魔法を使ってみよう SIDE 咲良
(咲良) あれ? まだ次の話には早いんじゃ?
(ベル) 作者が前回、前々回を一気に書いたため一週分余裕ができたので投稿したとか。
(クロエ) じゃあ、前の二つを纏めて出せばいいのにぃ。
(ククル) 前回分を投稿してから考え付いたんだってさ。
(レティシア) 投稿しないで一週分余裕作っておけば間際になって焦ることもないのに。
(咲良) もうちょい作者に優しくしましょうよ。
盗賊を討伐したその日の夜、というか夕方でもないが、この先の道は舗装があまりされていないようで険しくなってしまっている。
というのも、この先は森を抜け岩場になる。
岩場は落石などの危険がある。
当然それを進んでいくわけだが、そのうち真っ暗になってしまう。
一応、魔法やランタンによる明かりはあるが、やっぱり心もとない。
ついでに言うと、夜は夜で夜行性の動物、魔物が活動し始めるので急ぎでないなら移動しないのが好ましい。
ということで、今日はここまでとし明日の朝出発することで暗くならないうちに岩場を抜けてしまおうというのである。
パーティーで夕食後、夜営のテントの張る。
夕食の準備は私も手伝った。
料理は結構得意だ。
周りからの評判も上々、初めてこのパーティーで活躍できたかも。
さて、テントを張ったけれどまだ日が沈むにはまだ時間がある。
ということで、
「実際に魔法を使ってみようか」
夜営地は少し開けたところを陣取った。
魔法を使ってもそれほど迷惑にはならないだろう。
「まず、魔法は火、水、土、風の四つを基本構成要素として発動されると考えられている。 どんな魔法もこの四つとその組み合わせ次第ということ」
「なるほど」
ゲームの属性なんかでもよくありそうな四つだと思う。
「で、のちにこれに雷、力、音、氷が加えられ、八属性になった。 それとは別に無属性、精神、生命という分類がある」
「全部で11属性? なんか中途半端だなぁ……」
「そもそも魔法は神が与えし恩恵だと考えていたらしい、それを無理やり学術的に体系化して理解しようとしたものだから。 分類すること自体が無理があるのかも」
こっちの世界で言うところの自然現象かな。
科学的な現象は神が与えたものだと考えていたと授業で聞いた気がする。
魔法も自然現象の延長線上にありそうだし近いものであるのかもしれない。
「最初に魔法を習う子供は八属性の内のどれが得意かを調べるんだ。 ということではいこれ」
場所の中で渡された魔導書だ。
「とりあえず、四属性から調べてみよう。 まずはこれの四ページの一番最初の一文を読んでみて。 あ、右手は本から離して」
「はい、えっと…… 『水の聖霊よ、わが魔力を糧とし我に水の祝福を与えたまえ』」
すると、私の右手に水球ができた。
昼間見たものと同じだ。
「わわっ!」
こんなこと元いた世界では絶対に出来ない。
私のテンションも上がってしまう。
「じゃあそれは地面に吸わせよう、水球を地面までもっていくイメージで」
水球を移動させて地面に近づける。
すると地面と触れた部分から水が地面に吸収されていき、やがて消えた。
「じゃあ次、58ページの最初の一文」
「58ページ? また随分先な…… あった。 『火の聖霊よ、わが魔力を糧とし我に火の祝福を与えたまえ』」
すると、右手に火の玉ができた。
出来たには出来たが、火の玉はポッと出て光ったあと、すぐプシュウと黒い煙を立てて消えた。
「火属性の素質はないね」
「ええ……」
素質がないとバッサリ言われてしまった。
まあね、別にチート能力があるわけじゃないし、悲しくなんてないから。
「次は113ページ、土魔法のページだよ」
「『土の聖霊よ、わが魔力を糧とし我に土の祝福を与えたまえ』」
呪文を唱えると地面表面の土が私の手元に集まって来て土塊を作った。
「土魔法は普通……と」
「これ普通なんだ」
普通とはなんともコメントしがたい。
「じゃあ最後、163ページの風魔法」
「『風の聖霊よ、わが魔力を糧とし我に風の祝福を与えたまえ』」
…………
何か起こっているのだろうか。
全くわからない。
風魔法というからには風にまつわる何かなのだろうけど、そもそも風は目に見えない。
「サクラ、多分集まってると思うから、そのまま前に打ち出してみて。 圧縮された空気が自分の手のひらに集まっているような感じだ」
打ち出すと言われても、目に見えないし……
とりあえず本を置き、手に何か握ってるとして、パントマイムよろしく野球ボールを投げる動作をしてみた。
ビュオオオオオオオ!!
あたりにすさまじい風切り音が鳴った。
地面の草が激しく揺れ、細い木は嵐にでもあったかのようにしなる。
「えっと…… これは?」
明らかにこれまでの三属性と威力が違う。
「驚いたな…… こんな威力を出せるなんて思わなかった…… サクラ、間違いなく君の得意な属性は風だ。」
でしょうね。
良かった。
これなら少なからず戦闘に参加できる。
ただの料理要員ならなくて済むかもしれない。
っていうか魔法を使えている時点でもうテンションはMAXさ!!
ファンタジーの世界に来たら魔法くらい使えないとね!!
「とりあえず、風属性の中で何個か魔法を覚えてみよう。 最終目標は無詠唱ないし詠唱省略で使えること。 あとは、自分のオリジナルを作ってみてもいいかもね」
「オリジナル?」
「レティシアのヘルファイアとか、あれはレティシアが自分で考え出したものだ。 魔法の発動に必要なのは魔力とイメージする力。 どんな魔法を発動させたいかイメージすれば魔力次第で発動させられる。 簡単なことではないけど」
「へぇ…… 魔法を使うことになれたら試してみるのもいいかな……」
少なくとも使い始めた私には無理だろうけど。
「評価次第では魔法百科事典に載るよ。 ほら、こんな風に」
そう言ってライラちゃんは、一際分厚くて大きい本を渡してきた。
見た目通り重さもえげつない。
「こ……これは……?」
「いま言った魔法百科事典の第十八版、去年二十一版出たからちょっと古いけど。 適当なページ開いてごらん」
とりあえずページをパラパラめくる。
本には一ページに魔法と開発した人の名前、呪文、起こる現象、開発者プロフィール、その魔法にまつわるエピソード、諸注意などが書かれていた。
「これに載りたいがために新しい魔法の研究、開発にいそしむ人も多いよ」
だとしたら、新しい魔法を作るのって相当難しいのでは?
たぶん、そうそう載らないから、載りたいって思うんじゃ。
そう考えると、新しい魔法を作ったレティシアさんってすごい。
「レティシアさんってどこのページに載ってるんですか?」
「載ってないよ」
「え?」
「言ったでしょ? 評価次第だって。 新しい魔法を作ることは難しくない。 でも、辞典に載せるにふさわしいという評価を得るのは相当大変だよ。 僕も挑戦中だけど五分五分だし」
うーん。
これは厳しそうだなぁ。
別に名を上げたいわけでもないし、目標にするのはやめておこう。
などと志の低いことを考えていると、後ろから草を踏みしめる音か聞こえた。
「おーい、お前たち、そろそろ戻って来いよ。 そろそろ夜行性の動物やら魔物やらが動き出すよ」
やってきたのはシャルさんだった。
あたりを見ればもう日は沈みかけている。
そう言えば後片付けやらテントの設営やらすべて任せてしまった。
「じゃあ、もう行こうか。 続きはまた時間の空いた時に」
「そうそう、早く寝て朝とっとと起きよう」
シャルさんは私の魔法の勉強に参加してないはずだけど……
そこで私はある出来事を思い出した。
「シャルさんって…… 剣術使ってますけど、この間の吸血鬼との戦いで、なんか水出して戦ってましたよね? あれって?」
シャルさんに聞くと、彼女はこちらに振り向いて。
「いいところに気が付いたな。 私のあれ、正確に言うと剣術とは少し違うんだよ」
剣(というか刀)を使っておいて剣術じゃない?
「剣を使うから剣術なんじゃないんですか?」
「と思うだろう? 剣術って言うのは剣だけを使うものなんだ。 私やお嬢のあれは剣術じゃない。 魔法が混じってるからな。 その上で、だ。 お察しの通りあれは水属性の魔法だ。 正確には『水の型』って言う流派なんだけどな。 剣を持ちつつ魔法も使う戦い方だ。 基本の四属性すべての型がある。 ちなみにお嬢は『火の型』な。 サクラの属性は何が得意だ?」
「風でした」
「じゃあ型を覚えるのは無しだな」
なんで?
「風系統の魔法を覚える近道はな……」
何かコツが有るんだろうか。
なるべく早くものにしたいし、有るなら聞いておきたい。
「風を感じることらしいぞ」
「はい?」
「風を知り、風に触れ、風と戯れる……だったかな?」
なにそれ?
私は訳がわからないのでシャルさんのそばを離れ、少し後ろにいたライラちゃんに近づき、聞いてみた。
ライラちゃんは首を横に振り
「僕もよくわからない。 風属性は僕もあまり勉強していないんだ。 多分心構えみたいなものじゃないかと思う」
あれかな?
考えるな!感じろ!ってことかな?
(咲良) 四属性の型があるのはわかったんですけど、残ったほかの属性はないんですか?
(シャル) やろうとしてた人はいたらしいよ? でもなかなか上手くいかなかったらしい。 剣術の中に組み込めないんだ。 雷は遠距離攻撃に向いてるし、力なんてあっても剣の腕がなけりゃ意味はないしな。
(ライラ) 無属性の型は意味不明だし、斬っておいて、治癒というのは矛盾しているね。
(咲良) 傷ついている人を斬ったら怪我が治るとか?
(シャル)(ライラ) ないない。




