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残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
純粋なる黒と汚れた白
85/125

戦いの終わり

(サリア) ……………………


(シャル) 気にすんなよ、作者のうっかりなんて今日に始まったことじゃないだろ?


(ライラ) データ飛ばしたり、投稿忘れたり……


(サリア) だからって自分の作ったキャラ一人忘れるかねぇ!?


(シャル、ライラ) さすがに同情する。


なんのこっちゃわからん人は三話前のチーム分けのくだりを読んでみてください。

まじで忘れてました。

自分の作ったキャラなのに。

 咲良、ジュリ、トリナがあーだのこーだの揉めている間、孤児院正面にはレティシア、クロエ、ククル、ハリィの四人が陣取っていた。

 念のため言っておくと、真正面に四人堂々といるわけではなく、ちゃんと物陰に隠れている。


 「時間だ、ククルのバズーカで始めるとしよう」

 

 「レティ、バズーカとは?」


 「ああ、お前が前に撃ってた大筒のこと。 あれで門ごとふっ飛ばして正面を開いてくれ」


 「ああ、これのこと。 了解、一応撃つときになったら耳をふさいでおいてね」


 「わかった」


 三人が耳をふさいだことを確認すると、ククルが大筒を構え、放つ。

 彼女の体格では肩で構えることができない、ということが発覚したので、今回は脇に抱えて中腰姿勢での発射である。

 そして、大筒から放たれた砲弾は孤児院跡の正面の壁を吹き飛ばし、大穴を作った。


 「まったくすごい威力ねぇ…… ほんと壁も人もお構いなしって感じぃ?」


 クロエはこれでもパーティーの最年長なのだが、ククルの開発したような武器というのは見たことがない。

 この世界における遠距離の火力は魔法がメインとなるし、火薬を使ったものもあるにしろ、それだって大の男数人で扱うような文字通りの大砲ぐらいなものなのだ。


 「でも次弾の装填までに時間がかかることと、その間使用者が隙まみれになるのが欠点かな」


 「欠点もさることながら建物の中で扱うには少々派手すぎる、そいつは置いといていつものレイピアで戦ってくれ。 ハリィと私が前衛、クロエが支援、ククルは後ろを頼む。 行くぞ」


 レティシアの合図で四人は飛び出していった。




***




 逃げ道の少ない廊下を銃撃が所狭しと飛び交う。

 流石に四人にもその弾幕の合間を縫っていくことは不可能と思われたが。

 

 「盾で全部受けきってしまえば問題ないぞな!!」


 ハリィを最前線に配し、その後ろで隠れるようにほかの三人が隙を伺う。


 「この子(ハリィ)がデカくてよかったわぁ」


 「うんうん、レティ並みのサイズだったらこうはいかなかった」


 「お前ら二人いまから先頭に放り出してもいいんだぞ?」


 ハリィが一斉攻撃を一人で受けているその後ろでなんとも能天気な会話を繰り広げる三人、といままで喧しいほどに響いていた銃弾が盾をはじく音が止んだ。


 「弾切れだな、行くぞ」


 ハリィの後ろから三人が飛びだし、下がろうとする少年兵たちに襲い掛かり、制圧する。

 

 「まったく、全員で一斉に攻撃にかかっちゃいかん、リロードする間も攻撃を絶やさないように、リロードと攻撃を交代で行わないと……」


 と、レティシアが死体に高説を垂らしているところで、脇からクロエがやってくる。


 「魔力がエネルギー源なんだから装填(リロード)もへったくれもないわよぉ?」


 「……それもそうか」


 この世界には銃火器の類こそ存在しているものの、魔法という存在も相まって広く浸透していない。

 なのでそれらを用いた戦術というのも未発達なので、ここで自慢げにその辺の話をしようとしたわけだが……残念、藪蛇だったようだ。

 

 

 

 そんな、しょうもないエピソードを挟みつつも、四人は建物の中ほどにある中庭に出た。

 長いこと手入れがされてこなかったらしい花壇には雑草や野生の花が無秩序に生い茂り、それほど手入れもされていない。

 中央には噴水があるが、やはり水は出ておらず、白く美し……かったと思われる彫刻には赤さびが見受けられる。

 それを見たククルが一言、


 「設備にも最低限の手入れしかしていないところを見るにここに長居する気はなかったんだね」


 「だろうな、あくまでも目的は『商品』のデモンストレーション……」


 と、そこまで言ってレティシアは続きの言葉を遮る。

 足元に銃弾を受けたからだ。

 

 「なんだ、取り囲まれていたのか」


 レティシアの言う通り、柱の陰、屋根の上、いろんなところから少年兵たちが現れ、四人を取り囲む。


 「全滅させられそうな数ではあるんだけどぉ……さすがにこっちも無傷ではいかないって感じぃ?」


 「だよなぁ……ま、四人で難しいならしょうがない」


 レティシアがそう言うと、まるでそのタイミングを計ったかのように、噴水が吹き飛び、その爆風の中から飛び出す四つの影があった。


 「騎兵隊参上! 馬乗ってないけどな!!」


 「凍てつく滝(アイシング・フォール)


 と声高々に叫んだシャルに、あくまでも冷静に魔法を打ち込むライラ、無言ではあるが正確無比にダガーを放つベル、すさまじいスピードで拳を打ち込むサリア。

 四人が現れたことにより包囲は崩れた。

 

 「地獄の炎(ヘルファイア)!」

 

 レティシアも炎の斬撃を放ち、少年兵数人を吹き飛ばす。

 かくしてレティシアたちは包囲網を突破するどころか、すべてを蹴散らしさらに進んでいくのだった。




 道中の敵も蹴散らしつつ先に進んでいくと、奥のほうで銃声が聞こえた。

 自分たちが攻撃された様子ではない……とするならば……


 「サクラたちのほうか、急ごう」


 と、てっきりまだ戦っている最中であり、苦戦でもしているかもしれないと思っていたのだが……


 「なんだ、もう終わってるぞな」


 「だな……でもなんか様子おかしくないかい?」


 そう言うサリアの目には、咲良が銃を拾い、神父風の男に構え、


 「っていうか撃とうとしてないかい!?」


 パンパンパン!


 撃とうとしている、というか本当に撃ってしまった。


 「まじかよアイツ!! お嬢、あいつ…… お嬢?」


 シャルが話しかけようとしたレティシアはツカツカと何事かしゃべっている咲良のもとまで歩み寄り、その肩に右手を置いた。

 

 「サクラご苦労、何人かひっとらえられたし、帰るとしようか」


 その時の咲良の表情と言えば、まさに鳩が豆鉄砲を食らったがごとし、といったところか。




***




 ひっとらえた大人や気を失っていた子供数名を拘束したうえであらかじめ用意していた馬車に詰め込み、ジュリとハリィとも合流して一同は帰宅の途についた。

 その道中、屋根の上でいつものように黄昏ていたレティシアのもとにシャルが、馬車の屋根を上りやってくる。


 「下にいる奴らはどうしたんだ?」


 

 「ライラとハリィに任せた。 それよりさ、お嬢、アイツやばくない?」


 「アイツとは?」


 「決まってるだろ、サクラだよ。 なんだアイツ? あのままお嬢が止めなかったらあのおっさん撃ち殺してたぞ」


 「…………」


 「お嬢がいた世界ってここほど殺伐としてないんだろ? 人をほいほい殺すこともできないし、それに対する躊躇いだって相当なんだろ? サクラだって最初は死体見ただけで昼飯吐いてたじゃないか。 それが、クロエの生首や黒焦げの山賊の死体を見ても平気、それどころか冷静に反撃を伺ってた。 今回もそうだ」


 「トリナとジュリによるとサクラは『慣れた』と言ったそうだ。 そりゃ、ずっと人を殺してれば慣れもするだろう。 だが、サクラの場合はそれが尋常じゃなく早い」


 「だよなぁ……」


 「ついでにトリナが言ってたんだが、社長とかっていう男に銃を構えた時な……あの時の眼がヤバかったらしい」


 「へぇ……あたしらからはよく見えなかったもんな。 で?どんな風にヤバかったわけ?」


 「トリナもうまく言語化できないようなんだが……闇を感じたと言ってたな、人殺しを躊躇わない、そんな……」


 「目が据わってる、とか目が死んでる、みたいな?」


 「そういうことなんだろうか、少年兵たちにも似たものを感じたらしいぞ」


 「まさかサクラも小さいころから人殺しを……なわきゃないか、最初は人殺し嫌がってたんだもんな」


 「まさか……いや、そうとは限らないか、勝手に決めつけるにしても早計だ……」


 「どうした?」


 「なんでもない、ただの考えすぎさ。 一応、トリナには注意して見るように言っておいたし、いま考えても詮無いことだな」


 そういうと、レティシアは馬車の屋根の上に仰向けで寝っ転がった。

 天気は晴れ、まさに満天の星空といったところか。

 されどいまだ夜は深く、夜明けまでは程遠い。

(トリナ) じーっ。


(咲良) な……何?


(トリナ) じーっ。


***


(シャル) トリナに任せたの失敗なんじゃない? 絶対わかってないよ?


(レティシア) うーん……私もなんだか不安になってきた……

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