登校
「僕は青木拓人。よろしく、友慈くん。」
「よろしく。」
手を差し出すとちゃんとそれに応えてくれた。
彼とは仲良くなれそうな気がする、勇気を出して良かった。
「友慈くんは僕の後ろの席なんだね。近くで良かったよ。」
ランドセルをロッカーに仕舞って、席に座った。
「拓人は確か入学式に居なかった子がだよね、なんで来れなかったの?」
体を横に向け友慈と話しやすいようにする。
「んーと、風邪を引いただけだよ。入学式の前の日に、緊張して、それが悪化したのかもしれないってお医者さんが言ってたってお母さんが言ってた。」
「なんだよそれ。治ったから来たのか?」
「そりゃそうでしょ。本当は昨日の内にもう治ってたんだけどね。」
「ズル休みかよ、せけー。」
「お母さんがダメだって言ったんだもん。ズル休みじゃないよ。」
「えー、じゃあ昨日家で何やってたの?」
「えーっと?あれ、何してたっけな?」
「おじいちゃんかよ。忘れちまったのかよ。」
「ん〜」
あれ?本当に思い出せないや。
確か、コンビニに行って、その後…
その後は…
「お母さんが仕事行ってから、ずーっと寝てた?気がする。」
「お寝坊さんか。学校じゃ寝ないようにしろよな。」
「うん、気をつけるよ。」
チャイムが鳴った。
「お、この合図は分かるか?」
「チャイムだよね?確か席に座って先生が来るのを大人しく待ってればいいんだよね。」
「違うんだなー、これが。」
「え?他に何かあるの?」
「朝は特別でよ、朝読書ってのがあるんだ。これはそれの準備の合図だよ。」
「へー、そんなのがあるんだ。」
「ああ、でも、朝じゃない時は拓人の言ってた通りで合ってるよ。」
「なら良かった。」
「それと、たまに読書じゃなくて外に出て運動したり、体育館に集まって歌ったりと色々あるって先生が言ってたよ。その時々で先生が知らせてくれるって言ってたけど。」
「そうなんだ、知らなかったなー。ところで、その読書は何を読めばいいの?」
「うん?本持ってきてないの?」
「うん。」
「朝読書の時は自分で持ってきた本を読むんだよ。」
「あー、そんな事お母さんが言ってたような。たぶんその本は家に置いてきちゃったと思う。」
「しっかりしろよ、って言ってもしょうがないもんね。忘れてきた人用にあそこの学級文庫があるんだ。拓人もそれを読んでみたら。」
友慈が指差しながら教えてくれた。
「あ、あれはその本だったのね。ありがとう。」
「俺は今読んでるのが終わったら学級文庫の本を読むつもりだよ。」
「なんで?忘れず持ってきてるじゃん。」
「いちいち持ち帰りがめんどくさいじゃん?」
「なるほど。ところであの中からなら何でもいいの?」
「気にすんな、あそこにあるのを誰かに取られる前に好きなのを読め。」
「分かった。じゃあ取ってくるよ。」
表紙が面白そうなのを選んで戻ってくると、友慈も机から本を取り出した。
「その本面白い?」
「これか。これはとりあえず親が買って来たから読んでるってだけだよ。だから正直微妙なところかな。」
「へー。」
「本好きなのか?」
「別によう言うわけじゃないけど、面白いのは好きだよ。紙芝居とか超好き。友慈くんは好き?」
「微妙だなー。でも、実は紙芝居は俺も好き。」
「あっはは、どっちだよ。」
「ははは、いやぁ、ほら自分で読まなくていいじゃん?」
「いやいや、読む方だって面白いよ。」
「めんどくさいだけだと思うけどなー。」
「そんなこと無いさ。じゃあ今度「はーい、皆おはよー。」
先生が教室に入って来た。
「おはよー」「おはよーございまー」「さよならー」「あはは、先生来たばかりだぞ。」「あはははは」
「おい、先生来たから早く前向いたほうがいいぞ。」
「う、うん。」
急いで椅子と体の向きを直し、膝の上に手を乗せ足を机の下にしまう。
「じゃあそろそろ読書開始だから皆本用意してちゃんと読むんだぞー。」
「はーい。」
皆が元気よく返事する。
僕も遅れたが周りに合わせてちゃんと返事した。
そのすぐ後、再びチャイムが鳴って、みんな一斉に読書を始め、教室はシンと静まった。
先生も自分で持ってきた本を座って読み始めた。
周りを見渡すのを止めて、自分も急いで読書に取り組んだ。
読書中先生の方が気になって見てみるとちょうど目が合って、その時に先生は目を細めた。
いい人そうだ、お母さんの言った通りだ。
先生が頻りに腕時計を確認しながら周りをチラチラ見て、それがしばらく続くと、
「はーい。じゃあ読書終わり。みんな本を片付けてね、学級文庫使った人はちゃんと戻しておくように。」
視線をややこっちに向けながら全体に言い放った。
それからちょっとの間、ガソゴソ本をしまう音とガラガラと音を立て席を立って学級文庫に本を戻しに行く生徒がちらほら。
それら全部が終わるのを見計らって先生が
「じゃあみんな席に着いたね。学級委員長、挨拶お願い。」
と一人の生徒に号令を促した。
「はい。」
その一人の生徒がすっと立ち上がって周りに元気よくキビキビ号令をかける。
「起立!」
「みんな、おはよう。」
「おはよーございまーす。」
「着席!」
どうやら先生の入室時とは別にちゃんと挨拶するようだ。
「じゃあ連絡事項から伝えていく。」
・・・
それから授業が行われ、その最中で、休んでた分の補修をしつつ進み、所々分からない所は放課に友慈に聞いた。
おかげで放課はほとんど友慈にべったりだった。
大放課には軽く校舎内を案内もして貰った。
その時に友慈以外の子も一緒について来てたから、その子とも仲良くなることが出来た。
一度下見に来たことがあったけど、内側から見ると迷路みたいだと思った。
池は誰が見てもやっぱり化け物がいるんじゃないかってくらい濁ってた。
それと、やっぱり他にカードは落ちてなかった。
元々持ち込み禁止だから誰かがこっそり持ってきたんだろう。
給食時間には他の子と机をくっつけて喋りながら食べた。
給食は意外に美味しかったが、会話がほとんど質問攻めだったから少し残してしまった。
友慈がその残りを食べてくれた。
今日は本当に友慈に助けて貰ってばっかりだ。
いつかちゃんとした形でお礼が出来るといいな。
6時間目の道徳は特別にクラスのみんなの自己紹介になった。
先生が僕が回復するまで待っててくれたらしい。
そして放課や給食中に喋ってた子達の助けもあり僕の挨拶はスムーズに行き、なんとかクラスに馴染めそうだ。
母さんに余計な心配かけずに済みそう。
そうだ帰ったら友慈の事を家族のみんなに教えて上げよう。
そうと決まれば、
「よし、じゃあ机も整頓したな。委員長、よろしく。」
「はい!」
朝と同様に委員長がすっと立ち上がって帰りの挨拶をした。
「みんな、気をつけて、出来るだけ家が近い人と固まって帰るんだぞ。」
「はーい。さようならー。」
「さよ、おならー!」「はははは」
元気のいいクラスだ。
帰り際、慣れないランドセルを背負おうとしていると少数の生徒が近寄り、
「そういやお前家何処なの?」
「あのねー、結構近いんだよ。あそこのコンビニの近くの公園の向こう側だよ。」
「へー、じゃあ俺らと途中まで一緒だな。帰ろうぜ。」
「うん、いいよ。あ」
ふと友慈の方を向く。
「俺はお前と違う方向だな。待たせてるから、じゃあね。」
「あ、うん。じゃあね。」
「じゃあな友慈。よしいくぞ拓人。」
「うん!」
公園でちょっと寄り道しながら新しい友達と帰った。
この日も電話BOXには誰も居なかった。
昨日まで贈り物のifエンドを煮詰めてたので遅れてしまいました。すみません。
久々過ぎて色々設定が抜け落ちていて先が心配になりました。
きっと大丈夫でしょう。
今回は私の小学校時代の記憶を頼りに書いてみました。拓人たちの通う学校とは全く違う学校ですが、クラスの雰囲気なんかは記憶通りだと思います。
もしかしたら思い出補正がかかってたり、私の理想に捻じ曲がったりしてるかも知れませんが。
それと、主人公の名前を「ひろと」から「たくと」に修正しました。
どちらとも読めるので漢字はそのままです。
ただ単に私の気分というかそんな感じのもですが、変更します、よろしくお願いします。
拓人の、セリフでは「友慈"くん"」で思想では君付けしてませんが、めんどうだってのもありますが、この方がしっくりくるのでそうしてます。
ご理解頂けるとありがたいです。
今回は日常回という事で、次からはイベントがない限り学校の授業やらはザクザクカットしていきます。
今回はただ私がやりたかったてのもあったんですが、書いてる途中懐かしさで胸いっぱいでした。
皆さんは私と似た小学校でしたか?それとも全然違いましたか?
それにしても時が経つのって早いですね、全く(遠い目)
それでは




