大型モンスターを初討伐?!
「今、『さっさと潰すぞ!』て言った?」
「ああ、お前だけじゃ自分の尻拭いさえ出来ねえ事自覚せい!」
「えええええ…酷いよぉ〜渉君」
「ここは戦場だぞ。減らず口は後回しだ」
と言いつつも、ドスフーゴのHPも4分の3まで削れた。手塚は無傷だ。
「そろそろ仕掛けよう。全ダメージを通常攻撃で与えるのは苦しいだろう」
手塚はその大きな獣が目を赤く光らせて自分たちに突っ込んで来るのをガードして待ち構えた。
突進を受ける寸前でガードを解除して剣を振るう。
すると閃光が走り、ドスフーゴがノックバックしているのが見えた。
「今だよ!」
少し説明を挟もう。
タイミングが合っているならば、当たり判定が出ないが5秒間のノックバック確定の「アタックブレイク」が発生する。ここで自分たちの攻撃に当たり判定が出れば、クリティカルヒット確定の「カウンター」も発生して、プレイヤー攻撃値×1.5倍かつノックバック時間が+2秒される。また、ノックバック中に全プレイヤーがそれぞれ持つスキルポイントを消費して特殊攻撃をすると、プレイヤー攻撃値×2倍される。さらに、アタックブレイク発生直後に同パーティの控えプレイヤーと交代して、特殊攻撃を発動する「チェンジアタック」では消費スキルポイント2分の1にスキル能力2倍が発生する。
「「チェンジ!」」
背中に背負った太刀を引き抜いた刹那、炎のエフェクトが出た。芝原のアタックスキル「紅蓮の侍」。5連撃の絶大ダメージに加えて、小確率で相手に状態異常「燃焼」を与える、または1分間だけ草属性のフィールドを火属性フィールドに変換する「火焔地獄」が発生することがある。
「これで!」
左上から右下、
左下から右上、
上から下、
下から上、
最後に中央に突き。実に鮮やかな大当たり判定の連続だった。
ドスフーゴのHPゲージも一瞬で0を表示して、消えた。獣の姿も消えて、静けさを漂わせていた。
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「…暑い…」
どうやら前述の「火焔地獄」が発生してしまったようだ。フィールド全体が熱気を帯びている。
「クーリングドリンク持って来れば良かった…」
「でも、これは予想外だったな」
と、たった先ほどまでドスフーゴがいた所にある宝箱を指差した。
「LAボーナス?金の宝箱てことは…レア装備?!」
手塚は興奮を抑えられないようだ。
「しかも鍵口は虹色。フル装備だ。雑魚のネームドボスのわりに装備ドロップ率を非常に低く設定しているようだし、ドロップしても大抵肥やしスロット直行の代物。情報屋に聞いたので正しけりゃ、こいつのレア装備ならばほぼほぼ星5だろ」
LAと言いつつも、誰でもこのボーナスを受け取ることができるのだが、手塚は既に拒否を示していた。
「いいよ。私はもう全部星5だし」
芝原の装備も、武士と言っても足軽の格好なので、装備DFPとHPはヘッポコ装備に等しい。
(それは皮肉か…)
ドロップ武器は太刀の「獣風」。
防具は「草原の守り人」シリーズ。
どちらも、草属性だが苦手属性はなし。水属性の攻撃を吸収してHP回復する「無双系」装備だった。
が…
「|POW(パワー値)足りねえ…使えるようになった時には脱出出来てるだろ(´・Д・)」
POWとは、装備を装着するに当たり必要なポイント。重ければ重いほど数値が高い。
芝原のPOWは現在800。装備に必要なPOWは19000。最も必要POWが低い下半身装備で、だ。
フル装備ならば55000。POWを100上げるために5レベル上げる必要がある。スタート値は一律500で設定したので、逆算でlev.30。20を超えるとレベルアップに必要な経験値が上がりすぎてなかなか進まない。
「しょうがない。アイツらに頼んで軽くしてもらうか」