走れ!
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KA(送信開始) 走れ! 電波監視官!?
木枯らし吹く秋の季節は、夏の葉を緑色から赤茶や黄色に染め、環状線から外れた住宅地を、リトグラフのように見せていた。
住宅地の真っただ中を、モーゼの如く、西武線の線路が貫き大きくカーブする。
紺色のジャンパーに身を包み、「総務省 関東総合通信局」のロゴを背負う男。
背は平均的で、華奢な体格。
髪型は公務員と言うのも有り、黒色だが、毛先を遊ばせて、全体的に跳ね上がっている。
十和田電波監視官は、呼ばれた声の方へ振り向く。
「先輩……この辺り、何も反応しませんよ?」
女性職員に呼ばれ、十和田は彼女の元へ、だらしなく足を運ぶ。
新人職員の月宮は、十和田よりも背が低く、目鼻立ちも整い、愛らしい顔つきをしている。
長い黒髪を後ろで結んでいるところが、彼女の真面目な性格を、現しているようだ。
彼は呆れながら、彼女が持つ機材を取り上げる。
「お前、どこ調べてんだよ。もっと、ちゃんと調べろよ」
計測器は、大きなハンドガンを思わせる、形をしており、銃身と呼べる部分は、上部と下部にスキー板のような受信装置が付いている。
グリップがUの字に反り返り、ケーブルで数値を現す、箱型の記録装置に繋がっている。
まるで、未来世界のレーザー銃のようだ。
十和田に測定器を取り上げられて、少し気分が落ち込んだ、月宮後輩を他所に、彼はセンサーをかざし周辺を調べ結果を読む。
「……何も反応しないなぁ」
それを聞いて、後輩は、爬虫類のように、冷たい目線を彼に向けた。
その目線に、いたたまれなくなり彼は思わず謝る。
「悪かったよ…………場所を変えるぞ」
二人の電波監視官は歩き始めた。
TTT TTT TTT,
東京でのオリンピックが予定され、開催会場や移設問題で揺れる中、日本国内で、安全な開催と運営を目的とした、協力体制が各省庁や地方機関で進められている。
その一貫として、平成二十七年から地元警察と総通局、合同の元、不法無線局の取り締まりを目的とした、活動が“電波利用環境保護・周知啓発強化期間”である。