91.決死行
時間が経てば経つほど不利になってしまう。躊躇っている暇はない、すぐに行動を開始しなければ。
尻尾の先の剣状になっている部分を取り外して左手に持ち、手との間に魔力をギリギリまで溜めて力を緩める。すると尻尾の先は勢いよく手から射出された。
(よし、成功!)
原理は《飛骨拳》と同じだ。狙った通りにオーガキングは初見の攻撃を警戒して対処する。僅かな時間だが、これで前に出るきっかけができた。
すぐに魔力加速も使って前へ、みるみるうちに距離が縮まる。同時に剣に魔力を流して魔法の準備をする。剣に闇が渦巻く。これを当てれば勝ちだ。
射出した骨を迎撃したオーガキングが再度攻撃をしてくるが止まらずに進む。回避は最小限、多少の被弾は無視する。肋骨の一部が吹き飛び、頭蓋骨に掠って削れる。顎も外れて落ちた。それでもオーガキングへと向かう。
止まらない俺を見て、オーガキングはやり方を変えてきた。足元が沼のように変化する。さっき見た拘束の魔法だ。足が絡めとられるが、膝から下を切り離して魔力加速で進む。止まらない。
もう一度同じように足を切り捨てて加速、オーガキングの目前まで辿り着いた。そのまま空中で剣を振りかぶる。オーガキングは魔法に特化しているからか反応は遅い。
だがあと一歩のところで《直感》に反応、すぐに《鋼の骨格》を起動して防御する。直後に衝撃が襲い、体が欠けていく。ファイターの投石だ。俺が迫ったときに備えさせていたのだろう。
地面を転がる俺を見て、オーガキングは笑っていた。決死の特攻を止めて完全に勝ちを確信したのだろう。
(まだ終わってねえよ!)
地面に左手をつく。角度を調整して《飛骨拳》を発動。俺の体は反動で、高い位置にあるオーガキングの顔に向かって勢いよく飛ぶ。
驚愕の表情を浮かべたオーガキングはすぐに後ろに向かって倒れ込んでいった。俺は空中で、自由に動けない。とにかく攻撃の軌道から外れようとしたらしい。
俺は倒れ込んだオーガキングの頭上を通りすぎて、空中でくるりと振り返る。
(この瞬間を待ってたんだ!)
今なら絶対に躱せない。闇が渦巻く剣を振り下ろす。
剣から放たれた黒い斬撃は、オーガキングの体を真っ二つに斬り裂いた。




