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残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
和歌山咲良と異世界を知ろう! 入門編
27/125

オークを退治しよう 3 SIDE 咲良

(咲良) 今回も複数回に渡るので2日連続更新ですよ。


(ククル) でもまだ終わらなかったね。


(咲良) 作者は三回で終わるかなって思ったらしいよ?

 悲鳴を聞きつけ、その場所へ向かうとそこは地獄絵図のようだった。

 地面には殺されたオークの死体が数体。

 それから、ロブ、ブレイズ両名の死体、ともに頭から血を流し、その目に生気はなかった。

剣を折られたボルト君は放心状態で壁に座ってもたれかかっている。

エイダさんは右手を負傷しているらしいけれどそれ以外は大丈夫そうに見える。

 ……ウィズさんの姿は見えない。


あまりの惨状に言葉が出ない。

シャルさんはボルト君の前まで歩み寄った。


「何が起こったか想像つくけど……話してもらおうか? 何があった」


「あ…… え……?」


話しかけられてもボルト君は放心状態から戻らない。


「おい!!」


座ったままのボルト君の顔の脇の壁をシャルさんは脚で蹴る。

その一撃で現実に戻って来たらしい。


「オークが…… 後ろから襲って来て……」


ややたどたどしくて、時間はかかったが、彼らの身に起こったことはわかった。


ボルトたちはやはり私たちが付いてきたことが気に入らなかったらしく、こっそり私たちを撒こうと画策したらしい。

で、分かれ道で、なおかつ隠れられるような物陰のあるところで灯りを消した。

目論見は成功し、私たちから離れることができた。

そのまま洞窟を奥に進んで行くと、ほどなくしてオークと出会った。

オークは一体づつ現れたので五人でかかれば勿論倒せた。

それで自分達もオーク相手に充分やれると思ったらしい。

そうして進んで行くと、今度は集団に出会った。

と言っても現れたオークは三体、苦労のしようもなく、直ぐに倒せると全員思っていたらしい。

実際、オークの内二体は楽に倒せた。

ロブが盾で攻撃を受けて、二人の魔法の援護を受けつつ剣でもってオークを仕留める。

いつものスタイルで楽々勝利を収める。

 そのはずだった。

 雲行きが怪しくなってきたのは三体目に狙いを定めたとき。

 魔法による援護がなくなり、不審に思った前衛三人は後ろを見た。

 すると信じられないことに後ろからオークがさらに二体現れていた。

 ブレイズはその一体に首根っこをつかまれ瀕死、エイダは自分の杖とオークの斧でつばぜり合い状態だった。

 

 「後衛の魔術師がオークと正面から戦って勝てるわけない。 魔法の訓練しかしないから当たり前だけどな。 それでも死ぬ一歩手前だったのはオークが遊んでいたからだよ。 オークは鼻がきくからね、血の匂いもわかるし何なら同胞の血かどうかもわかるよ。 仲間を殺された仕返しついでに痛めつけようとしたんじゃないか? まずは退路の確認をするべきだったな。 迷路みたいだからどこから来るかわかんないよ?」


 足をどけないまま、抑揚のない声で話すシャルさん、細い眼からその表情は読み取れない。

 

 さて、仲間二人がとらわれていることに気づき、助けに向かった。

 魔術師なら勝てなくても、自分たちなら勝てる。

 そう踏んで切りかかったわけだったのだが。

そこでボルト君は再び口を閉じた。

 

「勝てなかったのか?」


シャルさんが問いかけると、


「斬りかかれなかったんだ。 岩に引っ掛かって」


「「「は?」」」


私のみならず、二人も理解できなかった。

ランタンで辺りの見渡せば、確かに岩がたくさんあって剣は振りにくそうではある。

けれど、


「ここに来るまでのオークは倒せてたんでしょ? 今さら岩にぶつかるとか? あ、一応傷見せてくれない? 治療するから」


疑問を投げかけたククルちゃんはエイダさんの診察を始めた。

疑問に対する答えは直ぐにシャルさんから出された。


「洞窟内は縦に長い。 だから剣を振り下ろすぶんには苦労しない。 けれど横に振ろうとすると岩があって狭いからぶつかる。 最初は縦に振ってたんだろうけどそのうち横に振るスタイルに変えた。 その理由は単純、疲れたからだ」


「疲れたぁ?」


ついすっとんきょうな声を出してしまった。

シャルさんが辺りを見渡して剣を拾った。


「持ってみ?」


シャルさんから剣を受けとる。

両手で持つタイプの剣で、柄には立派な装飾が施されていた。

そして何より持ってみてわかった。

この剣、結構重い。

縦に振ることはできたけど何回もできるとは思えない。


「お前結構お坊ちゃんだろ? ずっと思ってたんだよな、なんか自信家だし。 あの剣も実家のだろ? あの豪華な装飾のせいで重さが増してる。 恐らく出身は貴族の家、相続順位の低い三男以下、若しくは妾の子。 能力が低いせいで国の仕事もなく、庶民の仕事はプライドが許せない。 冒険者なら直ぐに名声を上げやすいし、格好いいって人も多いしな。 でも努力はあんまり好きじゃないから訓練はそこそこ、それでも運良くここまで生きてこれた。 そのせいで調子に乗っちゃった。 そんなとこ?」


ボルト君は何も言わない。

図星だったからだろう。


「ところでもう一人はどうした? 四人しかいないけど?」


「あいつは…… あいつはオークに一人でたち向かったんだ。 でも勝てなかった。 剣を折られて…… それで連れて行かれた。  エイダを助けて……」


「シャルさん……」


「まずいなぁ」


「これは不味い」


後ろでククルちゃんも同意する。



「急いで助けに行かないとな」


「それよりもこっちのほうが重大だよ」


そう言うククルちゃんのほうを見れば、エイダさんの怪我を見ている最中だった。


「薬指と小指が欠損、おまけに前腕まで複雑骨折。 手持ちのポーションでどうにかなるレベルじゃない。 かといって放って置いたら命があぶない。 神経も壊されたのは救いだね。 痛みもそんなにないでしょ。 もう肘から下を切断するしかない」


「切断……」


「よし、やるか。 切るのは私がやろう」


怯えるエイダさんに対しシャルさんが覚悟を決めるのは早かった。


エイダさんを仰向けに寝かせ、二の腕を布で縛り上げる。

エイダさんはかなり抵抗した。

当たり前だ。

右腕が無くなるのだから。

けれど、遊んでいる暇はない。

放って置いたら壊死も始まりかも知れない。

エイダに猿轡をした。

舌を噛んでしまわないためだ。

私はエイダさんの脚に乗っかった。


「一応痛み止めは投与しておく。 いまはどうでも切られたら流石に平気じゃないだろうし。 それでも気休めだけど」


「よしいいな。 一回で切るから、その後の出血は頼むぞ」


エイダさんは怖いのだろう、目を力一杯閉じ、身体は強張っている。


「よし、行くぞ!」


シャルさんは刀を振りあげて


「やああああっ!!」


エイダさんの肘の辺りに刃を振り下ろした。


「むうう!! ううん!!」


血がたくさん飛び散る。

ククルちゃんが急いで止血する。

その間、私は暴れるエイダさんの両足の頑張って押さえつけた。


「止血完了。 でも応急措置だから無茶はしないでね。 まあ、無理だろうけど」


エイダさんの顔は汗がグッショリで憔悴しきっていた。

ククルちゃんはレイピアを鞘に収めた。


「あの…… 止血ってどうやって?」


考えられるのは外科的方法だけど、レイピアでは難しい。


「これレイピアだけどちょっとした絡繰りがあってね。 グリップを握ると剣の先から毒やら薬やらが出るようになってるんだ。 薬の種類はグリップを回して操作できる。 今回は傷口に凝血剤を投与した。 あとはポーションで傷口の治療の処置も」


「そんなことより、早く先に進もうぜ。 オークはウィズってやつを連れてこの先に行ったんだ。 多分連れ去った人たちもそこにいるんじゃないか」


シャルさんは刀や顔についた血を拭った。

それから、ボルト君のほうを見て、


「で? お前はどうする?」


「お前たち行くのか? 三人で?」


「そりゃ行くさ。 三人いれば十分だ」


ボルト君は信じられないような表情を浮かべた。


「言うまでもないけどこいつはもう戦えない。 よって、選択肢は三つ。 一つ、ここに置いていく。 お前がここに残って見張るか置いていって私たちに付いていくかは好きにすればいい。

二つ、こいつをお前が担いで逃げて村に帰る。 その間オークや魔物に遭遇するかも。 三つ、お前が担いで私たちに付いていく。 オーク退治は私たちがするからお前は何もしなくていい。

彼女に何か起こればククルが診る。 但しお前たち二人の安全は保障できない。 どれにするかは自分で決めろ」


そう言うとシャルさんは立ち上がり歩きだした。

私たちもそれに倣う。

ボルト君もエイダさんを背負うと私たちについてきた。

(ククル) このレイピアにはいろいろな薬品が仕込まれてるんだ。 でもほとんどは毒だよ。 相手によっていちばん効く毒が違うからね。


(咲良) (まだ子供なのに毒使いとか。 子供がそんなの扱ってていいのかな?)


(ククル) 聞いてる? またヘ○シェイクだかのこと考えてるの?


(咲良) マグマ○キサー村○のこと考えてた。


(ククル) 本当に誰!?

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