76.ピッタリな教師
『ようこそ、魔王候補殿、グラシオ殿。話は聞いております。上がってくだされ。』
扉を開けて俺達を迎え入れたのは真っ黒な骸骨だった。なるほどピッタリな教師役というのはこういう事か。
黒骸骨についていってテーブルにつく。
『儂の名ははガルマという。高い知能はあるのに言葉がまるっとわからんという不思議なことになっておる魔王候補殿に言葉を教えよう。同じような骸骨同士、よろしくたのむ。』
黒骸骨、ガルマが自己紹介をする。同じ骸骨で教師役というのは分かったが疑問が一つ。
『ああ、よろしく。ところで俺と同じなら声が出せないんじゃないか?それだと教えるのは難しいんじゃ?』
俺の疑問にガルマは口を開く。
「××××××××。」
そしてなんと普通に声を発したのだ。
『ほほほ。驚いておりますな。《風魔法》スキルの応用で音を出せるのですよ。うまく使えばこの通り、声を出すようなことも出来るのです。』
『あー、魔法で空気を震わせてるのか。なるほど』
つい漏れてしまった言葉に今度はガルマが固まる。
『一度聞いただけでそこまで理解されたのは初めてのことですな。それで何故言葉を忘れてしまっておるのか…。』
ガルマは少し考える素振りをしたが、やがて諦めたようだ。
『ともかく、儂はこのように魔法を得意とする魔族でしてな。《魔力操作》のスキルを持ち、魔力会話が可能な技術を持つ魔王候補殿には並行して魔法を教えようと思っております。
お互い食事も睡眠も必要のない身ですからな。数ヶ月もあればとりあえずは十分でしょう。』
そう締めくくったガルマを見て俺は勘違いを悟った。ピッタリってそういう意味かよ。




