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残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
第一部 ハローワールド
13/125

ハローワールド 前編

前回のあらすじ


半分に切って焼いて保存加工した。


(ジュリ) 料理か

金属化して封印されたという吸血鬼は憲兵隊が持って行った。

その先はレティシアたちでも与り知らないところである。

多分、簡単には目覚めず、人界にもかなかなか出て来れないように封印されているのだろう。

兎に角、吸血鬼の騒動は収まった訳で街には平和が戻った。

さらにあのライネル親子が捕まったことで芋ズル式に悪い奴らが捕まり、結果治安も良くなった。

親子ともども悪い奴らと仲良しだったらしい。

さりとて、《銀色の狼》としても全くの無傷とは行かなかった。

具体的に言うと


シャル:全治約2週間

ハリィ:同上

サリア:怪我は無し、しかし足の損壊で戦闘不可

トリナ:最も重症で全治約一か月半


四人は負傷後、すぐさまククルによって迅速な治療が行われている。

フッ飛ばされましただの、複雑骨折しただの普通であれば全治数か月、下手すれば後遺症が残る恐れすらあった訳でそうならなかったところが治癒魔法のすごいところである。

しかし、治癒魔法も万能ではない。

例えば骨折の場合、折れた骨をつないで治すわけなのだが、これはいわゆる仮止めの状態である。

接着剤を付けてもすぐにはくっついてくれないのと同じである。

なので、負傷が治ったからと言って無理はできないし、まして戦闘行為を行うとなればなおさらである。

ちなみに先ほどの全治とは、冒険者として活動できるまでの期間という意味である。

怪我の完治自体はもう少し早いが、その後のリハビリなども含んでいるのである。

という訳で


「しばらくこの町に滞在することになった。

とりあえず一か月前後かな。

そのころには全員退院しているだろう」


「一か月もいらない! 半月で治す!」


「無理だよ、一番重症なのに。

あとここ治療院だから静かに」


「……はい」


12歳に一喝されて黙る16歳。


「別に無理することないさ、リハビリは別にここじゃなくてもいいから、とりあえず一か月くらいはここに滞在しようか」


三人のお見舞いにはククルとレティシアしか来ていない。

大人数だとやっぱり迷惑が掛かりそうなので。

それからサリアの怪我というか損壊はここでは修理不可能なので放置である。


「だから半月で……」


「「無理だっつーの」」




***




さて、前日レティシアに突き放されてしまった咲良だが、今でもレティシアたちの泊まった宿にいた。

あの後、なし崩し的に流れでレティシアたちと同じ宿に再び連れてこられた。

吸血鬼による一連の騒動で街はその処理で精いっぱいで忙しく、流石に咲良がそこで自身の生活をどうにかするのは難しい。

それに咲良の行動は一応シャルの命を救っていたかもしれないので、その分の借り、というには大げさかもしれないが義理くらいは果たそうということである。

そのまま、今まで皆と同じ部屋に滞在している訳である。

そんなレティシアは帰宅後、どこからかテニスボールより一回り位大きい水晶を取り出した。

レティシアが水晶に魔力を込めると水晶が光り出した。


『あの…… あれって何ですか?』


隣のライラに水晶のことを聞く。


『あれは遠隔連絡用の魔法具。

遠く離れた場所の相手とも会話ができる。

あなた達の世界にも似たものがあると聞いた』


『ああ……』


多分、電話とかそういう類なのだろう。


「うん? 繋がらないな」


「おかしいですね。 もう11時だというのに

レティシア様故障ですか?」


「機材に異常はないな…… 魔法具音痴なくせにこういう最新アイテム導入するんだから……」


「あ、映りましたよ。 レティシア様」


光だした水晶から上方に薄い光の膜のようなものが展開され、そこに何かが映り始めた。


『電話は電話でもテレビ電話だ……』


『そうそう、レティもそのようなことを言ってた』


映り出した映像には、人の顔が、正確には右目付近が映し出された。


《あれ=? これどうやるんだ? セッターめ、説明下手だなアイツ》


「もう映ってるぞセリーナ だからもう少し顔をそれから離せ」


《お? 本当かい? よいしょ、 あ、映ってる映ってる。

やあやあ、みんな久しぶり》


そう言いつつ、映像の人物が距離を離すと、上半身あたりが見えるようになった。

映った人物は、黒髪ロングのやや釣り目の女性だった。

笑顔で右手をヒラヒラするあたりなんとも人当たりがよさそうである。


『セリーナ=プリメール、私たちが所属している《戦女神の瞳》というクランのリーダー。

個人としての実力はこの世界でも指折りで間違いなく十傑に入ると思う』


ライラが教えてくれた。

見たところ穏やかそうで、とてもそんなに強そうな人には咲良には見えなかった。


『ちなみに彼女は吸血鬼なんだ』


『あ、人じゃなかったんですね』


『それも真祖クラス、昨日の奴なんて足元にも及ばないだろうね』


『へぇ……』


(人は見かけによらないんだなぁ…… 人じゃないか)


《レティシア! 相変わらず仏頂面だな! 背は伸びたかい?》


「喧しい! ほっとけ」


《みんなも…… あれ? 君たちこんなに少ないっけ?》


「いろいろあったんだよ」


レティシアに吸血鬼にまつわる一連の出来事を話した。

そのせいで負傷者が出てしまったことも。


《ふーん。 大変だったなー まあいいさ全員無事だったわけだし。

とはいえ、中級相手に四人も治療院送りになったのはちょっと良くないがね》





「ハイハイ、悪かったよ。 もう一度気は引き締めておく。

そんなことより本題に入ろう。 依頼があった積み荷にはやはり変なものが入ってた。

正確に言えば紛れ込ませようとしていた」


《キキリクの花、いやそこから精製された薬かな》


「知ってたのか?」


《いや、それに気づいたのはつい最近だ。 キミに言われて依頼人の背後関係を調べてみたところ出てきた。 と言っても相当苦労したみたいだよ? スタークに後でお礼の酒でも送っておくといい》


アズーロが何かよからぬ物を運ばせようとしているのではないか、という疑念はあったが如何せん確かめられなかった。

そもそも荷車を二重底にして薬を仕込み、その上に何もなかったように普通の荷物を積んだのだから、調べるとなると荷物を一からひっくり返さなければならず、流石にそこまで大事にするには根拠がなかった。

だから、荷物は運び依頼人の背後関係を洗ってもらうことにした。

尤も一日遅かったが。


「申し訳なかったな。 いろいろと面倒なことをさせて…… お前は何もしてなさそうだけど」


《適材適所だよ。 僕に密偵の真似事は無理だ。 ああそれから調査の途中で薬の生成場がしこたま見つかったからクロムとナイトレイが根絶やしにした。 仕返ししてくる奴らもね。 おかげで国からお礼状ももらったよホラ》


そう言ってセリーナは上着の内ポケットから書状を取りだした。


「それは良かったな」


《だね、君らが巻き込まれて一緒に逮捕されないか心配だったが、結果で見れば予想以上の成果だね。 御苦労様。 けが人がいるってことはまだしばらくそこに滞在するのかな?》


「そうなるな」


《ま、最近忙しかったしゆっくり休むのもいいんじゃないかな? と、言うことでこの話もおしまい。 ところで……》


「ん? なんだ?」


《ライラとヒソヒソ会話してる彼女は誰? 新入りかい?》


「違う。 前話したことがあっただろう。 私が生まれる前のかつての顔なじみだよ。 奴隷として違法にアズーロの息子に飼われてた」


《ああ、また見つかったのか。 しかし、珍しいね、君が助けたなんて》


「成り行きでな、素人でも例の吸血鬼との戦いで助けられたのからわからないものだよ」


《へえ…… 彼女も異世界から来てそのままライネル家の奴隷になったのだからきっと今は宿無し職なしだね?》


「そうだろうな」


《じゃあ、君たちのパーティに入れてやるといい》


「はあ!?」


急に話題に上った咲良はと言えば、やっぱり言葉がわからないまま、全員の視線を集めることとなるのだった。

(咲良) 魔法具って何ですか?


(ライラ) 魔力を込めるだけで魔法が発動できるアイテムのことだよ。 特定の魔法しか発動できないけど魔力を込めるだけでいいから使うのは楽だよ。


(シャル) 私の刀も魔法具だよ


(ククル) 入院中だという状況くらい守ってよ

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