23.ホブ・ゴブリン遭遇戦3
かなりの時間が経った気がする。こちらと違って生身で、スタミナも有限なはずだがホブ・ゴブリンの動きに陰りは見られない。最初の頃と変わりなく棍棒を振り回している。
こちらにの動きも変わらない。だが確実に集中力は落ちている。ホブ・ゴブリンにとっても切り札だからか、それともスケルトンごときに魔力を使いたくないのか《急所突き》を打ってくる気配はない。
無いはずの肉体が疲れを訴えている気がする。無いはずの脳が痛みを訴えている気がする。当然、ただの気のせいだ。人間だったという記憶を中途半端に持っているから感じる幻だ。だがそれでも、そう感じているのは確かなわけで。
横薙ぎの一撃を躱して体勢を整えようとした時、足がもつれた。倒れ込みこそしなかったが片手を床について隙だらけになってしまった。すでにホブ・ゴブリン追撃が迫ってきている。
──間に合わない。死ぬ。
一瞬過ぎった思考を即座に切り捨てる。死にたくない。なら考えろ。今残ってる手札はなんだ。《飛骨拳》で牽制、駄目だ。片手になったら勝ち筋はなくなるだろう。考えて、考えて、そしてとっさに魔力を足にむかって動かした。
体が斜め上方に飛ぶ。魔力は手に流した時と同じように加速し、しかし阻むものも無かったのでそのまま足から吹き出した。その勢いで体を飛ばして逃れる事に成功したが、空中で姿勢を制御できるはずもなく回転しながら転がっていく。魔力が吹き出し続けていると止まれないので、まだ加速してない分の魔力を《魔力制御》で捕まえて回収する。
勢いのまま壁にぶつかってホブ・ゴブリンのほうを向くと、すでにこちらに駆け出している。《直感》で見える攻撃の軌道は胸の中心に真っ直ぐ伸びていた。
《急所突き》が、くる。




