8.異世界は過酷だった
あれから暫く獲物を探してウロウロしたが、どいつもこいつも俺より強かった。むしろ最初に見つけたゴブリンが一番弱かった。
他の場所で見かけたゴブリンはどれも5~6匹の群れだった(見つかりかけて焦った)。バイトドッグという口がめちゃくちゃでかくて、大型犬っぽいDランク魔物と一本道で遭遇したときは死ぬかと思った。壁によりかかって死体のフリしてたら、俺の肋骨を一本咥えてどっかいった。
なので今は、最初に見つけたゴブリンを探しているところである。できれば別れ道になってる所に潜んで、通りかかったところを奇襲したい。出来なければ例の死体作戦だな。
目標のゴブリンはレベルもランクも上だが、この握力で首を思い切り握りにいけば勝てるだろう。さすがにゴブリンの首が洞窟の壁より頑丈ということは無いはずだ。
かなり長い事探しているのだが見つからない。ウロウロしてる内にこの体で歩くのに慣れてきて、駆け足くらいは出来るようになった。足音が非常にうるさくなるのでゆっくり歩いてるが。
今いる所は曲がりくねってはいるが、分かれ道のない一本道で、結構な距離を歩いてきた。これ以上進むと逃げるのに支障がありそうだし引き返そう。
そう思って振り返った瞬間だった。
無いはずの肌が粟立つ。後ろから今までで一番キツく《直感》が反応していた。これまではちょっと嫌な予感がするくらいだった。だがこれは、気を抜けばガタガタと震えてしまいそうだ。
ヤバイ。後ろに比べれば何もないに等しいが、前にも《直感》が反応するやつがいるのだ。近くに脇道はない。
バイトドッグの時と同じように、死体のフリでやり過ごすしかない。
覚悟を決めて、通路の端に座り込んだ。