絵本
小さな店の中に入った僕らはそれぞれ気になるものを見ていた。
古本屋というか雑貨屋というか。
そんな中、新松法は店の中央に置いてある平台の上にあがっている絵本が気になって手にとってみた。
アンシャンテ=ノーブル。
どうやら向こうで有名な女優の一生を書いたものみたい。
表紙のフランス人形のように写る女性の写真に少しグッときた。
「ねえねえ、法くん。これかわいいよね」
にこにこしながら倉尾巴積は一冊の絵本を見せてくれた。
表紙には大きくうさぎの女の子のイラスト。題字にはうさぎのぴょこりんとある。
「うさぎのぴょこりんか。これ小さい時に読んだことあるよ」
「ほんと!? 私も好きな絵本なんだ」
子供のうさぎがいなくなったお母さんうさぎを探すためにいろんな動物達に聞いたり、
時には助けてもらいお終いには無事再開する絵本。
「でもなんか表紙が違う気がする。こんなのだっけ」
法は少し首をかしげた。
「言われてみれば、そんな気もする」
巴積もそう言う。
うーんとうなりながら二人は考えていると奥から女性が出てきた。
「ぴょこりんの本は少し前に表紙がリニューアルしたんですよ。昔はうさぎの他に助けてくれる動物達も描かれていたんです」
女性はタイトルが同じでもイラストの違う絵本を手にしていた。
それを見た二人は同時に「それだ」「それです」と指差す。
「中身は同じだけど、昔のデザインが好きって人もいるからできる限り探して両方置いているんですよ」
巴積は目を輝かせ、店主に尋ねた。
「どっちも買えるんですね。じゃあ、私は昔のほうの絵本が欲しいです。いくらですか?」
「今出てるのより少しするけど1,296円です」
「大丈夫です! 一冊ください」
「はい、ありがとうございます。ではレジまでお願いしますね」
そんな二人のやり取りを見ながら新松法はさっき見つけたアンシャンテ=ノーブルの絵本を買うかどうか考え始めていた。
今回つみちゃんは普通に喋ります。
手話も筆談も無し。