再会 SIDE 咲良
(サリア) さあさあ、待ちに待った第三章!! 冒険者稼業を始めたサクラに見るも涙、語るも涙の感動の再会が訪れる!!
(咲良) 久しぶりにあらすじっぽいことしてもらって恐縮ですけど今回サリアさん出番ないです。
(サリア) ズゴッー!!
(咲良) 古い!
「ズボンにシャツ、上着はこれでいいでしょうか。 ああ、まだ外は冷えますから肌着も着た方がいいでしょうね」
王都パリエに来てからはや数日、私はベルと服屋に来ていた。
今日に至るまで私は彼女の服を拝借していたのだけれど、この世界に腰を落ち着かせることになったわけで、目下衣食住を確保しなければならない。
住に関してはすでに部屋を借りているから問題ない。
あとは家具などを揃えば問題ないだろう。
食、これもお金があるうちは大丈夫。
仕事中のパーティーの管理もベルなんかがしっかりやっているから、基本的に食いっぱぐれはない。
街に出ればお高いところから庶民の食堂までいろいろある。
最後に衣。
これに関しても今日解決した。
ベルから上下一式をワンセットそのままもらい、もう2セットは彼女に返した。
とりあえずここでもう2セット買えば三着のローテーションでやっていける。
「それなりの値段のものを買えば物持ちもいいですが、予算的にも厳しいですからね。 ワゴン品ではどうですか? この辺は新しいものが来たために新品でも半額以下でたたき売りされていますので」
「なるほど……」
「それから貴女と同じ魔法師はローブを着ることが多いです。 土やら水やらいじりますから汚れることも多いですからね。 ちなみに今年のトレンドは紫だそうですよ?」
「ローブに流行りがありますか」
「そのようです。 詳しい辺りはライラさんにでも聞いてみてください。 これなんかどうですか?」
渡されたローブは真紫色だった。
なんか毒々しくて嫌なんですけど。
「うーん、なんか重くて動きにくい……」
「魔法師は基本的に後方に下がっていますからね。 弓矢や高火力の遠距離攻撃に備えるための魔法が付与されています。 もっともあなたは風属性が得意そうなのでそれで防御は十分すぎる気もしますね」
「じゃあ、その方向で」
「その辺はご自分の自由です。 あ、一応服も着てみてくだい。 サイズは大丈夫だと思いますが」
ということで一着試着してみた。
真っ白なシャツ、パンツは黒、茶色い皮(?)の上着。
デザインのおかげでダサくなっておらず、見た目は問題ないと思われる。
というか、冒険者という職業上、おしゃれよりも実利をとるものである。
なにせ命に関わることも多い職業であるので。
「ああ、下着も買わなくてはなりませんね。 失念していました」
そういってベルは下着を数着見繕ってきた。
勘違いしないように言っておくと、別にノーパンでもノーブラでもない。
さりとて、さすがに下着を拝借するのも気が引ける。
よって、昔の人風に布をさらしやふんどし風に着用していた。
そういう人はこの世界でもいるので別に珍しくはないらしい。
しかし、恥ずかしくないかといえばそれはそれで別の話である。
「しかし安心しました。 貴女方のいた世界の女性は上の下着をつけないものとばかり思っていましたので」
「それはなんで……まさか!?」
「レティシア様はブラの方をあまり着けたがりません」
なんてこった……
そりゃ心の中は男の人でも外見は女の子なんだしさ……
もうちょっと考えてほしいな。
「それってなんか不味くないですか?」
「そうですね。 女性の服を着るのはギリギリ抵抗がないようですが、下着は厳しいようですね。 私としてもいろんな意味でドキドキしています」
いろんな意味とはどのような意味だろうか。
決して興奮しているとかそういう意味ではないと信じたい。
「そもそもレティシア様はあまりご自身の外見に注意を払われません。 しっかりと身なりを整えていただきたいのですが、その辺りはどうでもいいと思われているようです。 そのせいでやや隙が多く、無防備になってしまいがちです」
「無防備?」
「服の隙間から御体が見えてしまったり。 肌着の間からレティシア様の未成熟な……」
「それ以上はいけない」
何が見えたのかは聞きたくはない。
下着を着けていないなら……そのあたりだろう。
「と、とにかく、買うものは決まったので、お会計してきます」
私は品物を受け取って会計へ向かった。
「「すいません、これください」」
「ん?」
「え?」
なぜだか声がハモった。
理由は単純、同じタイミングで会計しようとする人がいたからだ。
その人はどうやらメイドさんらしい。
年恰好は私と同じくらい、顔はこの世界に珍しく東洋風……
『リナ!?』
『サクラ!?』
『嘘みたい!』
『無事だったんだ!」』
『そっちこそ!!』
私たちはうれしさのあまりその場で跳ねた。
「騒いでいるから何かと思えば…… お知り合いですか?」
騒がしくしていたせいで注目が集まり、ベルさんがやって来た。
お知り合いなんてもんじゃない。
『『親友です!!』』
そのときベルさんは驚いたような顔をしていた。
私たちのテンションにか、また異世界の人間と出会ったからか……
あ、日本語で話しちゃったからか。
再会を喜ぼうにもさすがにお店の中では迷惑になる。
なので買い物終了後、私たちは近くのカフェに移動した。
リナ―――フルネームは大和理名、彼女は中学時代からの友人だった。
私の苗字が和歌山で、彼女が大和。
「わ」と「や」で席が並ぶことが多く、そこから仲良くなった。
おまけに今までクラスが分かれたこともないという引きの強さ。
一番仲がいい友人と聞かれれば彼女の名前を挙げるだろう。
そんな彼女もやはりあの修学旅行の日にこの世界に飛ばされてきたらしい。
当然、言葉が通じず、どうやって生きていくべきかわからないでいたという。
しかし、この町の片隅で困っていたところ、とある貴族の男性に拾われ、メイドとして雇ってくれた。
仕事内容はもちろん言葉、一般常識、マナー、教養等々など。
『もーご主人様には足向けて寝られないね。 あの時助けてくれなかったらきっと私野垂れ死んでたよ』
『そうかもね』
言葉が通じないということがどれだけ致命的かは私も身をもって体験している。
『とにかく無事でいてくれてよかった。 まさか異世界にバラバラに飛ばされるなんてね』
『ね、ラノベとかならみんな同じところに飛ばされるのにね。 ねぇ、サクラはどんな生活だったの?』
『あー、えーと』
どこまで話したものか、いくら親友でもあまり奴隷だったことを話したくはない。
それにレティシアさんのこともあるし……
(サクラさん)
(!)
(レティシア様のことは話さない方向でお願いします)
まあ、話したところで信じてくれるかわからないし、混乱させるだけだよね。
『?』
『ええっと、今は冒険者やってる。 こっちの兎耳の人も一緒だよ』
『へぇ…… ほんとにラノベの話みたい。 やっぱりチート級の能力使えたりするの?』
『全く。 普通の人よりは魔力が多少、多い程度だそうです』
『あー、現実は非常だねえ』
そうだよね。
そんな俺TUEEEE的な展開になればいいけど現実なんてそんなもんだ。
異世界転移なんて夢みたいな出来事があっても、必ず夢は覚まされ、現実に直面させられる。
空想の話はあくまで空想現実にはなり変わらない。
『でも、生きていればそれで良しだよ』
『そうだよねえ……あ』「ごめんなさい、私たちだけ盛り上がっちゃって、何言ってるかわからないですよね?」
ベルさんは私の隣に座っていて、理名はその対面。
表情は私より見やすいだろう。
あまり感情を表に出すタイプではないけれど、退屈であろうことは容易に想像できる。
「いいえ、お気になさらず。 久しぶりの再会ですし存分に噛みしめてください」
「正直なところどうですか? 咲良、足引っ張って大変じゃないですか?」
「ちょっと」
なんで足引っ張ってること前提で話すのかな?
そりゃ、戦力にはなってなさそうだけどさ。
「そうですね…… 足は引っ張っていませんよ? 料理がお得意ですのでそういう面では助かっています」
料理が得意で良かった。
料理を覚えておけば後々得だと言っていた、今は亡きおばあちゃんありがとう。
「へえ…… ええっとベルさんでしたっけ? ちょっと後ろ向きだし、思い悩みやすい咲良ですけど…… 大切な友人なんです。 どうかよろしくお願いします」
「もちろんです。 我々は仲間を無下にすることはしません」
「ありがとうございます。 あの、我々ってことはほかにも仲間がいるの」
「? いるよ?」
「じゃあ、その人たちにもあとで会わせてね?」
「なんで?」
「咲良を任せられるかどうかこの目で確かめないとね?」
((不味い!))
ジュリやハリィみたいなタイプならばいい。
クロエさんような性格の人と会った日には喧嘩になることは必至。
「あ、こんな時間。 そろそろ帰らなきゃ。 じゃあまた」
「あ、うん。 バイバイ」
自分のお茶代を置いていくと理名は外に飛び出していった。
その様子を二人で見送りつつ……
「クロエさんに頼んだら……それっぽく演じてくれますかね?」
「無理でしょうね」
バッサリ切り捨てつつ、ベルさんは紅茶を一口、口に含んだ。
(咲良) レティシアさんなんでブラつけないんですか?
(レティシア) ソレはそもそも大きくなった胸を隠しつつ支えるためのものだ。 成長していない私がつける必要はない
(咲良) 必要はありますよ。 ある人の平穏のために。 というか気づいていないんですか? ちょっと上半身倒せば服の隙間から見えちゃうらしいですよ?
(レティシア) むっ! そうか…… うーんサービスということでいいんじゃないか?
(咲良) 絵が出てこない小説でそのサービスは気づいてもらえませんよ!? そこまでしても嫌ですか!?
(レティシア) この一線を越えるといろいろと終わりな気がするんだ……




