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拾いふだ  作者: lycoris
7/27

「じゃあ、遠足に当たって、早めに準備しろよ。親だけじゃなく自分でもやるんだぞ。そして早く寝る事だ。以上、質問あるかー?」

周りは手を挙げずにボソボソと喋ってる。

「よし、いいな。じゃあ、帰りの挨拶だ。よろしく。」

先生が学級委員長を見る。

それに答えて、委員長はスッと立ち上がって号令をかける。


今日の帰り道での話題はやはり遠足で持ち切りだった。

どのお菓子を持って行くとか、何をして遊ぶとか、そんな事を夢中で話していると、

1人、1人と別れて行って、いつの間にか自分の番になっていた。

「じゃあね」

と手を振り上げ、それに返してくれる友達と別れを告げる。

家の鍵を解錠しドアを開けて部屋に戻る。

ランドセルを机に置いて、連絡帳を持ってリビングに出向く。


リビングにはどっちの親も帰って来ておらず、妹がソファに座ってテレビを観ているだけだった。

「ねぇ、お前一人で帰ってこれるわけないよな。父さんと母さんは?」

「ぶぅ、失礼だね。ちゃんと一人でも帰ってこれますー!お母さんは買い物、お父さんはまだ仕事ですー!」

膨れっ面で怒りを表現しながらも答えてはくれるらしい。

「ごめんごめん。」

ちょっと言い過ぎたと思い、お詫びをしようとした時、視界に妹の手元が入った。そこにはお菓子の袋があり、開封され半分以上は無くなっている。

それ以外にもソファや机、ゴミ箱にも捨ててあるが、とにかくお菓子の袋が散乱している光景は視界に飛び込んできた。

だんだんと怒りが込み上げ、ドスドスと呑気にソファに座ってる妹に近づき、背後(うしろ)から頭をゲンコツでブった。


怒りに身を任せてるこの時は、母さんが帰ってくる物音に気が付かなかった。

「ただいまー」

母さんはそう言って靴を脱ぎ、荷物を持ってまっすぐリビングに向かった。

リビングに入ってすぐに僕達の喧嘩の仲裁に入った。

「あなたたちやめなさい!」

怒鳴り声に体がビクッと反応する。

「どうしたのよ、2人共。訳を話しなさい!」


「僕のお菓子を妹が食べたから。」

遠足用のお菓子を妹が食べたから。

「で、お兄ちゃんはこう言ってるけど?」

「知らなかったんだもん!」

「そんなわけ「まあまあ、落ち着いて。」

反発する僕を母さんが(なだ)める。

「本当に知らなかったの?」

「うん…」

「うーん、そうねぇ〜。確かおやつはちゃんとあげたよね?」

「うん、でも足りなかったから。」

「から?」

「お兄ちゃんのおやつの文を食べると怒られるから、そこにあったお菓子を食べたの。」

「なるほどね。お兄ちゃんも分かった?」

「うん。」

「じゃあ、言うことがあるね。2人とも。」

「いきなり殴ってゴメン。」

「いや、お兄ちゃんは悪くないよ。」

「そうじゃないでしょ。」

「え、あ。勝手にお菓子食べてごめんね。」

「はい、2人とも良く出来ました。お兄ちゃんの遠足のお菓子は明日、用意する物と一緒に買いに行きましょう。妹ちゃんにはそろそろお小遣いをあげようかしら。」

さすが母さん、まとめるのが上手い。

父さんもいつも丸め込まれてるのをよく見かける。

「じゃあ、今日はちょっと遅めに夕飯にしましょうか。お兄ちゃんも機嫌直して、あそこにあるおやつ食べてね。」

「うん。」

その後、妹と一緒に食べながら一緒にテレビを見た。


土日で必要なものを揃えて、明日に控える。

今夜は遠足が楽しみで寝れない夜。

頑張って目を瞑っても、寝付けず、しょうがないので、再度明日の準備を確認する。

何も忘れ物はないようだ、明日の朝にハンカチとティッシュを持っていけばバッチリ。

お茶を飲んで、トイレに行って、それからまたベットに戻り布団をかぶる。

寝つけないのは分かったから、明日は何があるだろうか?何をするんだろうか?何をしようか?

様々なシチュエーションで想像を膨らませる。

そのうち自然とシチュエーションが固定され、自分の想像なのに自分の思い通りにいかなくなる。


そして、最後に衝撃的な事が起きて、それを皮切りに目が開いた。

あれ?いつのまに寝てたんだろう。

寝付いていた事に意識がいって、さっき夢で見た衝撃のラストを忘れてしまった。

そして、顔を洗い、歯を磨くうちにだんだんと夢の内容を忘れて、再び今日の遠足の事で様々な妄想を広げていく。


朝食をとりにリビングに向かう。

「おはよう。」

リビングのドアを開けて中に入ると父さんと母さんがいた。

二人はゆっくりコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。

「おお、おはよう寝れなかったのか?」

「あれ?今日はいつもより早いのね。」

「別に、ただ目が覚めただけだよ。冴えすぎて二度寝出来ないくらい。」

「ほぉ。まぁ、早起きは良い事だ。これからも早寝早起きだぞ。」

「うん。」

「でも、それにしては早すぎない?いつもより1時間も早いわよ。」

言われて、テレビを除いて時間を確認すると、【6:06】と表示されていて少し驚いた。

「うわ、本当だ。こんなに早く起きたのは久しぶりだよ。」

「んー、しょうがないわね。ちょっと待ってて。今から朝ごはんとお弁当を作るから。あんたはその間に顔洗って歯を磨いて来なさい。」

母さんはコーヒーを飲み干し、空になったコップを片手に立ち上がってキッチンへ向かった。

「顔も洗ったしちゃんと歯も磨いたよ。」

「うっそー?本当にー?」

「どれどれ、俺が確認してやろう。」

父さんが嬉しそうに母さんが座っていたソファの場所まで手招きをする。

そこに座って歯を見せる。

「お、こいつぁ本当に磨いたようだな。さすが我が息子、偉いぞおー?」

少し整えただけの髪を父さんの大きな手が優しく掻き乱す。

「えへへ、これでももう1年生だからね!」

「そうかそうかー、もう1年生なのかぁー。すごいぞー!息子よ!」

「もうお父さんったら朝からうるさいんだから。」

僕の頭を自分の胸板に寄せて抱き締める父さんを母さんが呆れながら軽く注意する。

「はっはっはっは、うれしいんだからしょうがない!」

「もぉ。そんな事より時間はいいの?」

「ぬ?ああ、確かにそろそろ行かねばな。」

僕から手を離し、父さんは机に置いてある鞄の中身を確認しに行った。

「あっ、もう少し待って、今お弁当が出来るから。」

「おぉー、今日も妻の愛妻弁当かー、今からお昼が待ち遠しいぜ!」

「今日は拓人の方が愛情多めなんだけどねー。」

「え。そ、そんなぁー。だったらもうここに居る意味は無いな、仕事行ってくオェ」

急足でリビングを出ようとする父さんの服の襟を横から掴み、強引に自分の方に顔が向くように引っ張る。

「ちょっタンマ。服伸びちゃう、それと最悪死んじゃう。」

「しぶといのが取り柄なのに?それより、はい、お弁当。それとネクタイも曲がってる。服の(しわ)もちゃんとのばして。」

「ん、ああ、すまん。いつもありがとう。あとひど「もー、一家の主人(あるじ)なんだからしっかりしてよね。はい、いってらっしゃい。」

父さんの服装を整え、お弁当を鞄に入れて、急かすように父さんの背中を押す母さん。

両親が仲良くしてるのを見るとこちらも楽しくなる。

「はい、うん。じゃあ行ってくる。行ってくるからそんなに押さないで。」

「はいはい。」

急に手を離して、もたれかかっていた父さんの背中が支えを失い体全体がバランスを崩す。

「おっとー!?」

「はいはい、しっかりして。」

「お、おう。サンキュー。」

いつも最後は母さんが父さんを支えている。

「じゃあ、拓人、今日の遠足、帰ったら話は聞かせてもらうからな、楽しんで来いよ。」

「うん!」

元気に答えて、母さんと一緒に父さんを送り出す。

「いってらっしゃい。」

「あなた、気をつけてね。」

「おう。今日も1日頑張るぞ〜!」

父さんは両腕を上げマッスルポーズを取りながらリビングを後にした。


「さ、あんたもこれを食べたら着替えて、最後に荷物の確認でもして来なさい。はい、お弁当。」

お弁当を受け取り、端に置いて朝食を食べた。

いつもよりゆっくり食べた朝ごはんはいつもより少しおいしく感じられた。出来立てだからかな?

食べ終えた後は、言われた通り準備の再確認をし、お弁当を入れて服を着替える。

ハンカチやティッシュをポケットに入れて、準備完了。

荷物を玄関脇に置いて、時間になるまでテレビを見る。

雨は降らないようだ。


学校に着いて、そわそわしている友達と土日の事や今日の予定を話し合う。

中にはオシャレをしている子もいた。

それから先生が来て、全員校門前に集まるよう指示を受けた。

校門前にはせっかちで元気な子達がすでに何人かいてワイワイと騒いでいる。

そしてしばらくして先生たちも集まり点呼を始める。

それが終わると注意事項を言い渡し、いよいよ出発。

今日の遠足は少し遠い所にある大きめの公園。

何でも、山だか林の中にあるそうな。

坂はいつも登校する時に登ってるが、山は生まれて初めてだ。


山は坂よりキツい傾斜もあって何度かつまづいた。転んでる子もいた。

しばらく登って、獣道を辿って行くと大きな公園に着いた。

そこで再び注意を受け、解散、時間まで自由行動となった。

自由行動とは言っても、1年生全員が集まっているので、知らない子もいる。

だから、遊ぶのは自然と同じクラスか班の子達となった。

それからしばらくアスレチックや広場を駆け回って、気づけばもうお昼の時間だった。

先生が集合をかけ、またまた注意をうけ、班ずつに分かれ先生の合図で合唱。

「いただきます!!」

元気いっぱいの声が公園に響き渡った。

母さんのお弁当はとても美味しかった。

班のみんなと好物を交換しあって食べた。

お昼の後は、再び自由で、食べ終わったものから飛び出していった。

これからおやつは自由に食べていい事になっているので、しばらくはしゃぎまくった後にみんなで休憩がてら食べた。

と、ここで重大な忘れ物に気づいた。

そのおやつが無い。

「しまった!」

「ん?どうしたんだよ拓人、お前はどんなおやつを持ってきたんだよ?」

「それがおやつを家に置いてきちゃったんだよ!やっちまったぁ…」

今度は妹に食べられないよう自分の部屋の机の引き出しに隠して、そのままだった。

おやつはちゃんと隠したからって準備した気でいたようだ。

その事情を話すと、

「なんだぁー、しょうがない奴だなぁー。」

友慈が面倒くさがりながら、小さなチョコを2個くれた。

「本当は交換するためにいっぱい買ってんだけど。これは借りだからな!」

「ありがとう!」

この時、嬉しさのあまり目が滲んだ。

「そういう事なら俺のもやるよ。代わりにこいつは貰うぜ。」

「じゃあ僕のも。あと、そのチョコとこれ交換しようよ。」

班のみんなが2つずつ何かをくれては何かを交換していった。

「ありがとう、みんな…」

「泣くなよー。」

自分では我慢しているつもりだった。

「次からは気をつけろよ。」

自分が惨めになってくる。

「よし、食い終わったら次はアレやろうぜ。」

でもそれ以上にみんなの優しさが嬉しくて

「でも、ちゃんとゴミを片付けなきゃ。」

「それもそうだな。」


帰りも来た道を班のみんなとしりとりをしながら辿っていった。

そして、学校に着くと点呼をし、念押しの注意や忘れ物の確認をし今日は早く休むようにと言われた。

疲れ切った班の仲間たちやクラスの友達と分かれて、家に着いた。

母さんや妹に感想を聞かれたので、今日の出来事を噛み砕いて、途中嘘を含めて話した。

母さんは嬉しそうにして、妹は楽しみにしていた。

それから部屋に戻って一休みする。

が、うまく寝付けずお腹も減ったので、せっかくだから家に忘れたお菓子を食べる事にした。

机からお菓子を取り出す。

その時目に、前に拾ったカードが目に入った。

「そうだ。」

今日のお礼にこのカードをあげようかな。

そう思って、カードとお菓子を持って公園に向かった。

疲れ切ったといっても、遊ぶ約束をしていた子もちらほらいたから、誰かしら班の仲間が公園にいるかもしてない。


公園で遊んでいる子たちはいるにはいたが、班の仲間は居なかった。

やっぱりみんな疲れちゃったのかな?

それとも僕がみんなからお菓子をもらちゃったから…

気持ちがだんだん沈んでいく。

それを紛らわすように、空腹を埋めるためにベンチに座って今日持っていくはずだったお菓子を食べた。

遊んでいる子たちを自分たちに見立てて、虚しく食べていた。

虚しくなったので別のところを見ることにした。

公園の周りを見渡すと一つ目につく場所があった。

公衆電話。

その付近には手ぶらのサラリーマンが立っていた。

そのサラリーマンを観察しようと見つめた時、目があった。

するとサラリーマンは驚いた。

驚きついでにだんだんと近づいてくる。

少し憂鬱だしこれだけ人の目があれば、それ以前にあのサラリーマンに見え覚えがあったから、その場を動かなかった。

やがてサラリーマンは正面に立った。

「やあ、君は俺が見えているのかい?」

ああ、そういえば前にもそっくりな人にあった事があったな。

前とは雰囲気が違うようだが。

「はい、見えてますよ。もしかてお化けですか?」

サラリーマンは少し間をおいて、

「まあ、そういう類に入るかな?」

そうだ。

「ふーん。あの、これ食べます?」

「ん?良いのかい?」

「別にいいよ、元々人にあげるために持って来たから。あなたが代わりに食べて。」

「んじゃありがとう。」

「お化けなのに食べるんだね。」

「まあ別に食わなくてもいいんだが、くれるっていうんなら。それにほら、クッキー食べてる奴もいるだろ?」

「確かに。あ、あとこれもいいよ。」

「いいの?」

「本当は全部あげるつもりだったんだ。」

「こんなにいっぱい?」

「1人にじゃないよ。」

「ああ、そうか。でもどうして?」

「別にいいじゃないですか。」

「いや、話してみろよ。それが俺に出来るお礼だし。」

お礼、か。

「じゃあ。」


それから今日の出来事を、お菓子を食べながら話した。

サラリーマンは真剣に聞いて最後に意見も言ってくれた。

何だか少し楽になった気がした。

「聞いてくれてありがとうございます。」

「いやいや、別に。それでもう遅いけど帰らなくて大丈夫か?」

「はい、そろそろ帰ります。あ」

サラリーマンが僕の分のゴミを取り上げる。

「そっか。じゃあこれは俺が捨てておくから。」

わざわざすみません。」

「気にすんな。じゃ、気をつけて帰れよ。」

「はい、さようなら。」

景色がオレンジに染まった公園を後にした。

公園を出てすぐに振り返ったがベンチにはもう誰もいなかった。

本当にお化けだったのかな?

お化けってのはもっと、

ポケットの死神のカードを取り出す。

まあいいや。早く帰ろ。





一週間、とても早いです。

気づけば2週間。

そして日付をも跨ぐ。

遅れてすみません、毎度本当に。

用事が重なりあって多忙を極めていたので。

すみまぜん。




今回も私の記憶の一部を参考にしました。

遠足、懐かしい響きです。

今回はセリフが少なかったです。

読み辛いかもしれませんが、読んでいただき感謝です。

あと、主人は普通にあるじ で予測変換にあったのでそのまま使いました。

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