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残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
和歌山咲良と異世界を知ろう! 入門編
19/125

キャラバンの護衛をしよう SIDE 咲良

(シャル) たまには真面目にあらすじの紹介をしよう。 


(咲良) たまには?


(シャル) ククルの買い物に付き合う途中、サクラは自分の来ていた服のリボンを見つけた。 他のものが売られていたことにショックを受けつつも買ったリボンを手に新たな旅へと準備を進めるのだった。


(咲良) (前回の一件から立ち直ってよかった。)


(ククル) いや、あれはただ仕事で気を紛らわせているだけ


(シャル) あれ? 目から汗が……

「では、今後の日程について確認したいと思います」


仕切るのはレティシアではなくベルである。

彼女はテーブルの上に地図を広げた。

ちなみに私たちがいるのは「中央大陸」と呼ばれる大きな大陸の なかの「アイターリ」という国だそうだ。

大陸の半島にある、四方が海に面した国だ。

目指すはそこから北西に移動した「フランシス」という国の王都(多分首都のことだと思う)である「パリエ」という都市だそうだ。

目的地までは馬車の移動でおよそ10~15日くらいらしい。

これはスムーズに行く場合とそうじゃない場合があるから。


「パリエまでは前回と同様商人の運搬護衛しながら向かいます」


「今回はギルドのお墨付きをもらった信用できる相手だ。 もっとも複数の商人が徒党を組んで移動する隊商(キャラバン)だから変なことをしようもないんだけどね」


と、レティシアさんが付け加えた。

気にするのもわかる気がする。

何せこの街来るときの荷物運搬で良からぬものまで運ばされたのだから。

そして隊商にはやはり護衛がいる。

例えば盗賊、魔物をはじめとした野生の生物などなどなど。

馬車の数が多いと、荷物を持ち帰るのにも一苦労なうえ、逃げられる可能性があるので頭数が多い盗賊でないと襲ってはこないらしい。

よって、まず第一に魔物などへの警戒、対応ということになる。


「それから私たちのほかにもう二組パーティーが参加することになります」


「参加するパーティーはどんなパーティー?」


ライラちゃんがバビッと挙手をして尋ねる。


「パーティー名は聞いておりませんが一つは今年結成したばかりのパーティー、もう一つは結成五年目の中堅パーティーだそうです」


「ルーキー混じってんのか~ ちょっと大変かもな~」


シャルさんが肩をすくめる


「期間だけで言ったら私たちだってルーキーさ」


レティシアがそれを窘める。


「レティシア様のおっしゃる通りです。 任務中は仲良くしてくださいね。 絶対に揉め事は起こしてはいけません。 絶対ダメです。 わかりましたね‼」


「そんなことわかってるわよぉ」


「そんなに私たちだってバカじゃないし」


「めんどくさいことは遠慮したいしね」


「貴女たちに言ってるんです!」


クロエさん、トリナさん、ククルちゃん、この三人は他所様と揉め事を起こしやすい三人らしい。

相手をすぐ怒らせるクロエさんにすぐに怒るトリナさんに、子供であるから相手からなにかと目のつけられやすいククルちゃん。

確かに揉め事になりやすそう。


「なんか失礼なこと考えなかった?」


「いえ……そんなことは……」


ククルちゃん鋭い。


「出発は明日の午前9時頃だそうです。 集合場所は西側の馬車乗り場。 それまでに各自準備のうえ現地集合とします。 質問はありますか?」


誰も疑問を投げ掛けずそこで解散になった。




***




翌朝、朝食をシャルさんとライラちゃんととって、集合場所に向かった。

その道中、


「ねぇ、あんた! コボじゃないか?」


うしろから声を掛けられた。

私たちのこと?

コボなんていなかったけど……

振り返って見ると見たことのある顔だった。

私がまだ奴隷だった頃、一緒に働かされて,時に虐げられていた女性たち、その中の一人だ。

ちなみに名前は判らない。

だって言葉も通じなかったから会話もできなかったからね。


「ええっと…… その節はどうも……」


よそよそしいのもカンジ悪いけど、フランクになるほど仲良くもない。

どの距離感にすればいいのか。


「そんなに畏まるなよ。 知らない仲でもないんだし。 っていうかアンタ喋れたんじゃないか。 口がきけないんだと思ってた」


「ああ…… 外国から来ていたので言葉がわからなくて」


「外国って人類語はどこでも同じだろ?」


そうでした!


「まあ、なんでもいいさ。 アンタには感謝してるんだ。 あんな奴のもとで働かされるなんてごめんだからね」


「私は何も……ただ知り合いに助けてもらっただけで……」


何もしていない。

偶々レティシアさんと出会って助けてもらっただけだ。

その後のことにも全く絡んでいない。


「その知り合いがあいつらをとっちめてくれたのさ。 アンタ一人助かっただけでもうれしいのにさらにうれしいことがあるなんてさ」


私が解放されたことを喜んでくれていた。

そんな風に思ってくれてたんだ。


「アンタはこれからどうするんだい?」


「この人たちと一緒に行きます。 私を助けてくれた人のパーティーに入ったんです」


「ふーん」


「あの…… あなたは……?」


「サクラ、そろそろ行くよ」


シャルさんに呼び止められた。

もう時間だろうか。


「え? あ、はい」


「じゃあね、機会があったらいずれ」


そこでその人とは別れた。

良い人だったんだなぁ……

言葉が通じるならもっと話しができたのに。


「お前、多分騙されてるよ」


「僕もそう思う」


二人から思いもよらない言葉が飛び出た。

騙されてる?

なんで?


「僕らがライネル家の屋敷に言った時のこと覚えてる? あの時屋敷の奴隷たち凄い顔でサクラのこと見てたよ?」


そうなの?

あの時は緊張してて周りに気を配る余裕すらなかったからなぁ。


「あと、あの女の人、まだ奴隷から解放されてない。 首輪してただろう?」


え?

確かに首輪してた。

出会った時からしてたから全然気にならなかった。


「何でですか? だって……」


「奴隷なる理由は二つある」


そう言ってシャルさんが指を二本立てた。


「一つ、何かしら犯罪を犯して奴隷堕ちの刑になった場合。 二つ、身柄を奴隷として売った場合。 借金が返せなくなったとか、口減らしと生活の為に子を売るってこともある」


一つ目はともかく、二つ目に関しては信じられない。

生活のために子供を売る?


「それがまかり通る世界だよ。 ここは」


常識が違う。

何度も身をもって体験したことだけど、これはさすがにキツイ。


「お前が解放されたのは違法に奴隷にされたから。 そうじゃないなら、奴隷として別の誰かの所有物になる。 いい人ならいいんだけどね」


「私が騙されているっていうのは?」


なんとなく答えは想像がつく。

けれどもそうじゃないとも思いたい。


「お前だけが奴隷の身分じゃなくなった。 正当な理由があるにしろあの女の心中は穏やかじゃないだろうね。 あの笑顔の裏にどんな表情を隠していたのやら」


そう言われると怖くなった。

なんであなたはこれからどうするなんて聞いちゃったんだろう。

あれじゃ嫌味だ。


「ハァー」


私は深くため息をついた。




                      ***




 集合場所に行くと、もうみんな集まっていた。

 まだ10分前なんだけどなぁ。


 「皆さま揃ったようですので、これから出発したいと思います。 わたくしはヴェルデ商会のアルフォンソ、今回のキャラバンではわたくしが便宜上リーダーということになります。 どうぞよろしく」


 そう言ってアルフォンソという白髪の初老の男性が頭を下げた。


 「それから、こちらが我々と行動するブランコ商会、ロッソ商会、マローネ商会、ビオラ商会の皆さんとそれぞれの馬車を引く御者の方々です」

  

 「我々も自己紹介しよう。 俺たちはパーティー《天駆の鷲》、リーダーのシルヴァだよろしく。

それからこっちが俺の仲間、右から小人族のリング、虎の獣人族のライド、あとディーヴァとフィラは人族だ」


 シルヴァさんとリングさんは二十代真ん中、あとの三人は十代後半か二十代前半あたり。

ちなみにディーヴァさんは女性だった。


 「《蒼き守護者》のボルトだ! 仲間は右からブレイズ、ロブ、エイダ、ウィズ全員人族だ」


 こちらは多分全員私と同じくらいの年齢だった。

 エイダさんとウィズさんは女性である。


 「《銀色の狼》リーダーのレティシアだ」


 「なんか小さいな! 何歳だ!」


 ボルト君が話しかける。

 それに対しレティシアさんは少しムッとしながらも


 「17」


 「やっぱ年下か! でも17にも見えねー!」


 人の話を遮るのは17歳以上の人間としていかがなものかと思う。

 まして小バカにするなんて。

 脇を見ればみんな顔を伏せて震えていた。

 怒っているのだろうか。


 (だめだ、笑っちゃだめだ)


 (笑ったら殺されてまう!!)


 ジュリさんとライラちゃんは表情を変えないまま。

 ベルさんは笑顔だ。

 でも絶対心の中では笑ってない。

すさまじく怖い。


 「話をもどしてもいいか? こっちがベルで…………」


 かくして顔合わせは終わった。

 個人的な感触で言えば《天駆の鷲》の人たちの印象は良く、《蒼き守護者》の印象は悪い。

 そんな感じ。

 何はともあれ、馬車はパリエへと向かった。

(ベル) あの男! レティシア様を侮辱して!


(レティシア) そう怒るな。 背が低いのは事実だ。 いちいち腹を立てないのが大人というものだ。


(ベル) なるほど! 流石レティシア様です!!


…………


(レティシア) ハリィ、どうやったら背が伸びるだろうか? 


(ハリィ) 腹立てないんと違うんかい


(レティシア) 戦闘では高い身長のほうが有利だと思ったからだ。 言われて気にしたわけではない。 絶対にない。

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