表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
第一部 ハローワールド
8/125

ライネル邸にて 後編

前回のあらすじ


(シャル) 「このおっさん何企んでんだ?」と思ったので調べて、話も聞いてみよう!


(ジュリ) あらすじってもう少し詳しくやらないか? 


(トリナ) そんな話だったっけ?


(クロエ) 出番ないからって好き勝手やりすぎよぉ

レティシアたちが違和感に気づいたのは護衛対象と顔合わせした時だった。

荷物を運ぶ任務と言われても、自分たちが運ぶのではなく、荷物を積んだ馬車を馬の上に載った御者が運ぶのである。

だから、レティシアたちとしてはあくまで何かあった時の為の護衛であって、それ以外のことは基本ノータッチなのである。

とはいえ、今回はいわゆる商人の行商の護衛とは異なり、「商人」を守るのではなく、「従業員と荷物」を守らねばならない。

行商の場合は商人の命を最優先とするため、戦闘で荷物が失われても仕方ないところではある。

損害を受けるのは商人自身だがそれでも、命があれば儲けものというものである

対して、今回はアズールが自分の部下の従業員に命じて買い付けさせた荷物を運んでくるまでの護衛なので、従業員の命は勿論、荷物も過不足なく運ばねばならない。

よって、レティシアたちとしても、荷物の内容は知っておきたかった。

だから、出発前に品物の一覧表と照会して、問題ないか確認したかった。

しかし、どういうわけか、アズーロの部下はそれを渋った。

最終的にはそれに応じたのだが、結果レティシアたちは荷物に良からぬものが積まれているのではないか、と思い至ったのである。

しかし、品物の中に変なものはないし、一覧表とも一致している。

鼻の利くトリナでも見つけられなかった。

となれば騒ぎ立てることはできないので、ここまで運んできたのである。

確信に変わったのは昨晩のこと、アズーロがレティシアにお礼と称して贈り物を渡そうとしたこと。

レティシアはあれを賄賂のようなものだと考えた。

おそらく、今回の積み荷には何かが積まれていた、そして自分たちはそれを運んでしまった。

もしこの場で賄賂を受け取れば?

本人たちの自覚あるなしに関係なく、「荷物の中身を知ってて運びました。 その分のお礼ももらいました」なんて事態になったはずであった。

つまり、犯罪の片棒を担いだという既成事実が出来上がる。

そうなれば、アズーロと《銀色の狼》は仲間であるという認識になるだろう。

裏でいろいろとよからぬ噂のあるアズーロと。

 尤もアズーロ側はそれを目的にしているのだろう。

 体のいい私兵にでもしたいのかもしれない。

しかし、二人は目的の物を見つけられた。

それを憲兵隊に通報、事情説明することにより「我々の運んだ荷物に変なの入ってました」と言い張れる。

賄賂は受け取っていないし、見つからないように隠しまでしている。

さらに《銀色の狼》とアズーロの関係は今回が初めてなので何らかの密約がある可能性は低い。

よってアズーロが《銀色の狼》を嵌めようとしたと判断され、違法薬物のことと合わせて憲兵隊が出動したのである。

なので、アズーロに逃げ道は残されていないはずだった。


一方のアズーロは実は内心焦っていたが、それを顔に出すことをしない。

商売、特に大きな商談などの交渉事で自分の感情を表に出すなど、商売人としては三流である。

なので、表情として出てこないが、焦っていたのである。

その理由は二つ。

一つは相手が計画にほとんど気づいていてさらに憲兵隊まで現れたこと。

そしてもう一つ、逆に現れるはずの人間がいまだに姿を見せないことである。


「ああ、それからバダニアファミリーなら来ませんよ?

今は私たちの仲間と遊ぶので忙しいでしょうから」


流石のアズーロもレティシアの発言に少しだけ表情を曇らせた。

まさか本当に遊んでいるわけではあるまい。

現在進行形で戦闘中かヘタするとすでに全滅している可能性もある。

それくらいの実力差はあるということは昨晩確認済みである。


「やはり冒険者と事を構えるならそれなりに荒事に慣れている奴らを呼んだほうがいいというのはいいアイデアでしょう。

いや、今回の一件には彼らも一枚どころか二枚も三枚も噛んでいるのかな?

しかし、昨晩、我々のもとに来たのはおよそ二十人、しかしその中で五人がこちらと接触することなく退いている。

あの手のやつらは引き際を心得ているのですよ。

ここで真っ向からぶつかっても勝てないとね。

だから、頭数をそろえ、好機を待つことにした。

例えば相手が自分の懐に入ってくるタイミングを見計らって」


レティシアの推測はほぼ当たっていた。

彼女たちが話に乗ってくるならそれでよし、乗らないうえ、こちらの秘密を握っているようなら始末する。

いくら実力があっても数打ちできれば勝ち目はある、ましてこの場には初めは戦闘要員が四人しかいなかったのだから。

しかし、相手はそれを読み、先手を取ってきた。

あてにしていた戦力はなし、犯罪を暴かれ憲兵隊に囲まれている。

もはや観念するしかないのは誰にでもわかりそうなものだが、それでもあきらめられなかった。

早くに死去した父親の代を継いで早二十五年、街で一番大きな商人となるまでに途方もない年月をかけてきたのだ。

だからこそ諦められない。


ドタドタドタ!!


それは屋敷の警備や荒事、影の仕事などをさせている私兵たちの足音であった。


「申し訳ありませんみなさん、私はこんなところで終わりたくはないのですよ。

そのためにこの屋敷で起こったこと、私の秘密、すべて外に漏らすわけには行かないのです。

やれ!!」


アズーロの号令に私兵たちが、憲兵隊やレティシアたちに襲い掛かる。


「《電撃格闘術 回る雷撃 100V (エレクトリックマーシャルアーツ スピニングサンダーボルト ワンハンドレッドボルテージ) 》」


「《アイスバレット》」


襲い掛かった私兵たちは、サリアの電気の走る右足に吹き飛ばされ、ライラが作り出した氷の針に貫かれ、一言も発さず相手の懐に入ったベルのナイフに屈した。


「いい加減諦めろ。

お前が私たちを呼んだ時点で負けは決まってたんだ」


彼の元までレティシアが歩み寄ってそう言うとアズーロはようやく観念したように顔を下に向けた。


「連れていけ」


アズーロは全く抵抗する様子を見せず、憲兵隊によって連行された。


「それから、あなたにもいろいろとお話を伺わなければなりません」


「へ?」


憲兵隊の一人がジャーロに話しかける。

話しかけられた当の本人は一連の話の流れについていけなかったのか、自身の父親が連行されたことに驚いたのか、視線をせわしなくキョロキョロさせていた。


「へ? 俺? 俺が何したっていうんだ?」


いろいろやってんだろうが、と全員の心は一致した。


「近いところでは奴隷の違法契約、その他、街での暴力行為、器物破損、あげればキリがない」


「そういうわけです。

ご同行願います。

今回はあなたのお父上は助けてくれませんよ」


そういって憲兵隊の一人がジャーロの肩を掴むと。


「い、いやだ 行きたくない」


「は?」


まるで子供であるかのような発言に誰もが面食らった。


「俺が逮捕される? 捕まるのか? 俺が?

牢屋に入れられて? ボロ雑巾のように扱われて?」


いや、彼の罪がすべて事実なら牢屋を軽く通り越して即刻処刑であろう。


「嫌だいやだ! 離せ! おい! 誰かいないのか! 助けてくれ!」


彼の悲痛な叫びを聞き入れるものはいない、部下は死んだか連行されるか、どちらでなかったとしても憲兵隊に逆らうことはできない。


「おい! そこのお前たち! 俺を助けろ! 金ならいくらでも出してやる」


今度はレティシアたちに助けを求めだした。

とはいえ両者は敵同士であるのでそれに応える義理はレティシアたちにない。


「誰か…… 誰か……」


助けを求めるようにあたりを見回したジャーロの視界に一人の人間が入った。

それは前日まで自分の奴隷だった女。


「おい、お前! お前はおれの奴隷だろ!? 主人を助けろ! 頼む!」


くどいようだが咲良はこの世界の言語を習得していない。

それでも一応、彼が助けを求めているだろうことはなんとなくわかるのだが、もはや彼の奴隷ではないし、これまで虐げられてきた記憶もあって、助けようとはせず、目を背けた。


「な…… 貴様ァァ!」


それに逆上したジャーロは憲兵隊の手を振りほどき、隠し持っていたナイフで咲良に襲い掛かった。

その気迫で竦んでしまった咲良の足は動かず、思わず目を閉じた。


カキィン!


金属同士のぶつかり合う音がした。

なんとなく息苦しさを覚えた咲良が目を開けると、自分が抱きしめられていることに気づいた。

自分よりはるかに高い身長のハリィが、私に覆いかぶさるようにして守ってくれていた。


『そ、そんな……』


ハリィが身を挺して守ってくれた、咲良はそう思っていたのだが、次の瞬間ジャーロの待っていたナイフが折れてしまった。

しかもハリィの身体は勿論、服すら傷付いていなかった。


『なんで?』


『ハリィは硬化魔法が使える。

身体や物などいろいろなものを固くさせることで攻撃を防ぐことができる』


ライラが解説してくれた。


「なんて言ってるか分からんが、大丈夫だから心配いらんぜよ」


そう言って服を軽く払って笑った。

一方ナイフを折られたジャーロはその場にへたり込んでしまった。


「そ、そんな……」


「往生際が悪いぞ、バカ息子 ハッ!」


そう言ってレティシアはジャーロに膝蹴りを食らわせた。

綺麗に顔面に膝が入ったジャーロは白目をむいて倒れた。


「お見事です、レティシア様」


「死んじゃいました?」


「子供の見るもんじゃないよ」


『死んだかと思って』


「……だって」


「おー大丈夫だから泣くな泣くな」


かくして、ライネル親子は憲兵隊に連行されるのであった。


さて最後のセリフをしゃべったのはそれぞれ誰でしょうか?


1 ベル

2 咲良

3 ライラ

4 サリア

5 ククル

6 ハリィ


分かったからってなにもありませんが


(レティシア) それを考えるほどみんなキャラのことわかってるかな?


(咲良)   そういうこと言うのやめましょうよ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ