買い物をしよう SIDE 咲良
(サリア) 前回のあらすじだ! みんなでお風呂に入って親睦を深めたぞ!
(レティシア) 仲良くなったなら何よりだよ。
(サリア) レティも一緒に入ればよかったのに。
(レティシア) いやだよ。 確かにこんななりでも私は男子だがね。 だからと言って、女の身体であることにかこつけて男性としての欲を出して女性の裸を見るというのは人としてよろしくない。
(ベル) そんな!! 殿方としての肉欲ならいくらでもわたくしに……
(サリア) 入ってくんな変態!
翌日の朝。
「これより、一連の仕事に対する報酬を分配する!!」
わ―、と喜ぶ声が多少上がる。
「今からそれやるなんてまた随分時間かかったわねぇ」
一連の仕事とはつまり荷物の運搬とそれに見せかけその実怪しげな薬品の運搬の片棒を担がされたこと、その下手人のアズーロ親子をひっとらえるのに協力したこと、ついでに街に現れた吸血鬼を討伐したことへの報酬のことである。
一応、荷物運搬に関しては知らなかったとはいえ違法なので報酬は受け取らなかった。
が、そんな依頼を受注し、斡旋したということでギルドが慰謝料をくれたらしい。
「咲良にも一応説明しておこう。 わがパーティーでは基本的に報酬などの分配は平等ということになっている。 ただし、一切参加していない者に関してはカウントしない」
金銭のやり取りって後でもめそうだもんね、完全に分配すると決めてしまえばそうはならないか。
しかし……
「でもさぁ……」
シャルさんは何か引っかかっているらしい
「うん……」
みんな事の重大さに気づいたらしい。
「「「「「11で割るの?」」」」」
「あ……」
11は素数なのでそれで割るというのは非常にややこしい。
絶対余りが出る。
「問題ない、我々には文明の利器がある!」
そう言ってレティシアさんが取り出したのは!!
「算盤だ……」
算盤でした。
算盤あるんだね異世界にも。
確かにこれなら11等分に……
ん?
「私も勘定に入ってます?」
「そりゃそうだ。 お前も仲間になったのだから」
「私の分はいいですよ、全く貢献してないですよね?」
私がレティシアさんたちと出会ったのはすでに荷物運びの護衛を済ませた後。
よってその仕事にはかかわっていない。
それから、ライネル家の悪事を暴き、捕らえたことへの報酬。
これもまた私は何もしていない。
むしろハリィさんに守られてしまった格好だ。
最後の吸血鬼。
一応時間稼ぎとして貢献したかもしれないが果たして本当にそうなのか正直自身はない。
そもそも、私がこのパーティーに入ったのはその後なので報酬を受け取るわけにはいかないんじゃなかろうか。
とかなんとか考えていると。
「そういうこと言うと後で揉めるから、平等に分けるって言ってんでしょ!!」
そう言ったトリナさんに両方の頬を引っ張られる。
「やっはいわういえふよぅ」
「なんて!?」
「やっぱり悪いですよ、じゃないかな多分」
流石、ライラちゃん、伊達に私の通訳やってない。
っていうかいい加減離してください。
マジで痛い。
「ハァ……じゃあこうしよう。 咲良が加入したのはことがすべて起こった後だ。 なのでチームとしての報酬は無し。 ただし、吸血鬼との戦いで我々を助けてくれたのでその分のお礼はしよう。 ということで今回に限り報酬は10等分して、端数を君に渡そう」
10等分して端数って出るっけ?
「とりあえず報酬を全員が同じ量だけ分ける。 で、余った分は君に」
はい、と手に渡された報酬は銀貨二枚と銅貨数枚だった。
これにいかほどの価値があるというのか、その辺の常識は教わってない。
街に行けば分かるか。
「とりあえずこの街で仕事は終わった、報酬も分けた、怪我人も無事全員帰ってきた。 ということで、パルエに一度帰ろうと思うんだがどうかな?」
「異議なし」
誰からも異論はなかったので、パルエなるところに帰るらしい。
私はそれがどこかは知らない。
移動日は明後日になったのでそれまでの間に準備を行うことになった。
と言っても私はその身一つなので準備も何もない。
なのでなんとなく手持無沙汰でもらった銀貨と銅貨を両手でいじっていた。
「初めてもらったお小遣いにはしゃいでる子供的みたいやのぅ?」
背中越しにハリィさんの悪戯っぽい顔が見える。
「違いますよ。 やることがなくて手持無沙汰なだけです。 なんか手伝うことあります?」
「うーん、特にないせよ。 ウチらもここに住み着いとった訳じゃないきに」
引っ越しするみたいに大がかりじゃないってことか。
いうなれば旅行、あるいはおばあちゃん家に帰省するがごとし。
「暇なら街に行ってみたらどうぜよ? お給金も貰っとるし」
街にか、気分転換にはいいかもしれない。
***
吸血鬼騒動から一か月たってるだけあって、街は比較的穏やか、というか活気に満ち溢れている。
「この辺は商店街なんですかね」
「そうだね。 食料、雑貨、服など等々…… どっかのボンボンがいなくなったおかげでみんな自由に商売できてるねー」
「……あの、何か用かな? ずっとついてきてるけど」
後ろにいるのはククルちゃんだ。
宿を出るところからずっとついてきた。
「実はー 街で買い物したかったんだけどー 思いの外荷物いっぱいになっちゃいそうで―」
「つまり?」
「運ぶの手伝って?」
顔の前で手を組んで天使のスマイル。
まあ、子供の頼みは断れないよね、普通。
そうだよね?ね?
運ぶのが大変だというから何かと思ったら、ククルちゃんが研究に使う者らしい。
木箱に入っていてそれが三つ。
きっちり封がされていて中身は判らない。
いや、隙間からいけるか?
「見てもいいけど、サクラ卒倒しちゃうかもよ?」
と、言われたのでやめます。
木箱にはストラップがついていて、肩にかけることができた。
クーラーボックス位の箱が三つ。
一つはククルちゃんが持って、もう二つは私が両肩にかける。
そんなに重くないけど……マジで中身なんだ?
「付き合ってもらっちゃって何だけど、サクラは行くところないの?」
「うーん、そう言っても……あれ?」
何か見慣れたものを視界の端で捉えた。
再び視界をもどすと、見せ棚の上に私の制服のリボンが置かれていた。
制服の胸元に結ぶアレ。
リボンの端っこに学校の名前と校章があるから間違いない。
「あの、このリボンって?」
店の店主の男性に尋ねた。
「どっかの金持ちの使用人が売ってきたんだよ。 服一式。 何処で作られたのか伸びる生地を使っててねぇ。 それなりに高かったが、まぁそれ以上の値で売れたからこっちとしても大儲けさ」
「ではこれは……」
「売れ残りだよ。 リボンなんて別に珍しくもないしねぇ。 買うならお安くしとくよ」
シャツやら上着やらは売られてしまったらしい、別に愛着があった訳じゃないけど、売られたとわかるとそれはそれで寂しい。
ともかく、初めてのお給金の使い道は決まった。
「そんなリボン買ってどうするの?」
「どうしよう……」
買ったはいいが、扱いに困ってしまった。
選択肢としては服につけるか頭につけるか……
元いた世界では髪の毛をヘアゴムで結わえていたからそれの代わりにしようか。
店主の口ぶりだと多分ヘアゴムも売れたんだろう。
とはいえ……
髪をリボンでまとめると……
「ぶりっ子みたいでヤだなー」
「そう? 似合ってるんじゃない?」
「うーん、でもなー」
鏡なんてものは手元にはないので噴水を覗いて見ている。
何度見ても似合わない気がする……
「じゃあこういうのはどう?」
ククルちゃんが提案してきたのは鉢巻のように頭に巻くスタイル。
「「ないな」」
首に巻いてスカーフっぽく
「く、苦しい……」
「いまいち」
首絞めといて何それ?
「じゃあこれは?」
上腕に巻いてみた。
ゲームキャプテンみたい。
「でもこれなら……」
「盗賊の一味見たいでしょ?」
「言い方」
でもこれがいいかな、カッコいいし。
「気に入ったなら良かった。 さ、お昼食べに行こう?」
そう言ってツカツカ歩き始めてしまった。
慌てて荷物を肩にかけて後を追う。
一度意識すると髪の後ろが何か気になったので、昼食後に髪を結ぶ紐を買ってポニーテールにすることにした。
(ククル) 前の世界ではどんな髪型だったの?
(咲良) ほとんどポニーテールだったね。 中学のころは三つ編みにしてから縛ってみたり、お団子にしたり
(ククル) うへぇ…… めんどくさそう……
(咲良) ククルちゃんはもう少しそう言うことに目を向けたほうがいいんじゃない? 何にもしてないでしょ?
(ククル) 研究者にそんなものは必要ない!
(咲良) 女の子の身だしなみとしてさぁ……
(シャル) そうだよ~ お前はまだまだこれから女としての魅力が増えるかもしれないんだからな~ 主に肉付きとかで……
(咲良) シャルさん!?
(ククル) まさか前回からずっと……?
(シャル) つーるーぺーたーのー(泣)




