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残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
間章 3
46/125

メイド 大和理名の華麗なる(?)一日

(理名)こんにちは! 残酷で美しい異世界よりです! 第三章も終わったということで本日は皆さんに我々の日常を見ていただきたいと思います! それではどうぞ!!


(ヘックス) そのメイド服さぁ、もうちょっとスカート上げて露出も増やしてエロエロな感じにしたら?


(ウルル) 許さん!


(ヘックス) こいつってさぁ、真面目だけど口うるさくて融通のきかない委員長でも無いのに委員長ってあだ名つけられるタイプよね、絶対。


(理名) わかるぅ


(ウルル) よーし、お前たちそこに座れい! 正座だ正座!

 屋敷に仕えるメイドの朝は早い。

 それはどこの家でもさほど変わらず、私、大和理名は前の職場での癖から、朝五時に目が覚めるように体がなっている。

 私はベッドを抜け出すとまずは着替えて身なりを整える。

 服装の乱れは心の乱れ……になるのかどうかはわからないが、貴族というものはその振る舞いの一挙手一投足まで見られているものであり、それは使用人も例外ではなく、やはりだらしない格好というのはそのまま主の管理不行き届きにもなる、と聞いたことがある。

 いつものメイド服に着替え、ベッド周りを軽く整えたあと、私は部屋を出て調理場へ向かう。

 そこでは一日の予定、注意事項、各使用人に与えられる仕事などが伝えられる。

 会社などでもよくある朝のミーティングであり、使用人にとっても非常に重要な時間である。  

 そのミーティングの開始予定時間の十分前に到着すると、まだ半分も集まっていなかった。

 重要だって言ったばかりだってのに。

 ちょっとがっかりしながらため息をつき、隣にいる人に話しかける。


 「タニアさん…… 私早く来すぎたわけじゃないですよね?」


 「時間は問題ない。 シノブはお嬢様を起こしに行っているが…… いないのはアビーにサンドロ、サンドラ、リヴァ、ヘックス……最後の二人は朝食の仕込みだな」


 タニアは青みがかった毛色をしたヤマネコの獣人で私の教育係である。

 あるのだが、彼女はどうも二年前にここで働くようになるまでは軍人だったらしい。

 そのせいか本人の性格かどうにもぶっきらぼうで、人に何かを教えるのに向いている気がしない。

 今も軍人が起立しているようにビシッと背筋を伸ばして両手は後ろの腰のあたり回している。

 その姿はとても様になっているのだが、残念なことに軍人さんとメイドさんでは仕事内容が違いすぎるのだ。

 そのため立場上、タニアさんは私の上司と言えなくもないのだが、仕事ができるのは私である。

 二年も働いていれば何とかなりそうなものだけれど……現実は非情だ。

 それが普通なのか当人が不器用なのか、それは私にもわからない。

 それからしばらくしてアビーさんたちもやってきてミーティングが始まった。

 



 次にお嬢様の朝食だ。

 料理は言うまでもなく料理長であるリヴァさんが行う。

 というか料理人が彼女一人しかいない。

 しかし、彼女は何を隠そう無類の不器用らしいなのだ。

 まだ私は見たことも食べたこともないが、皿は割るし、料理は焦がすし、舌は馬鹿だし、その割に時間だけは飛んでもなくかかるとの話である。

 そのせいか、我が屋敷での料理はヘックスさんがそのほとんどを作り、リヴァさんは野菜を切る、火を見張るといったとても簡単なことばかりを任されている。

 というかヘックスさんがそれ以上のことを許さなかったらしい。

 結果、メイドさんが料理をしてシェフがそのお手伝いをするというわけのわからない状況になってしまっている。

 と、まあシェフを差し置いてメイドさんが腕によりをかけた料理を運ぶのが私とタニアさんの今日の最初の仕事となる。


 「ヘックス、朝食はできたか? できたなら持っていくが」


 「はーいできてるわよー。 とっとと持ってって頂戴な」


 「ん? ヘックスさん、今日一皿多くないですか?」


 「んーとねー、賄いみたいなもんよー、二人にあげるわー。 はい、あーん」


 仕事中、それも立ったままいただくというのは非常にお行儀が悪いが、だからと言ってせっかく伸ばされた腕とフォークを拒否するのもよくないので、結局私たちは口を大きく開くのだった。

 

 「ん! おいひぃ~! ゴクン。 で、これなんですか?」


 「さぁ? 余ったのをまとめて煮ただけだし…… いうなれば……『煮』?」


 「シンプル! でもおいしいですね、タニャさん…… タニアさん!?」


 「ゲホゲホゲホ!!」


タニアさんがむせながら、座り込んでしまった。


 「大丈夫ですか!? なんで!?」


 「片方は私が作ったもの、もう片方はリヴァが作ったもの。 二分の一の運試しね」


 「な、ん、て、…… ことを……」


 「同じものを作ってなんでそんなに違いが!?」


リヴァさんが料理下手で凄まじい味付けセンスをしているのは知っている。

しかしながら、ここまでのダメージを与える破壊力を持つだなんて……


 「タニア、実際お味はどう?よ」


 「コクがなく…… ただ後味が…… 辛い」


 それだけ言って料理のような何かをお見舞いされたタニアさんは気絶してしまった。


 「あいつどこで香辛料なんて入れたのかしら?」


 「そんなことより医者を! メディィィィィック!!」


 「喧しいぞ! お前たち」


 結局そろってウルルさんに怒られました。




 朝食が終わったら私はシャンレイさん、エルザさんとお屋敷の掃除に向かう。

 タニアさん?

 まだ起きないよ?

 このお屋敷はH字型になっていて東棟、西棟、中央と分けられている。

 私たちの担当は東側でお嬢様や来客用の寝室、浴場などの居住スペースがある。

 ちなみに東棟は倉庫、使用人の部屋などがあり、中央には応接間、食事用の広間などがある。

 毎日、すべての部屋、廊下を掃除して回るこれが結構重労働なんだけど……ま、三人でやればすぐ終わるでしょ。


 ドゴーン!!


 え? なに!?

 西側からすごい音が……


 「西棟からだな」


 「誰かが壁でも吹き飛ばしたんですかね」


 「二人とも落ち着きすぎです!」


 「「だってもう慣れたし」」


 あれだけ大きな音に慣れるものなんだろうか……

 っていうか慣れたくないな、感覚がマヒしそう。


 「よし、寝室もすべて掃除終了だ。 シャンレイ、リナ、戻ろうか」


 「「はい」」


 西側は大騒ぎのようだけど、東側は滞りなく業務は終わった。

 シャンレイさんもエルザさんもまじめでしっかり仕事ができる人なのだ。

 ちなみにエルザさんは他国の元騎士であり、その仕事は国と王族を守ること。

 国に仕えているという点でタニヤさんと似ているというのに、どうしてこうも違うのか。

 かたやぶっきらぼうなうえに無類の不器用、かたや仕事は完璧、人当たりも申し分なしの好人物。

 タニアさんと長いこといるせいで、余計にエルザさんの素晴らしさが際立つ。

 いやホントに。

 長身だしかっこいいし、女の私でも惚れそう。

 本人には将来を約束した相手がいるそうだけど。


 

 

 昼食後、少し暇な時間ができたので庭に出てみる。

 アビーさんが植木の剪定をしていた。

 彼女ももとから庭師ではなかったらしいが手先の器用さと鋏の腕前を買われて庭師としてここにいる。

 ちなみに彼女はとても人懐っこく、人との距離が精神的にも物理的にも近い。

 それはいいことなのだが、鋏を手に持ったままこちらにベタつこうとするのでとっても危険である。

 なので私はそそくさと逃げるように庭を後にした。




 午後の仕事が終わったので私はお風呂に入ることにした。

 なかなか技術的に元の世界に及ばないところが多いけれど、お風呂という文化もシャワーもある。

 これがないと一日の疲れが取れないってもんよ!

 お風呂文化万歳!!

 

 「あれ? みなさんもう来てたんですか?」


 浴室内には、トキさん、シノブさん、それからサンドラ、サンドロ姉妹がいた。

 トキさんはお嬢様の専属の秘書らしく、メイドではあるが、お屋敷よりも外回りで何かの仕事をしていることが多い。

 シノブさんは全使用人の中でウルルさんに次いで二番目に偉い人らしい。

 けれど本人はいつも落ち着き払ってニコニコしている優しい人で、口調も相まっておばあちゃんを思い出す。

 ついでいうとこの二人とシャンレイさんは東洋人っぽい顔をしている。

 なので物は試しと日本語で話しかけてみたところ、案の定通じなかった。

 みんな東の国の生まれらしい。

 日本みたいな国があるのだろうか。

 サンドラ、サンドロ姉妹は見た目こそそっくりだけれど、性格は全く似ていない。

 サンドロさんは漢らしい姉御肌で、うちで一番壁をぶっ壊す壊し屋(クラッシャー)、サンドラさんは引っ込み思案でちょっと鈍いというかトロい。

 と、まあ個性的な四人だけれど今日は仲良く顔にけがを負っていた。


 「ええっと…… 西棟から聞こえた音は?」


 「「「「ん!」」」」


 と三人がサンドロさんを非難するように指さした。

 本人も申し訳ないとは思っているらしく、自分で自分を指さしている。


 「一応、聞きましょうか」


 「食糧庫の整理中に小麦粉の棚をはっ倒して小麦粉をまき散らしての」


 「? そんなんで怪我しますか?」


 せいぜい真っ白になるくらいだ、棚の下敷きにでもなったんだろうか。

 

 「そのあとにまた阿呆が棚を倒してそこで火花が散ったらしくてですね……」


 「粉塵爆発じゃないですか!?」

  

 小麦粉などの細かい粉塵が空気中にある状態で火花が散ると引火して大爆発するっていう。

 よく生きてこられたなこの人たち!

 逆にそのていどの怪我で済むなんて奇跡じゃないか!


 「ええっと…… ナイスラッキーガールズ!」


 ついでに親指をサムズアップしておきました。


 「うし、そろそろ上がろうぜサンドロ」


 「うん……」

 

 滑りました。

 まあいいさ、受けを狙ったわけじゃないし、私が本気出せばもっと大爆笑だし。


 「あ」


 へ?

 ついでにサンドロさんも滑りましたとさ。

 これは床にね?

 ほら、浴場の床って濡れてるから……

 ゴン!!


 「リナ! おぬし大丈夫か!?」


 「二人とも頭からイッたぞ」


 「サンドラ……」


 「「「メディィィィィック!!」」」


 私とサンドロさんは結局みんなより早く寝ることになりましたとさ。

 ちゃんちゃん

*次週はお休みします。 申し訳ありません。 まだ間章なんですけどね。

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