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残酷で美しい異世界より  作者: 狼森エイキ
夏の終わりに
118/125

レティシアとベルの休日 2

※くどいようですが作中は夏が終わるくらいです。 現実にはもう春みたいな気候ですが。 おかしい、こんな長編になる予定じゃなかったのに。

 ララから彼女たちが奴隷以上にひどい扱いを受けて働かされているということを聞き出したレティシアとベル。

 しかし、ララはもう一つ興味深い話を持っていた。


 「「ライオン?」」


 二人がそう聞き返すと、ララはうなずいて続けた。


 「おとこのひとたち、らいおんのまーく、うでにかいてました。 あと、おやしきのかべとかも」


 腕に書いていた、というのはおそらく刺青のことだろう。

 そして同じ模様が屋敷中にあったらしい。

 それの意味するところは


 「家紋か……ちょっと大きな家ならどこでもあるだろうが……そこの人間が刺青までするようでは奴ら堅気じゃないな」


 「であれば男たちが武装していたのも納得です。 そもそも、働かせている人間の扱いを考えればそれもさもありなんといったところでしょうか」


 「だな、家紋さえわかればこちらのものだ、さしあたってはそういうのを知ってるところに聞きに行こう」




***




 「で、なんでうち(ギルド)に来るんですか?」


 「刺青に家紋入れるなんてマフィアのやることだ。 その辺の事情もギルドなら詳しいんじゃないかと思ってね」


 不満を漏らしたのはギルドの職員の女性である。

 ダンジョンに潜るときに行方不明者が多いなぁ……なんて漏らしてこっそりレティシアたちにその捜索をさせたあの職員である。

 たまたま≪銀色の狼≫の対応をすることが多かったせいか、いつの間にやらギルド内で「≪銀色の狼≫はこの人に」的な認識をされていた。

 本人は別にほかの冒険者と同じような対応をしていたにも関わらず、である。

 もっとも≪戦女神の瞳≫という超強豪クランに所属するパーティーや冒険者に飾り気なしに対応できるだけその胆力は尊敬できると言えるかもしれない。


 「で? どうなんだ? さすがにライオンの家紋ってだけじゃ厳しいか?」


 そう問うたレティシアに対し、受付嬢は首を横に振る。


 「いいえ。 さすがにデザインを見ないことには断言はできませんが、まぁ十中八九『リヨン・ファミリー』のものとみていいでしょう。 小さいですが歴史は古く、王都で幅を利かせているマフィアです」


 「そんな奴らが子供を奴隷以下の扱いで働かせてると」


 「人身売買もやってるらしいですよ。 本来は国から許可された商人しかやってはいけないので裏の商売ですね。 あとはイケないお薬とか武器の販売とか…… もちろん全部裏ですけど」


 奴隷は奴隷商しか売買できないわけだが、案外裏での取引も少なくない。

 奴隷商は人であれば何だって買い取るわけではないのである。

 労働力、戦闘力、容姿、年齢……少なくとも幼い子供ではそれらの条件を満たすのは厳しい。

 が、親は口減らしとして一番役に立たない幼子を捨てたい。

 足元を見られて安く買いたたかれるだろうが、タダよりましであるから、ある意味で両者はwin-winの関係であった。

 そして結局、そういう幼子は裏に流される、おそらくララのこれまでの経緯もそういうところだろう。

 リヨン・ファミリーというマフィアはおそらくララからこのようにそう裏の事実が露見するのを恐れていたのだろう。

 だから武力行使も厭わなかった。


 「ちなみに表向きの商売もやってますよ。 飲食店経営、鍛冶工房、廻船問屋……これは所謂シノギってやつですね。 結構有名です」


 「そうやって裏と表を使い分けて長生きしてたわけか」


 いわゆる昔ながらのヤ〇ザといったところか。


 「そんなところです。 そして、そういうところは権力とも仲良しなんですよね」


 「ほう?」


 レティシアが先を続けろ、とばかりに眉を吊り上げる。


 「お友達の筆頭は貴方たちもご存知のドロル公爵です」


 「え~……」


 その名を聞いた時にレティシアの表情は誰が見てもうんざり、と書いてあるようであった。


 ドロル侯爵、レティシアおよびディーナ=ミレッジと対決していた貴族であり、国に逮捕された後、病死した。

 にもかかわらず、こうして死後も彼女たちに首を突っ込んでくる。


 「ある意味侯爵が手綱を握っていた面はあるのですが、それが無くなりましたからね。 おかげで勝手し始めたり、こうして手段を選ばなくなったわけです」


 言外に「お前らが侯爵と喧嘩して勝っちゃったせいやんけ」と言いたいのだろうか。


 「侯爵は病死だと聞いたぞ。 捕縛されて心労が重なったにしても早晩ポックリ言ってたんじゃないのか?」


 「ああ、侯爵は病死じゃありません、暗殺です」


 「「はぁ!?」」


 「!?」


 レティシアとベルのあまりに大きな声にララはビクつき、周りにいた冒険者連中からも思いっきり視線が飛ばされる。

 ずいぶん目立つことをしてしまったと反省し、小声で受付嬢に詰め寄る。

 もし、彼女の話が本当なら、なかなか厄介な話になるかもしれないからだ。

 暗殺が公には病死とされている、つまり国がそれを隠したということになる。

 問題はその理由だ。


 「別にそこまでややこしい話でもないんです。 王城にいた女中の一人がこっそり地下牢に行って侯爵を殺した。 そのあと女中は自害したので詳しい理由は不明ですが。 両親が両方とも殺されているとのことでその辺が理由ではないかと。 王城なら侯爵も頻繁に出入りしてますから、最初からそのつもりで就職している可能性はありますね」


 さすがに侯爵に直接雇われたのではその出自から警戒される可能性がある。

 それに比べれば……とは考えられるが、ずいぶん時間はかかるだろう。

 執念というほかあるまい。


 「で、それが表に出ず病死なんてことになった理由は?」


 「王城で暗殺、それも身内の犯行なんて言えるわけありません。 口封じなんて思われたら最悪ですし、そもそもセキュリティが不安視されます。 なのでこの事実は国王も知らない本当にごく一部しか知らない話です」


 なので他言無用ですよ?と結んだ受付嬢を、二人はドン引きで見ていた。


 「その『国王も知らない本当にごく一部しか知らない』話を何で知ってるんだよ……」


 「企業秘密です」


 そりゃ情報のソース元を明かすわけはないのだが、そもそもそういう国の機密事項が必要になる企業ってなんやねん、という話である。

 少なくとも一介の受付嬢には不要、というか抱えるには重すぎる案件だろう。

 なるほど≪銀色の狼≫の対応を任されるだけあってただの受付嬢ではなかったわけだ。


 「話を戻す。 つまりなんだ? 権力者と仲が良いから手を出すな、そういうことか?」


 おそらくリヨン・ファミリーが潰されるとなると、割を食う人間がごまんといるのだろう。

 そういうやつが権力を持っているのだとしたら、レティシアたちやギルドにも影響するかもしれないのだ。


 「いえいえ、ギルドはあくまで国や貴族という枠から外れた組織。 よい隣人ではあってもよい友人にはなりえません。 そもそもこの一件には彼らは関わっていないことになってますから」


 「そりゃ表立っては言えないだろうな」


 「ですからこの件でギルドが割を食うことはないでしょうし、無理矢理食わす奴らを捌くくらいはできます。 そちらのクランも同じでしょう?」


 「それはそうだろうな」


 そもそもドロル侯爵と渡り合ったディーナや≪銀色の狼≫とやりあおうという貴族はそうそう出てくるまい。

 正確に言えば、ちょっかいをかけたがる奴はいるだろうし、後々来るだろうが、現状侯爵の逮捕そして死でまず自分たちの立場をどうにかするほうが一大事だろう。

 自分の地位が脅かされる可能性もあるし、これを機に上を狙い侯爵の地位にとって代わろうという貴族も多いはずだ。

 だから今ずぐ何か影響を受けるということはなさそうだ。


 「なのであとは両者の契約次第ということですね」


 「両者って……」


 両者とは依頼人と受ける冒険者、この場合はレティシアとララということになる。

 レティシアは抱いていたララを下ろし、しゃがんで同じ目線となった。

 それはララと自分が対等であることを示していた。


 「改めて聞く。 君は私たちに何を依頼したい?」


 それは改めて聞くにはあまりにもシンプルな問いだった。

 だが、そのあまりに真剣な眼差しにララは一瞬たじろぐ。

 だが、すぐにレティシアに視線を戻し、拙いながらもはっきりこう答えた。


 「おねがいします。 みんなをたすけてください」

(ベル) (二人で子供を連れだって行動する……まるで家族のようです)

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