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残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
異世界迷宮探索行
61/125

帰還

(レティシア) 私って主人公の割に出番や活躍シーンが少ない気がしないか?


(シャル・クロエ・サリア・ジュリ) …………


(レティシア) 何故黙る?

 翌日は丸一日ダンジョンの探索を進めた。

 イワトカゲやら真黒なイノシシやら生き物のように枝をくねらせる木ートレントーやらいろいろな魔物が襲い掛かってきたが、これらは四人で難なく撃退、ありがたく一同の食料となった。

 トレントは魔物とはいえ所詮、木なので食ってもおいしくはなく、薪として有効活用させていただく運びとなった。

 そしてその日は十七階層まで進めることができた。

 それでそのまた翌日、このままのペーズで行けば結構深いところまで行けそうなものであるが、


 「とりあえず二十五階層まで行ったら引き返しましょう」

 

 「ええ!? 何でよ!? 頑張れば三十五、六階層くらいまで行けそうじゃない!」


 「サクラさんがいなければもっと行けるでしょうが流石に厳しいでしょうね。 それに復路のこともあります。 今回はキメラに時間を取られたせいで思いのほか進度が思わしくありませんしね」


 そもそも、今回のダンジョン探索は一週間で戻る、ということが前もって決められていた。

 何故かというと、現在街に残っているライラとククルの研究発表があるからである。

 ゆえに彼女らにはできるだけ早く階層に進むことが必要となっている。

 にもかかわらず、キメラとの接触などで時間が使われ当初の予定よりも進むのは遅くなってしまった。

 まぁ進んだところで咲良の現状の実力を考えれば結局二十五階層付近までしか進めない気もするので結局変わらないともいえるのだが。

 時間があれば二十五階層付近で狩りや採集に勤しめばいいのだが、先ほどの通り、今は時間がないので今回はすぐに引き返すこととなったのである。


 「って言うか、転移石があるんでしょ? 戻るの割とすぐなんじゃ?」


 行くときは、転移した先の魔物に手も足も出ない可能性も考えて使わなかった転移石だが、帰る分には使ったってなんの問題もないのではないかと思う咲良である。

 決してとっとと帰りたいからではない、決して。

 

 「なに言ってんのよ。 よく言うでしょ。 行って、同じ方法で帰るのがダンジョン探索だって」


 「知らないよ。 何その遠足みたいな格言」


 「トリナさんの言うことも一理ありますが、保存期間や荷物の体積の関係上、上階の魔物などから採れる素材は食料くらいしか採集していませんでしたからね。 普段はレティシア様がいましたのでそういうことにならなかったのですが」


 「つまり、上階の素材も採ってくぞな?」


 「そういうことです」


 「あの、レティシアさんがいたらって言ってましたけど、その場合どうなるんですか?」


 「異次元庫に収納していただきます、あれでしたら容量も無制限ですし保存もできます……そう言えば話していませんでしたか?」


 「ぜっんぜん!」

 

 思い返せばおかしなところはあった。

 レティシアは剣こそ身に着けているが、逆に言えばそれしかないのだ。

 例えば、レティシアは馬車で移動中、魔力を測る水晶をライラに手渡していた。

 しかし、彼女がそんな嵩張るものを持っているとは思えなかった。


 「アイテムボックスかぁ…… そういうテンプレなものあったんだねぇ……」


 「兎に角、それがない以上、あまり荷物を持って動くことは厳しいですが、復路であれば多少融通が利きます。 体力に自信のある人もいますからね」


 「任せるぞな!!」


 「ああ、なるほど……」


 咲良がアイテムボックスと呼んだものはこの世界においては異次元庫と呼ばれる魔法の一種である。

 その名の通り、物を異次元から出し入れすることができるので、荷物を運ぶ、両手がふさがるといった冒険や戦闘時の問題を解消してくれる。

 しかも、詳しい原理こそわかっていないが、この異次元庫の中は時間経過がないようで、生ものを入れても腐るということがない。

 ずいぶん便利な魔法ではあるが、理屈はかなり複雑なようで、使えるものはそう多くはなく、このパーティーでもレティシアしか使えない。

 ゆえに往路においてはベルたちはやむを得ず必要最低限のものを採集するにとどまっていたのである。




※※※




 さて、そんなこんなで三日後、ベルたちは無事ダンジョンの外に出ることができた。

 それから遅れること一時間後レティシアたちも戻ってきて、特に人的被害もなし、パーティーは全員が無事に帰還を果たすことができた。

 

 「キメラねぇ…… そりゃあ誰も予想できない相手だわねぇ?」


 「全くだよ、ギルドともども深読みしすぎたようだな」


 「仕方ないよお嬢、誰も予想なんてできんさ。 しかし、留守番してた二人は惜しいことをしたねぇ。 いい研究材料になったかもしれないのに」


 「そうしないためにヴェルナーさんに遺体を持ち帰らせたんですけどぉ!?」


 「あ、そうね…… 咲良の言うとおりだね」


 「中々悪くない采配じゃないか? ギルドは国の機関と独立している。 研究機関に売り飛ばすようなことはしないだろう。 それより問題なのはその恋人とやらを売った若造どもだ」


 「仲間を見捨てる奴らなんてどの長続きせんわい」

 

 「だな」


 「見かけたら私が鼻っ柱へし折ってやるわ」


 そう言ってトリナは空中に向かって何度か拳を突き出した。

トリナならマジでやりそうで顔も名前も知らない相手に若干の同情心が芽生えていた。




※※※




それからギルドに赴いて、換金と報告に行った。

受け取った金額は通常よりも色のついたものであった。

報酬は出せないがその代わりに、ということであろう。




用事を済ませると後はお開きとなり、ジュリとクロエとは別れ、レティシアや咲良たちは家へと帰った。

その道すがら、菓子店に寄ってケーキを買って行った。

約一週間、レティシアたちと離れ研究に勤しんでいたのだろうから、その応援というわけだ。

しかし、実際にアパートメントに赴いてみれば、様子が変だった。

普段、レティシアたちが寝泊まりしているのは二階、地下には別の人間が住んでいる。

一階はと言うと、それこそ研究室や応接間など、広い部屋がいくつかある。

で、その研究室のドアを叩いてみれば、中から返事がなかった。


「外出中でしょうか?」


レティシアがドアノブを回すと動いた。

鍵がかかっていないのだ。


「……トリナ、中から物音は聴こえるか?」


トリナはドアに耳を押し当ててみるが、すぐに彼女は首を横に振った。

レティシアは剣を抜くとそれに応じてトリナとシャルも武器を抜く。


「何もなければ良いが…… ライラ、ククル入るぞ!」


まず三人が部屋に入り、その後を咲良たちが続く。

部屋の中は真っ暗で、床には紙類が散乱している。

単に片付けていないようにも、何か荒事があったようにも見える。

咲良は壁に備え付けられてある魔石で動く灯りを見つけた。

魔石は持っていないが、魔力で代用もできる。

ずっと灯りに触れていなければならないので不便だが。

で、咲良が灯りを点けると、床に倒れこむ二人の姿を全員が捉えた。


「ライラ! ククル!」


シャルとレティシアが二人を介抱する。

二人に声をかけたり、揺すったりしてみたが、反応はない。

シャルがライラの頬を軽く叩いたところで、ライラは小さくうめき声を上げた。


「見たとこ外傷は無さそうだ。 とりあえず、部屋から出した方が良い。 部屋に何か充満してるかもしてない」


「だな、隣の部屋に移そう」


サリアとハリィが二人を受け取りお姫様抱っこで隣の部屋に運ぶ。

確かに実験の最中に何らかのガスが発生している可能性はある。

今のところ、レティシアたちに症状は出ていないようだが。

とりあえず二人を隣の応接間のソファーに寝かせた。

未だ二人の意識は戻らないままだが、ライラを口元が微かに動いた。

何かを言おうとしているようだが、うまく聞き取れない。



「何だって?」


「来る…… …………」


「来るって誰が?」


そんなレティシアの問いかけにライラは答えなかった。


答えが出ないまま、一同は未だ意識の戻らない二人を見つめることしかできなかった。

中途半端に思われるかもしれませんがこの章はこの話で終わりです。


一週お休みを頂いてそのまま次章に続きます。


今回はオマケ無しですので悪しからず。

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