89.《直感》の落とし穴
慌てて目をやると、さっき倒れたファイターが俺の尻尾を握っている。《直感》は反応していない。
理由を考えている暇はなく、動きを制限されたまま投石をなんとか躱す。尻尾を握っているファイターに止めを刺したいが、投石はそれを阻止するような狙いをしているようだ。
尻尾を切り離すのも後が厳しい。尻尾がなければ空中での姿勢制御が乱れるし、地上戦でも攻撃手段の一つだ。
ファイターは尻尾を握ったまま逆の手を俺の体に伸ばしてくる。やはり《直感》の反応はない。
(こいつ…!俺にダメージを与える気が全く無いのか…!)
ファイターに握られた尻尾に損傷はない。ただ掴まれているだけだ。そして今伸ばしている手も、俺の動きを制限するためだけのものなのだろう。
危険が迫ると反応する《直感》。危機に陥る原因であったとしても、それそのものに危険がなければ反応しないということか。
俺に覆いかぶさるように動いたことで届くようになったファイターの首を裂く。首を飛ばせはしなかったが元々ボロボロ、ファイターはすぐに動かなくなった。
瞬間、《直感》が大きく反応する。投石ではない、もっとヤバイ何かがくる。
いまだにファイターの体を押しのけなければ動けない状態、回避は不可能。即座に切り札を使うことを決断する。
纏っている魔力を剣へ、そして剣に流した魔力を魔法へ。できる限り早く、節約を考えてる場合じゃない。
魔法の完成とともに前方から攻撃がくる。まだ立っていた死にかけのファイター二体を貫いて、巨大な石の槍が飛んできた。
魔法が渦巻く剣を振る。ギリギリのところで迎撃し、石の槍はバラバラに斬り刻まれた。そして俺は、相殺しきれなかった衝撃でファイターの死体ごと吹き飛ばされたのだった。




