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残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
和歌山咲良と異世界を知ろう! 入門編
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オークを退治しよう 2 SIDE 咲良

(ククル) 前にレティシアたちに将来はマッドサイエンティストになりたいって言われたら変な顔されたんだよね。


(咲良) (そこはマッドじゃないと駄目なんだろうか? だとしたらやめておいたほうがいいと思うけど…… でも科学者っていうのは悪くないし。 そもそもどこを目指しているのか。 どうしたら……)


(ククル) そう! その顔! みんな何考えてるの!?


(咲良) ……ヘル〇ェイク〇野のこと考えてます。


(ククル) 誰!?

 「なんでお前たちもついてきたんだ!?」


ボルト君は私たちが付いてきたことが不満らしい。


「ふんだ! 仕事に参加するかどうかはこっちの自由さ。 むしろ、あんたらの言うことを皆が聞いて私たちしか来なかった方が珍しいね」


ククルちゃんも一歩も引かず、口で彼らと渡り合う。

私の身体越しで。

気が強いのか弱いのかわからない。


「まあまあ、ボルト、いいじゃない。 彼女達だって経験積みたいんだよ。 私たちと同じくね」


「あいつもか?」


「ん? 私?」


話題に上ったのはなぜか付いてきたシャルさんだった。

てっきり私たち二人しか行かないと思っていたから意外だった。

そして彼女は言うまでもなく、実力者である。

そのことは彼らもわかっているらしい。


「心配するなよ。 私はこいつらのお目付け役で来たんだ。

お前たちの邪魔も横取りもしないよ」


 そう言ってシャルさんは私たちの肩に手を置いた。

 でも正直ありがたいとも思う。

 ここにいるみんなの実力はわからないけれど、少なくともシャルさんは実力者なのはわかっている。

 いてくれるだけでも心強い。

 

 「でも、あんまりお前たちのほうも手を出さないようにするからな。 一応お前たちも戦闘能力ついたわけだし」


 「「え……」」


 「え、じゃねぇよ」


 


 しばらく森を進んでいくと少し大きな洞窟が目の前に現れた。

 それはいい、だって洞窟にいるってベルさん言ってたし。

 でも、現状それよりも問題なことがあるようで。


 「道中何もいなかったね」


 不意にククルちゃんが口を開く。


 「まだ日が高いのに動物にも魔物にも遭遇しなかった。 森の中を突っ切ってきたのに」


 「オークに食われたか、その前に隠れたか、ってとこね」


 エイダさんが言葉を繋いだ。

 

 「思ったよりも群れの規模が大きいのかもしれない。 どうするボルト?」


 エイダさんの問いにボルト君は


 「行くにきまってる! 日が沈む前に全部片づけるぞ!」


 「「「「おお!!」」」」


 力強い号令に仲間が応える。

 思ったよりも体育会系?


「布陣はいつものようにロブが一番前で攻撃を受ける、俺とウィズが剣で倒していって、ブレイズとエイダが魔法で支援、これでいいな」


 それからこちらを振り返って、


 「お前たちはどうするんだ三人で? というか武器は?」


 「私はこれ」


 そういってククルちゃんが腰の鞘から抜いたのはレイピアと言われるような細く尖った片手剣。

 意外にも彼女は剣士だったらしい。

 でも回復系の魔法使えたしオールラウンダーなのかな?


 「でも生命魔法使えるし、前衛が足りてるなら後ろに下がったほうがいいかな?」


 「後衛でいい。 連携が取れないのは前衛では命取りになりかねない。 じゃあお前は?」


 そういって私のほうを見た。

 でも私魔法覚えたばっかだしなー。


 「私は風魔法を少し。 戦力になるかどうかは正直……」


 自信はありません。


 「ふぅん…… じゃあ後衛にいろ。 援護でもしててくれ。 あとお前は」


 シャルさんに視線を向ければ彼女は両手を頭の後ろで組んで


 「私は戦士だけど、邪魔しないって言ったし一番後ろで退路でも守ってるよ。 気楽にね」


本当に気楽そう。

経験あるみたいだし、こんな戦闘苦でもないのかな。

脇ではブレイズさんがランタンの準備をしていた。


「どうだブレイズ、使えそうか?」


「問題ない…… あと半日はもつ……」


ランタンの火は油ではなく、魔石と呼ばれる不思議な鉱石で灯される。

石自体に魔力が込められており、魔法に関わる色々なことに使えるらしい。

その生産方法は不明。

人の手で作り出すことはできず、天然で採取されるものしかないらしい。


で、そのランタンは2つある。

一つはレティシアさんが貸してくれたもの。

もう一つは商人の一人が貸してくれたもの。


「前衛がそっちの三人ならこのランタンも持つ?」


と、ククルちゃんがランタンを差し出そうとする。

しかし、ボルト君は首を横に振って、


「とりあえず、この一つでいいだろう。 もう一つは予備で何かあった時のためにとっておこう!」


ということで、もう一つのランタンは点けずに持って行くことになった。


「じゃあサクラ、はいこれ」


私が。

そんなこんなで私たちは洞窟の中に突入した。




それが三十分前のこと。


「「置いてかれたぁ!!」」


置いて行かれた。

最初は先を歩いていた五人とこっちの三人の距離が離れていった。

それからランタンの灯りが消えた。

待っていても点く気配がないので私が持っていたランタンを点ける。

その頃には彼らはいなくなっていた。

 目の前には二手に分かれた道。

 彼らがどっちに行ったのかわからない。


「確信犯だと思う?」


 ククルちゃんに聞かれる。


 「確信犯だと思う」


 「だよね、これからどうしようか」  


 「サクラ、お前風読めるようになったんだろ? 前に私が言ったヤツ、あれで洞窟の空気の流れ読んでみなよ」


  シャルさんが会話に入ってくる。


 「手出さないんじゃなかったの?」


 ククルちゃんは若干不満そう。


 「手は出してないさ、口は出したけどな」


 こういうのを屁理屈というのではなかろうか?


 でもそうか、空気の流れがわかれば、洞窟内部の様子が少しわかるようになるかもしれない。

 私は意識を集中させた。

 風は後ろから前方に向かって吹いている。

 たぶん入り口から吹いているんだろう。

 それとは別に前方、右側の道からも少しだけど風が吹いている。

 こことは別に穴か何かあるのかもしれない。

 そして左側からは……

 !!


 「左の道から何か来ます!! あの人たちじゃないと思います!!」


 数は五、人間よりも大きい何か、つまり


 「!  サクラ、下がって。 姿が見えたら魔法撃って、私たちには撃たないように」


 ククルちゃんはレイピアを抜いた。


 「手伝うぞ、ククル」


 そういってシャルさんも刀を抜いた。

 

 「お願い、さすがに五体は相手できない」

 

 「素直でよろしい」


 ランタンを前方に向けて待ち受けていると、ドシン、ドシンという足音とともにその大きな巨体が姿を現した。

 オーク、深緑色で丸々と肥えつつも、腕や足などには十分すぎるほどの筋肉がついている。

 その大きな巨体は二メートルは優に超えていて、背が特に低い二人と相対するとことさら大きさが強調される。

 顔は豚というよりもイノシシに近く、牙が生え、鼻息は荒い。


 「サクラ!!」


 目の前のモンスターに気圧されている場合じゃない。

 私は両手を前に出して魔力を込めた。


 「≪風よ、吹きすさんで全てを切り裂けカマイタチ≫!!」


 すると強風がオークたちに向かって吹き、奴らの全身を切りつけていく。

 しかし、切り付けてバランスを崩しただけで、殺すことはおろか大ダメージにもならない。


「浅い!!」


 「「いや、十分!!」」


 二人は足を切り付けられてバランスを崩したオークの懐に飛び込んだ。

 そして、オークの足や身体を踏み台に頭の高さくらいまで飛んだ。


 「水の型 その参 渦潮!!」


 シャルさんは刀から水を迸らせながら、二体のオークの首を刎ねる。

 ククルちゃんもオークの首筋にレイピアを刺し、曲芸師のように跳ねながらもう一体のオークにも突き刺す。

 でも明らかに私の攻撃よりも浅い。

 でも、二人が攻撃していないオークがまだ一体いる。

 

 「あれは私が! ≪カマイタチ≫!」


 今度はオークの首をしっかり刎ね、倒すことができた。

 攻撃範囲が広いと詠唱もしっかりしても、威力は低くなってしまう。

 でも一体だけなら詠唱省略でも十分殺せる。

 残っているだろう二体のオークに目を向けるが、とっくに泡を吹いて倒れていた。

 

 「なんで?」


 「私、こう見えて毒使いなの。 アイアンエレファントも無事じゃ済まない毒、オークじゃ即死だよね」


 毒使い、人は見かけによらない。

 いや、マッドサイエンティストっぽいしイメージ通りかな?


 「サクラもやるじゃないか、一体とはいえオークを仕留めるなんて」


 と、シャルさんに肩をたたかれたが、私の顔はたぶん浮かなかっただろう。


 「そんな…… 一体づつしか相手できないんです。 私一人だったら勝てないです」


 「別にソロでやってるわけじゃないし、勝てばいいの勝てば、そもそもあっちは五体いたんだから卑怯なのはあっちのほうでしょ?」


 それもそうか、と自分を納得させていると、


 「うわぁぁぁ!!」


 洞窟の奥のほうから若い男の叫び声がした。


 「今のって……」


 「まあ、あいつらだろうな…… 何やってんだか。 足元見てみ? 左から右の道に向かって足跡が伸びてる。 絶対挟まれたよ」


 とシャルさんがため息をついた。

 それから、右側の道を向いて、

 

 「声がしたのはこっちだな。 行くぞ」


 と、先を急ぐのだった。

(ククル) 人に害をもたらすことも多いオークだけど実はその肉は食用として流通してるんだ。


(咲良) へぇ…… 豚肉みたいな感じなんですかね?


(ククル) 食べたことはないんだけどね? 生で食べれば確実にお腹を下し、焼けば硬くて食べずらく、煮れば煮汁ごと不味くて食べられたもんじゃないんだとか。


(咲良) すごい、そこまでこき下ろしておいてなお食用と言い張るなんて!


(ククル) 食べる人はいるんだよ? 歯が丈夫な獣人族とか、味より量とか言うサリアとか


(咲良) 味より量? そんなことある? 

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