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残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
夏の終わりに
123/125

サリアとライラ(+α)の休日 3

今回は少し少な目。


本当はもっと入れたいことがあったけれど、このままだと収まりきらなくなるので。

書きたいことがありすぎるのだ~

 私の脳裏に浮かんだのはあるパーティーのメンバー。

 料理上手で、大っぴらには言えないが異世界から来たという過去の持ち主。

 二人はこの食堂の窮地を救うために彼女を助っ人として呼ぶことに決めた。

 





 そう、大和理名を―――


 「いやどうしてその話の流れで私を招集するっていう話になるんですか?」


 この世界とは異なる世界からやってきた異世界人。

 パーティーメンバーの和歌山咲良の友人。

 紆余曲折あって彼女はいま、ミレッジ家の使用人として働いている。


 「本当はサクラを呼びたかったんだけどダンジョンに言ってたの忘れててさ……」


 申し訳ない!

 そう言って両手を合わせるサリアをジト目で恨みがましく見つめながら、ライラより事の顛末を聞く。

 理名も招集と言ってはいるが、実際はサリアに担がれてここまで運ばれていたに過ぎない。

 たまたま近くにいたアビーに理名を借りる旨伝えたとはいえ、それがなければ誘拐である。

 それに、話を聞けば聞くほど、理名の専門外であるような気がするのだ。


 「そりゃ私だってメイドやってますから料理することもありますけど、専門的なスキルあるわけじゃありませんしヘックスさんの言うこと聞いてるだけですよ?」


 「それでもかまわない。 腕に関してはこちらの店主が居れば大丈夫。 貴女にもらいたいのはアイデア。 そちらの世界にしかない料理とかお店の形態は無い?」


 「そう言われても……」


 理名は考える。

 この世界に無く、自分たちの世界にあった物もの……


 「一番は米食関係なんでしょうけど……」


 「悪いが米はねぇな。 この国で栽培してるって話は聞いたことが無い」


 「僕もない。 砂漠を超えたもっと東の大国や島国ならあるという噂も聞くけれど……」


 「あることはあるんだ……」


 ヨーロッパに近いこの世界ではまず米食に出会うことはないと一切口に出すことはなかったのだ。

 しかし、存在自体はしているようであるからもしかしたら入手もできるかもしれないと理名は考えた。

 

 (東の国と言うとシャンレイちゃんとかシノブさんとかトキさんあたりかな……確かにアジアっぽい顔ではあるけど…… その辺は考えたことも聞いたこともなかったな)


 あまり昔のことを言いたがらない面々が多いが、食文化くらいは……と理名は考えた。

 が、今はこちらの問題の解決が先である。


 (こっちの世界に来るまであんまり料理したことなかったんだよな…… どっちかっていうとファストフードとかのほうが……)


 「あ」


 「何か思いついた?」


 「ビーフシチュー一番人気なんですよね? それとパンを組み合わせて……」


 それは確かにこの世界にない発想であった。

 おまけにこの方法を使えば売り上げが伸びるかもしれない。


 一つ思いつくと他にもアイデアが思いついてくる。

 

 「よし、これで行こう。 あとは準備か……」


 「結構仕込みに時間かかりそうだな……どうせ客なんて来ないし今日はだいぶ早いが店を閉めちまおう」


 「こっちもお嬢様に手伝い頼んでみます。 それから……」


 理名はサリアを熱い眼差しで見つめる。


 「な、なんだい?」


 「協力してくれますよね?」


 「あ、ああ……勿論じゃないか……」


 サリアとしては自分が事の発端であるので端から協力する気満々であったのだが……

 なぜだろう?

 本能か何かはわからないが危機を伝えている。

 その先は地獄、踏み入れれば戻れない……と。


 それでもサリアは首を縦に振るほかない。

 きっと気のせいだ、無理矢理自分をそう思い込ませて。


 食堂の生き残りを賭けた準備は多くの人間を巻き込み、夜遅くまで続いた。




***




 翌日―――




 オリヴィエという男は経営者としては優秀な男であった。

 アイタール王国モルソン商会の経営する「リストランテ」の王都支部を任されていた。

 商会にとって初めての国外での出店、当然失敗は許されず、それを任されたオリヴィエの肩にかかる責任の重さと、商会の期待の大きさは当人が一番自覚していることだった。

 さて、オリヴィエはリストランテの運営のほかにもう一つ重要な仕事を任されていた。


 商会長モルソンの一人娘、クラエス・モリソンのお目付け役である。

 子供がクラエス一人しかいなかったモルソン家では親子仲の良し悪しに関係なく、その存在が重要となる。

 特に彼女の実の父親である会長は彼女をかわいがるだけでなく、その商才を高く買っていた。

 今回の国外出店への同行も実地で学ばせるという意図があったのだろう。

 それから一年後、オープンした三店舗の経営が軌道に乗り、四店舗目のオープンが計画されていたころ、クラエスはある食堂に足繁く通っているという情報をオリヴィエは耳にした。

 普段の彼女の食生活や好みを考えてもそれはあり得ないことであったのだが、オリヴィエがこっそりその食堂を訪れた時に彼はすべてを察した。

 勝てない、と思った。

 少なくとも料理の出来では、の話である。

 客の回転率や各店舗での味の均質化を重んじているとはいえ、そのクオリティを蔑ろにしたことは一度もなかった。

 料理の製造工程をマニュアル化しているから確かに極上の料理だなんていうつもりはない。

 が、街の人間が通うには十分なレベルではあった。

 それに対し、この食堂はどうか?

 こと料理のクオリティに関しては完敗、言い訳もできない。

 きっと優れた才能を持っていたのだろう。

 きっと研究に研究を重ねたのだろう。

 そんな店主がかけた時間と才能のすごさがオリヴィエにはわかってしまった。

 だからクラエスが店主を手中に収めようとしていると知り、納得し応援したいと思ったと同時に嫉妬もした。

 まるで自分たちの出している料理があの食堂のそれには全く届かないと言われたような気がしたのだ。

 クラエスはアイタールにいる彼女の父親によるものと思っていたが実際はオリヴィエの対抗意識による出店だった。

 料理の腕だけでは生き残れないぞ、そう言いたかっただけだった。

 自分たちのほうが上だと証明したかった。

 稚拙な理由だがただそれだけであった。


 そしてオリヴィエの目論見はうまくいき、食堂はもう風前の灯火……そのはずだったのに。

 彼が昼前、食堂の隣にある店舗を様子見しに行ったとき、その光景に目を見張った。

 相変わらず自分の店には長蛇の列ができている。

 だが、それと同じ、とまではいかなくても隣の店にも行列ができている。

 こんなことは出店前にも無かったことだ。

 

 「一体何が起こったんだ……?」


 オリヴィエは必死に可能性を探る、がどれだけ思案しても答えは見つからない。


 まさか異世界の存在なんて知りようもないことなのだから。

*来週は更新をお休みします

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