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私とゲームを作りましょう!  作者: 水池亘
〈WORLD 1〉
7/13

1 ― 2 (4)

 気がつくと、頭上に気持ち悪いくらい青い空が広がっていた。所々に白い人工的な形の雲が浮かんでいる。足下には茶色いレンガのブロック。少し先に同じブロックがいくつか浮いている。

 遠くの方は何故だか認識ができない。おそらく前に進めば見えてくるのだろう。そんな気がする。

 とりあえず歩き出す。後ろにも行こうとしたのだが、見えない壁にぶつかってどうしても進めなかった。だから前進するしかない。

 しばらくすると、遠くから猛スピードで走り来る人影が見えた。

 あれは……。

 西園寺?

「マリアは全ての横スクロールアクションゲームの祖先!」

 叫んで、西園寺は思い切りジャンプする。

 高い。

 高すぎる。

 ていうか、私に向かって来てない?

「踏みつけが攻撃法とは、すごい発想だ!」

 西園寺の足が、私の頭上に近づいてくる。

 うわ、やめろ! 踏むな!

 死ぬ。

 死んでしまう。

「うわあああっ」


   *


「うわあああっ」

「む、大丈夫か? 桜井」

「はっ!」

 飛び起きると目の前に西園寺の顔があった。

「ぎゃあ! 踏むな、踏むな!」

「何訳の分からないことをわめいているのだ」

「……あれ?」

 青い空も白い雲も茶色いブロックもなかった。

 ここは、私の部屋だ。

「どのような夢を見ていたのか知らないが、俺が桜井を踏むわけないだろう。早く現実世界に帰還しろ」

「……わかってるわよ」

 どうやら寝不足がたたって、帰宅と同時に寝込んでしまったらしい。

 恥ずかしいところを見られてしまった。

「まあ、桜井が俺を踏むことならあり得るがな」

「あり得ないわよ!」

「過去を振り返ってみろ。胸に手を当ててよく考えてみろ。そのぺったぺたな胸に」

「本当に踏んでやろうかしら!?」

「睨むな、単なる冗談だ」

「あんたの冗談は笑えないのよ!」

 私は叫んで、そして時計を見る。

「え! もう夜の九時じゃない!」

「ああ、そうだな」

「あんた何時(いつ)からいたのよ」

「午後四時二十三分五十四秒から」

「精密すぎるわ! ……じゃああんた四時間半もここでぼーっとしてたわけ?」

「ああ」

「何もしないで?」

「そんなわけはない。現在制作中のゲームのプログラムを組み立てていた」

 そう言って西園寺は近くに置いてあったノートパソコンを指さした。

「まあ、それは三十分ほどで終わったがな」

「速っ! 残りの四時間は何してたのよ」

「桜井の寝顔を見ていた」

「はあ?」

「普段も意外とかわいらしい容姿の桜井だが、寝顔は特にかわいいな」

「な、何言ってるのよ! 冗談は止めなさい!」

「これは冗談ではない。俺は女性の容姿に関しては絶対に嘘はつかない」

 かあーっと顔に血が上った。

 思わず、掌底。

「うぐぇ!」

 西園寺の心臓にクリーンヒット。膝から崩れ落ちる彼。カウント。ワン、ツー、スリー……。

「暴力は感心しないと何回言えばわかるのだ」

 あっさりと西園寺は立ち上がった。どうやら致命的な一打ではなかったようだ。

「あ、あんたが変なこと言うからいけないんじゃない!」

「大丈夫か? 地球温暖化を加速させそうなほどに真っ赤だが」

「うるさい!」

 握りしめたグーでリバーブロー。

「がほぁ!」

 息を吐いて西園寺はまたも倒れる。

 今度は10カウントを聞いた。

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