36.後悔先に立たずって言うよね
ゴブリンの縄張りを走っていく。ガシャガシャと足音が響くがそのままに駆け抜ける。すでに20匹以上のゴブリンを引き連れている現状に、俺は少し前の自分をぶん殴りたいほどに後悔していた。
そもそも《直感》の反応が薄い方向が縄張りを抜けられる方向だとは限らないし、あまり目立つと群れをまとめている上位種に見つかる確率だってずっと上がるだろう。今の俺ならホブ・ゴブリンと同じクラスなら一対一で戦えばなんとかなる可能性が高いが、こんな事になっていたら不可能である。
すでにゴブリンが群れを大きくして俺を探していたエリアからは抜けている。目の前に見えてきた群れも4匹の群れだ。後ろから大量に迫っているから倒している暇はないが。
手に持っている骨の短剣で手近なゴブリンを斬りつけて駆け抜ける。走り抜けると決めたときに尻尾の一部を短剣として加工し直したのだ。逃げている間は《飛骨拳》が使えないし、痛みで怯ませて牽制するなら殴るより斬るほうがいいと思ったからだ。
──そんなことより走ることそのものが悪手だって事に気付きたかったけどな!
自分に悪態をつきながら走る。ゴブリンは俺より遅いので何もなければ徐々に引き離せるのだが、前方にゴブリンの群れがいるとどうして減速してしまう。しかも低レベルのゴブリンがスタミナ切れで脱落していった結果、俺を追い続けているのは比較的レベルが高い個体ばかりである。
立ち止まったら確実にやられる。今できるのは上位種に遭遇しないように祈りながら、走り続ける事だけだ。




