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きらきら  作者: なっぱ のな
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ある夏の日、かもしれない

初投稿です。

今日がその、「ある夏の日」なんだって思った。何か特別なことが、たとえばいきなり恋に落ちるなんてことがあるような日。

あまりにもきれいな目覚めだったから。夢の中でどこか知らない、光の粒でいっぱいの場所にいて、その夢の内容はあまり覚えていないのだけど、夢が終わるかわりのようにすっと目が開いた。

ベッドで寝返りをうって手を伸ばし、レースのカーテンを引っぱる。とたんにまっすぐな太陽光線が部屋のなかを伸びる。だけどその光に残るかすかな青みから、そんなに遅い朝ではないと感じた。

逆光で見えにくいデジタル表示の目覚まし時計。あまり気に入っていない。くるくるまわしてどうにか読み取ると、まだ7時台だった。部活動に参加しない高校生の夏休みとしては早い朝だ、多分。

ベッドの上で、わざとゆっくり体を起こす。机に目をやると、開かれたノートと数本のカラーペンと閉じられた教科書。あれは昨日、勉強したところ。わざわざ立って覗いて見なくてもわかる。

足の先を伸ばして床に触れた。フローリングはひんやり冷えている。

そのまま後ろ向きにベッドを降りて、爪先立ちのまま、いつのまにか洗面台のほうに向かって歩き出す。


こんな時間なのに家族に会わなくて、今日はお父さんが休みの日なんだ、と思った。ということは土曜日か日曜日、前の日の曜日を遡れば曜日なんてすぐわかるはずなのに、何曜日かわからないなんてちょっとおかしい。

炊飯器のご飯をよそって、冷蔵庫の鮭フレークをのせて食べた。

朝ごはんってちょっと健康的すぎる。目覚めのいい朝の空しい感じにあわせると、まるでばかみたい。牛乳なんてあわせた日にはもう情けなくなる。

目覚めのいい朝の空しさってなんなんだろう、いつもの重すぎる、起きていてなお微睡んでいるような感じが取っ払われた分だけ、目に映るものの輪郭がどれも細い線になったようで頼りない。

景色だけでない、音も、香りも、味も、はっきりしているのに薄っぺらくて、空虚。


そこに、同じくはっきりとしているくせに薄っぺらい、確信のような思いつきがやってくる。

私、今日は、街に出る。電車に乗って。当てもなく。

特に急いだわけでもないのにあまり支度に時間はかからなくて、ようやく起き出してきたお母さんにおはようを言って、肩かけ鞄ひとつで外に出た。

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