり『アース』でも魔法が使える……んですか?)

『限定的だがな。ふふっ、みんなには内緒だぞ?』


「知らなければ幸せなこともある。なぁ青海、そうだろ?」

「ハハッ、ほんと部長は、ヒトが悪いですね……」



苦笑を浮かべるハル。



その意味に、気付けなかった。




「では、時間も遅い、皆は先に戻れ。私はもう少しセラスでやることがある」


「分かりました。では、」



「「「「『セーブして帰還』!!!!!」」」」



シュンッ!!!



光の粒子となり、消える四人。





……しん



(ふうっ)





「さて、と……」





「≪コーリング≫!!!!」



カッ!!!!!!!!!!!!!!!



その一言で、静まり返った召喚の間が、突如、圧倒的な閃光に包まれる。


目も眩むばかりの光が収まると、そこには四人の男女が立っていた。


「久しぶりだな、けんj、んんっ!?お前、【賢者】だよな?……その、何だ?随分変わったじゃないか」


【賢者】と呼ばれた怪しげな雰囲気を纏う、黒いドレス姿の女性。


「お久しぶりです、リリィ。あなたこそ、身嗜みを気にする人では無かったのに。好きな人でもできましたか?」

「時間に余裕ができただけだ。それに、あのままだと学園にも行けないだろう。お前たちと、こうして話すのは初めてだな。改めて、よろしく、な?」


「私たちを救ってくれたことは、『マザー』から聞いている。ありがとう」

「保護して頂き、感謝します」

「助かりました。深くお礼申し上げる」


それぞれに感謝の言葉を述べる四人。


「しかし、なんだ?その姿アバターは…… 変わらなかったのは【勇者】だけか」

「僕は一応『日ノ国』の技術の結晶、完成体だからね。『マザー』のお気に入りだからじゃないかな?」


ハルをそのまま成長させたような、青黒の燕尾服に身を包む青年が答える。


「技術の結晶、らしいぞ?だがしかし、【姫】のソレは盛り過ぎだろう」


【姫】と呼ばれた赤いドレス姿の美しい女性。

容姿は成長したナツキなのだが、スレンダーな全身で、胸部だけ不自然に盛り上がった、まるでバレーボールを体操服の下に入れて遊ぶアレである。


「私は【勇者】と違い、一から設計されたわけでは無いので、恐らく『私』(ナツキ)の深層心理が影響したのでしょう。あの頃からマセていたのですね」

「確かに、赤座夫人も大きかったが、これでは逆に不気味だな。修正してやろう」


リリィの言葉で、光の粒子がふわっと、姫の体に集まる。


すぅっと。


光が霧散すると、引き締まっていた四肢はふっくらと肉付き、胸部は逆に半分ほどのサイズになっていた。それでも『日ノ国』女性の平均と比較すれば大きい方ではあるが。


自身をさっと確認し、


「幾分すっきりしました。ありがとうございます」


均整の取れたプロポーション。恭しく礼をすると、本来のナツキには無いはずの、胸が揺れた。





「【賢者】と【聖女】は性別すら変わっているな。『アカデミー』で一体何を学んで来たんだ……」


「世間ではTSモノと呼ぶそうですよ。どこぞのお姫様の刷り込みで、姉萌えになったことが原因でしょうか」

「ふふっ、罪作りなお姫様もいたものですね」


いちゃいちゃ、ゆりゆりを始める赤と黒、二人の女性。


「はぁぁ……『アーリィ・ウィザード』がこう変化するとは。そして【聖女】は、何て呼べばいいんだ……その姿、東雲太郎博士だよな?お前はファザコンだったのか……」


白衣を纏った、大仏顔の、素朴な雰囲気の男性。


「呼び方など些末なことです。ご自由にどうぞ。父の情報が、そして母の情報までもが『アーカイブ』に残っていてどれほど嬉しかったことか。父の愛に触れることもできました。本当に感謝します」


すっと両手を合わせ、お辞儀する。


博士ドクタータロー?」

「音楽関係の方々に怒られそうですね」


「冗談だ、……【聖人セイント】。うーむ、これも……」

「宇宙を相手にするなら、丁度よさそうですね」



「ほんと、知らなければ幸せに終わっていたのだろうな」


「こうして呼び出したということは、計画の目処がたったのですか?」




「もう一押し、といったところだ」


「今日、『ファクトリー』で接触したことは、もちろん他国に筒抜けだ。妨害からみんなを助けてやって欲しい。過度な干渉は避けてくれ」



「「「「仰せのままに」」」」


その言葉を遺して、四人はすうっと、空に消えた。

もっと加筆すれば良かったのに。難しいですね。

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