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残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
和歌山咲良と異世界を知ろう! 入門編
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オークを退治しよう 1 SIDE  咲良

(咲良) 仕方ないんですけど馬車って結構揺れますよね。


(ククル) すぐ慣れるさ。 かく言う私も酔って吐いたり、お尻が痛くなったり、水筒こぼしたり、ごはん落としたり、誰もが経験することさ。


(トリナ) 吐いて私の服にぶちまけたり、お尻が痛くなってハリィの膝に乗ったり、水筒の水をライラにかけたり、ご飯を落としてサリアに怒られたりね。 誰もが経験することだわ。


(ククル) わー!! わー!!


(咲良) 意外といじられ属性?

 街を出てから約一週間、私は一番後ろの馬車にいた。

 その馬車荷降ろし用に後ろが開かれているので、そこから見張りができる。

私はそこから双眼鏡で道を見張っている。

しかし双眼鏡の性能はよろしくないので、その分目が疲れるのが悩みどころ。

一応、屋根の上にもトリナさんがいて見ているけど、じっとしているのが嫌いらしいし、多分真面目に見張りしてない。


「ねぇ、貴女も≪銀色の狼≫の一員?」


後ろから話しかけられた。

この馬車には≪蒼き守護者≫のエイダさんとウィズさんがいる。

話しかけたのはウィズさんのほう。

ポニーテールでややボーイッシュな服装をしている。

武器らしいものは持っていない。

ちなみに、他の男子三人は別の馬車にいる。


「そうですけど?」


少しばかりとんがった態度になってしまった。

私が彼らにいい印象を持っていないせいだと思う。

レティシアさんを小バカにし、盗賊との戦闘にも参加しなかった。


「うう…… あんまりつっけんどんにしないでよ。 折角同世代の女の子と旅してるんだもの、いろいろ話したいじゃない」


要はガールズトークをしたいと。

私一応見張り中なんだけどなあ。


「私、見張り中ですよ? 話なら他の二人に……」


他の二人、つまりククルちゃんとエイダさんに目を向ける。

 

 「つまり―――――に関しては――――――する必要があるわけで……」


 「でもそれなら―――――を―――――してから―――――した方がいいんじゃない?」


 「いや、それだと……」


 「あの会話についていける?」


 「無理ですね」


 無理だ。

 あの会話には割って入れない。

 かなり議論は白熱しているらしい。

 

 …………


「へぇー、それじゃあ、貴女ってまだ初級しか使えないんだ?」


「そうなんですよね…… 攻撃力のあるのも一個は覚えたんだけど……」


結局、私は言われるはウィズさんとガールズトークを繰り広げていた。

お題は、お互い初対面なこともあって自分の話。

異世界の話は信じてもらえないだろうし、奴隷云々のことは話したくない。

だから、その辺はぼかしている。

私は田舎から出稼ぎで上京したものの路頭に迷っていたところを拾われた、ということにしている。


「じゃあ、今はまだ修行中なんだ?」


 「そんな感じかな」


 「思い出すなあ。 私も田舎の師匠にメッチャしごかれたもん。 お前に冒険者は早いって街に出るの許してくれなかったんだ。 百年たったら死んじゃうっての」


 「中途半端な実力で戦って死んでほしくなかったんだよ、きっと」


 「そうかもね、でも最後にはこの剣をくれたんだ。 お前に教えることはもうないからって」


 そういってウィズさんは自分の剣を愛おしそうに抱きしめた。


 「話しているところ悪いんだけど」


 「「うわぁ!!」」


 トリナさんが屋根の上から体を倒してこちらを覗いてきた。

 もちろん頭は下向き、血が上らないのだろうか。


 「西のほうから風に乗って変なにおいがするのよ。 血とか、何かが燃えたにおいとか。 結構近いと思う」


 「はい、サリアさんが先ほど煙が上っているのを確認しました。 その方向には商人の方が贔屓にしていただいている小さな村があるとか、寄ってみるそうです」


 屋根の上から声がした。

 見えないけど声からしてベルさんだと思う。

 身体能力を生かして馬車間の連絡係のようになってしまっている。

 というか足音が全くしなかったのはどういうことだろう?


 

 

 「……これはひどいな……」


 レティシアさんは顔色一つ変えずそう言った。

 畑は荒らされ、家は焼かれるか壊されるか、原型が残っているのは少ない。

 村人はけが人の介抱で大忙しらしくあちらこちらに走り回っている。

 そのうち馬車から降りている私たちに村人の初老の男性が気づいた。

 

 「アルフォンソさんじゃないか…… なんでここに……?」


 「仕事の道中でして…… それより村長、これは一体どういうことですか?」


 「そ、それが…… 二日前の夜中にオークの群れが村を襲ってきて…… 食料を根こそぎ奪っていったんだ……!」


 「オークってあの豚みたいな?」


 私が近くにいたシャルさんにこっそり聞く。

 

 「なんだ知ってたのか、魔物はあっちの世界にいないって聞いてたけどオークはいるんだな」


 「いませんよ」


 でも聞いたことはある。

 二足歩行の豚のようなモンスター。

 大柄で丸々と太っている。

 簡単に想像できる。


 「こっちにある武器って言ったら農具か狩りの道具くらいだから相手にならない。 それをいいことに一軒一軒家の壊して食料や若い女を奪っていきやがったんだ…… 俺たちだって戦ったさ、でも全然歯が立たなくて……」


 そう言うと村長は膝から崩れて泣き出してしまった。

 自分の村を守れず、いいように破壊された、相当悔しいんだろう。

 そんな村長に《天駆の鷲》のシルヴァさんが近づき膝をついた。

 

 「二日前って言ったな、冒険者ギルドにはだれか向かってるのか?」


 「若いのを一人、年食った馬が残ってたからそれに乗って……」

 

 「そうか……」


 そういうとシルヴァさんは村長の肩に手を置いた。


 「アルフォンソさん、ここから一番近いギルドはどこですか?」


 「ここですと……マイランになりますね、馬だと片道二日くらいでしょうか」


 「それじゃあ間に合わないな。 奴らがまたここに戻ってこないとも限らん。 俺たちで討伐しよう、いいか?」


 「異議なし」


 「もちろんだ!」


 シルヴァさんの提案を二組のパーティーのリーダーは承諾した。


 「それでいいか? アルフォンソさん」


 「わかりました。 私が依頼をしたことにしましょう。 そうすれば報酬は私が出せばいい」


 「アルフォンソさん……」


 村長が顔を上げた。

 冒険者に討伐を依頼すれば費用が掛かる。

 オークは金品に手は付けなかったらしいが、復興を考えればお金はあるだけあったほうがいい。


 「お得意様のよしみですよ」


 「けが人を治療しよう、ククル、ライラ、クロエ」


 「はーい」


 「わかった」


 「はぁい」


 三人と、エイダさん、フィラさんが治療を開始する。

 後で聞いたことだけど、11属性の中の『生命』というのはけが人、病人を癒す魔法らしい。

 

 重傷者は魔法で治り、軽傷者は薬(ポーションというらしい)で治す。

 魔力だって回復するとはいえ有限だから、後遺症の心配がない限りは民間療法で治すらしい。

 

 一時間後、重傷者のけがはほぼ治った。

 もちろん自由に動き回るまでにはまだ少しかかるだろうけど。

 

 「レティシア様、オークの巣と思われるところを見つけました。 ここから南東に数キロ離れた洞窟です。 見たところ数は30前後、ナイトオークですので今は全部洞窟の中でしょう」


 ベルさんはずっとオークの住処を探していた。


 「そうか、夜行性なら日が暮れてしまわないうちに叩こう」

 

 レティシアさんが支度を始め


 「俺たちも行くぜ嬢ちゃん」 


 シルヴァさんたちも支度しだす。

 嬢ちゃん扱いがレティシアさんは若干不本意な様子。


 「待ってくれ!! 俺たちがやる!!」


ボルト君が声をあげた。


 「「俺たちが?」」


 「俺たち」の及ぶ範囲とはどこなのか。

 まさか。


 「俺らのパーティーだけでやるって言ってるんだ! 前回の盗賊の戦いに参加できなかったからな!」


 「「…………」」


 何言ってんの的な二人の視線がボルトくんに注がれる。


 「お前らオークの群れと戦ったことあるか? 洞窟戦は?」


 「どっちもない! だが、強くなろうとすればオークで足踏みなんてしていられない! それこそ人だって殺さないとならないんだからな!」


 「オークで足踏み……ね」


 「嬢ちゃんたちはオークとは?」


 「ククルと咲良がまだです。 咲良は戦闘経験もないんですけどね」


 「そうか…… まあ、いずれは経験することか」


 「わかった、お前たちに任せるよ。 ただし危険だと思ったらすぐ撤退すること、いいな!」


 「危険なもんか! オークなんて若手ならよくある仕事じゃないか!」


 「まあ…… そうだな」


 話はまとまったらしい。

 私は出番なしか。


 「あ、ククルと咲良、二人もついて行ってオーク退治して来い」


 「「え?」」

(咲良) 作中の単位は基本的に日本にある単位を使っています、メートルとかね。 でも実際は異世界特有の長さなんかの表記はあるので、値も違います。 ですがいちいち計算するのは作者も読者の皆様もしんどいと思うので、日本にある単位系で表記します。  

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