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走れ!(×10)走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!

「十和田…………報告書に、こういう私的な見解はいらないぞ。なんだ? この、茨の城からSOSを発する、とか、無線機は絆とか? 報告書はちゃんと書けと、いつも言ってるだろ?」


 電波監視官、十和田・太陽は、小日向課長から報告書を突っ返され、肩を落としながら席に戻り、報告書を書き直す。


 九段第三合同庁舎の二三階では、朝のニュース番組に皆、釘づけになっていた。

 職員達は、天井より下の四隅に取り付けられた、十五インチの薄型テレビから、流される光景に目が離せない。


 空撮で見づらいが、住宅地に囲まれた線路は、向かい合う二つの電車がわずかなあいだを作り、睨み合っていた。

 リポーターがヘリから中継している為、ローター音に負けないよう声を張る。


『見えますでしょうか? 朝の通勤ラッシュに、戦慄が走ります。

電車同士の間は、わずか三メートルぐらいしか有りません。

一部では、鉄道無線の電波障害により起きた、事故との見解ですが、詳細は不明です』


 テレビの報道を見て、月宮後輩が言う。


「これ、止めたの私達ですよ?」


 後輩の突飛な言動に職員達は笑う。

 同期の櫻木が、新人女性職員に対し、子供をあやすように話す。


「あぁ~あ、新人ちゃんまで、エターナルの影響受けたか」


「本当です!」


 他の職員は、笑うだけ笑い満足すると、ちりぢりになり仕事を再開する。

 彼女は納得いかない様子で、席に座り話かけてきた。


「先輩。あの電車事故を防いだのって……」


 彼女が言い終わる前に、十和田は言葉を奪う。


「こんなもんさ。電波の仕事ってのは……何せ、見えない物を扱ってるんだ。俺達の調査結果や摘発が、直接、何に影響を与えてるか解らない。どこかで、事件事故を防いでいるかもしれないし、全く関係ないかもしれない」


 それを聞いて後輩は、つまらなそうな表情を作り、うつむく。

 先輩監視官として、これから先、仕事に希望を抱く、新人のやる気を削ぐのは、よろしくないと踏んで、なだめた。


「でも、電波監視は、日頃から行う取り締まりの積み重ねだ。コツコツやって行くから、問題は起きないし、起きても大惨事にならない…………俺達が目を見張る意味はあるさ」


 それを聞いて、後輩の顔は幾分、明るくなった。

 デスクの電話が鳴り、十和田が受話器を取る。


「こちら、関東総合通信局です……はい……詳しくお聞かせ下さい」


 彼は受話器を顎と肩ではさんで、空いた両手で、相談者の会話をペンでメモする。


「具体的に、周波数、場所、通信内容、貴方の名前、コールサインを教えて下さい……出現の傾向はありますか? 毎日とか、何曜日とか、朝とか夕方とか? ……はい……なるほど……解りました。

出来るだけ、早く対応します……では、失礼します」


 受話器を静かに置くと、記入したメモを確認。

 席から立ち上がり、新人を見て投げ掛ける。


「おい、新人。出る準備しとけ」


 それを聞いた、後輩は思わず立ち上がり、返事をする。


「はい!」





                     __

                     AR(送信終了)


 

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