大瀬百合子は悩む
大瀬百合子は古書センターの前に立っていた。
別に探し物は無いのだが何となく時間を持て余していたからつい足がここへ向かっていた。
「何をみたもんかなあ」
センターに入りとりあえず数々の本が並ぶ棚に目を通す。
ファッション雑誌。
自分はそんなにこだわっているほうじゃないと理解してはいたが
いい年なんだしいい感じの服装ってあるかしらと一冊手に取ってみた。
パステルカラーのシャツ。
足の露出が多いショートパンツ、スカート。
肩掛けの小さなバック。
これがお洒落なのかと。ずぼらな格好をする自分とは大違い。
「改めてみるといろいろなんだなあ。勉強だ」
最後まで見ずそっと本を棚に戻す。
「そういえば榧はそれなりにはおしゃれさんだよな」
月刊ファンナ7月号。5年前のファッション誌。
「気分ものらないしこれだけでいいや」
右手の腕時計を見ると11時50分。お昼の時間。
「ご飯を食べよう。それからもう一度考えて街を回ろう」
今日に限っては自分の計画性のなさがイヤになる。
せっかくの休みもこれじゃ台無しだ。上手く頭が動かない、もう!
ふとそんなことを思い浮かべながら店を出ようと入り口の自動ドアの前へ来たが上手く開かない。
「なんなのこれ」
3回ほど小さく行ったり来たりをしてようやくドアが開いた。
そのまま一歩を踏み出すと目の前は明るく、目線を上に上げると真っ青な空が広がっていた。
「私の心とは逆の色ね」
古書センターといえばあの有名な街。
旅行で一度しっかり見たいなぁと思いガイドブック片手に軽く書いてみたり。