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拾いふだ  作者: lycoris
25/27

新たな出会い

そういえば、母さんが今日は少し遅くなっても良いって言ってたな。

衝動に駆られそうになる。

とりあえずは家に帰り、荷物を一旦自室に置いた。

荷物を降ろした時、手が震えていた。

指先が寒くもないのに痙攣でもしているかのように。

グッと、握ってみても力が入らない。

「母さん、ちょっと忘れものした。」

そう言い放って足早に公園に戻った。

公園には、1人の女の子がブランコに座って穏やかに揺れていた。

それ以外はなんて事の無いいつもの公園。

誰のいないいつもの公園。

なのに、この女の子がたった1人居るだけで新鮮に見える。

彼女は何をしているのだろうか?

誰かを待っている?

そう言えば、おじさんもどうしてここに居たんだろう。

どうして、僕はここに居るんだろう。

頭がズキリと痛んだ。

「ねぇ、君は何してる?」

女の子に話しかけてみた。

もうすぐ夏だが、それでもこの時間は薄ら寒い。

「?」

答えがない。

なんだか気まずくなった。

たぶん分かってはいたが、それでも、話しかけてしまったのだ。

「聞こえてる?」

だから、せめて答えだけでも聴きたかった。

「私、知らない人とは話さないの。」

なるほど、しっかりした子だなと思った。

「そうだね、ごめん。僕は青木拓人。これで僕を知った。」

「そうね。」

「だから、君は?」

「…」

そっぽを向いて夜空を見上げてしまった。

「…じゃあ、君は何でここに居るの?帰らないの?」

仕方がないから質問を変えた。

「それはあなたも同じでしょ。お互いそれぞれに事情があるの、気にしててもしょうがないわ。」

「そう、だね。」

難しい子だな。触れないほうがいいのだろうか。

「なんか、ごめんね。」

「…」

一度僕の顔を見てからまた別の方向を向いてしまった。

「あなたも帰ったほうがいいんじゃない。」

「いや…僕はもう少しここに居るよ。」

「そ。」

まるで興味の無いように、ブランコを軽く揺らし始めた。

僕も彼女の邪魔しないように、別の場所に移る事にした。

ベンチに腰を下ろして、僕も空を見上げた。

「忘れ物、か。」

ため息が漏れそうになる。

「ただの後悔なのに、なぁ…こうしてるのがおかしいくらい、本当は2度とありえないのに、それでも僕は後悔している。

いや、もう無いんだ。これが最初で最後、僕は。」

独り言を愚痴のように零す。

「帰る、か…変える、還る、返る、換える、替える、代える、、孵る、。」

なおも揺らぎそうになるのを誤魔化すように呟く。

「生まれた、か。うん、うん。僕はもう生きていくしかない、そしてそこで後悔しかできない。未練だけを抱えて何かを忘れて進むしか。」

忘れものを確認したので、帰宅する。

公園を出るとき、もう一度ブランコの方を覗き見ると、

未だ彼女はその無垢な瞳で天を仰いでいた。

黒い瞳に輝いた星々が、(みずか)らが発光しているかのように、僕にはそう見えた。

その光景を目に焼き付け、胸に何かを少し抱えて家に帰った。


今晩の僕の分の夕飯は一応作ってあったようで、食べなかったら明日の父さんの弁当の具になっていた。

けれども、今日は少し落ち着きが無いのでそこまで食欲はなく、半分と食べて残した。

無くなった分は明日の朝に白米が埋めてくれる。はずだ。


その割には昨日はぐっすりと眠れ、既に時は朝、目覚まし代わりに起こしに来た妹に先導されながら部屋を出た。

顔を洗って朝食を食べて時間になるまでテレビを見て妹と一緒に班と合流。

それから他愛も無い会話を話しつつ聞き流しつつ、ぼんやりといつも通りの通学路を辿るように学校に向かい、いつもと1、2分と違わなず席に荷物を置く。

準備を済ませ、ランドセルをしまって席に着く。

「ふぅ。」

一息つく。

これがたまにため息の時もある。

あくびの時だって。

そして、少し寂しくなった教室に先生が来て、全員の出欠を確認する。

今日も全員の出席しているようだ。

そのまま連絡事項を述べて、気がついたら授業が始まり、ダラダラと給食の時間までダレる。

食べ終えると自分達で片付け、チャイムとともに掃除が開始する。

教室は少し広くなった。

机と椅子の1つ分。

おかげで机釣りが少し楽になった。

そうして午後の授業も終え、朝のように連絡事項を済ませ、帰宅を促される。

家に着いてからのその後は日による。

漫画を読み返したちゲームに耽ったりなんとなしにテレビ時代劇やニュースを見たり。

気でも狂ったのか宿題をやる時もある。

夕飯を家族で囲み、風呂を済ませ、準備を整え、眠くなるまで、またゲームや漫画、テレビに没頭。

これが最近の僕だ。

僕が望んだものがあった。

僕が後悔したものがあった。

僕はそれでよかった。


なのに、その翌週、教室に入ってみると机と椅子がまた教室に戻されていた。

最初は何も思わなかったが、次第にクラスメイトが揃い出すといよいよ違和感が浮き彫りになってきた。

それは僕の未練だったはずなのに。

自分を疑ったが、どうやら周りも同じで、そこで囁かれたのが、「転校生が来る。」。

普通はそう思う。いや、ほとんどがそうだろう。

それでも僕は、友慈が転校したなんてのは間違いで戻ってきてくれたのでは無いのだろうかという一縷の望みにすがろうとしていた。

ありえないと否定していても仕切れない。

でも、この祈りですら、後悔という人がいる。

そしてそれは未練、結局それは未練だった。

先生がざわめくクラスを静止させ出欠と連絡事項をいつも通りにいつもより早めに済ませ、転校生を紹介した。

名前は聞いたこともなかった。難しい漢字だ。

それでもう、僕は転校生にはほとんど興味を無くしていたが、入ってきた少女の顔を見て驚き、自己紹介の際に誰を見ようともせずどこか宙を見つめるその無垢な瞳に確信した。

この子はあの時公園で会った。

古桐(こぎり) (かすみ)です。これからよろしくお願いします。」

抑揚の無い声で挨拶をしお辞儀した。

先生と誰かから拍手の波が生まれ教室を包んだ。

僕はただ彼女の瞳を覗き込もうとしながら無意識に周りに流されながら手を叩いていた。

拍手のせいだろうか、胸が少し高鳴った。

そうして彼女、古桐さんは一番後ろにある友慈のであったか不明なままである机まで行き席に着いた。

それから先生がクラス中を落ち着かせ、半ば強制的に授業が始まった。


放課になると当然転校生は質問攻めにあった。

容姿もいいので人がうじゃうじゃと集まった。

幸い席は近くないので大きな被害はないが、見てるだけで聞こえてくるだけで鬱陶しい。

図書室にでも行く事にした。

普段はあまり利用しないが、この頃は暇で暇で、友達に文字だけでも面白いと勧められたのがきっかけで時折覗いてみることがある。

が、タイトルだけを見ても特に惹かれるものはなく、表紙を基準に選んでみても訳のわからないもの。

安直だが、ある程度暇が潰せればいいので、作りはしないが料理本に手を伸ばした。

案外面白く、食欲もそそられてしまった。

今日の給食はなんだろうな、お腹が空いてきた。

チャイムもなったし教室に急いで戻る。


次の放課も図書室によって世界のいろんな料理の載っている図鑑を眺めた。

その次の放課は自分の周りの料理や昔の料理の本を。

だいぶ興味が湧いてきたが、すぐに冷めて忘れるだろう。

十分な暇つぶしにはなった。

今日の給食は久々に、いつも以上に美味しく感じた。

給食の間も転校生は班内で引っ張りだこだ。

僕が居ない間の教室では他クラスからも様子を見に来た奴らも多いそうな。

よくもまあ飽きないものだな。

さて、この熱が冷めるのはいつ頃だろうか。

少なくとも僕の料理への熱が冷めるよりは長くかかるだろう。

こんな事を思っているのだから僕も彼女に興味があることはある。

あまり認めたくはないが事実は事実だ。

けれども、現状近づき難いし、あの輪に入りたくもない。

それと以前話したというのが謎の余裕を生み、まあ後でいいかと見栄が手伝って後回しにする。

あの子と話せるのはいつ頃になるだろうか?

それともひょっとしたら向こうから話しかけてくれるかも、という淡い期待を浮かべ終えると掃除のチャイムが鳴った。

気だるさとともに机をつり後ろまで下げる。

適度に適当に掃除を済ませ、ジャンケンで負けて今日のゴミ捨て係に。

だが、逆に幸運なんだろうか、「ついでに古桐さんにゴミ捨ての場所を教えてあげて」と提案され、案内する事に。

もちろんゴミは重くはないが僕が持つ。

廃棄場に着くまで謎の気まずさに包まれ無言。

到着手間でやっと「もうすぐ、あそこにある。」と切り出しそれだけ。

「ここに、まあ置いてもいいし放り投げてもいいよ。」

「分かった。」

「あ「ねぇ、職員室って何処だっけ。」」

帰り際も当然無言。だったが、なんとか話しかけたが遮られてしまった。

「帰りに寄らなきゃ行けないから、後で聞くのも手間だから今ついでに教えて。」

「あ、ああ、うん。こっちだよ。」

少し遠回りして、表札が見えるところまで案内して「あそこだよ。」と教えた。

「ふぅん、ありがとう。」

一応お礼は言われたが、教室に着くまでは相変わらず無言だった。


そんなわけで本日の授業も全て終え、帰りの会も今しがた終わったところだ。

そんなわけで転校生の取り合いが始まっている。

誰と帰るなんて微塵も興味が無さそうな顔でいくつかの案が出るのを待って、「ごめんね、私帰りは職員室に寄らなきゃ行けないから。」と全ての案をやんわりと却下した。

「だから、また明日にでも。」

そのフォローのおかげで周りは盛り上がった。

その対応を見ていると少し友慈を思い出した。

そんなわけでだいぶ気が抜けていて忘れ物をしている事にきづいていなかった。

帰り道で友達に「明日の宿題は面倒くさいよな。」と言われたがやっと思い出した。

ただ面倒くさいだけじゃなく、もし忘れでもしたら2回目をやって再提出のペナルティがつく。

非常に面倒だ。

学校と自宅、どちらかと言えばまだ学校側の方に近い道を未だに歩いていたので、引き返す事に。

校庭には部活に勤しむ上級生の姿。

廊下ですれ違うのは他クラスで遅刻した者。

転校生のおかげで話題を全て掻っ攫われたが。

そんなわけで教室にはその話題の人本人がいた。

「どうしたの?」

こっちのセリフだが、教室に入る前に気づいてても声をかけられなかった僕が言われるのは当然だろうな。

「ちょっと宿題を忘れて。」

「そう。」

「君は?」

「私もよ。」

以外だ。

が転校初日だからそういう事もあるよね。

「へー。」

特に気にしてないように振る舞い宿題をカバンの中にしまうと、すぐに教室を出ようとした。

「ねぇ。」

「!。何?」

勢いを殺すため教室の壁に手をついた。

「私、まだこの辺りの道覚えてないから途中まで案内してくれない?」

「えっ、と。うん、いいよ。」

特に断る理由もないし、むしろ好都合だった。

何が好都合なのかは曖昧だが。

入り口の近くで転校生の支度が終わるまで待って、こちらに近づいてくるのを確認していつもより少し遅くを意識して下駄箱目指して歩き出した。

と、早速彼女の靴入れには紙切れが入っていた。

少し雑だが、おそらくラブレターだろう。

転校生がそれをどうするのかを気になった。

普段は興味がないと虚勢をはるが。

案の定転校生は、靴を履き替え、掃除用具入れの隣に置いてある屑かごにそれを捨てようとした。

当然僕には止める権利はないが、

「ねぇ。」

僕はそれはダメだと思うから。

「何?」

動きを止めてこちらに振り向いた。

「捨てるの?」

「ダメなの?」

一度自分が持ってる紙に視線を落としてから僕に聞き返してきた。

まるで僕の方がおかしいかのように。

「じゃあ、どうして捨てるの?」

「ゴミはちゃんと捨てないとダメでしょう?」

確かにそうではあるが、

それをゴミと認識するかどうかは僕じゃないし、

「せめて読んであげるくらいはいいんじゃない?」

でも、僕はそういうのが目の前で起こるのは嫌だから。

「え?」

転校生は少し驚くようにして手に持ってる紙を確かめた。

「あ、ほんとだ。」

そういって、手に持つ紙を広げて読み始めた。

どうやらそれがラブレターだとは気づいてなかったようだ。

「初めて会った時から君の事が好きになりました。」

「え!?」

「どうかしたの?」

読み上げるのを止めた。

「なんで読み上げてるの!?酷くない?」

「あなたが『読んであげろ』って言ったんじゃない。」

さも、僕がおかしいかのように。

「いや、読んでとは言ったけど声に出してとは言ってないよ!」

「自分で言ったくせに注文が多い。」

「えぇ〜…普通は手紙を読み上げないでしょ。」

「普通はそうなの?」

「普通は読む前に捨てないし読み上げもしないよ…」

「へー、そうなんだ。」

何かを理解したように頷いて、手紙の続きを黙々と読み始めた。

「はぁ…」

なんだか普通と違うな、この子は。

前に会った時もこんな感じだっけか。

呆れてる間に転校生は読み終えた手紙を捨てようとしていた。

「あっ」

呼び止めようとする時には既に手から離れ屑かごへ落ちていた。

「何?」

もう遅いよ。

「いや、あっと、あの、」

「何?」

小首を傾げながら僕の元へ、もとい昇降口へと。

「返事はどうするの?」

誤魔化すためとは言え、気になってもいたが、とっさに出て直球すぎたので少し恥ずかしくなって顔を背けた。

「答えなきゃダメなの?」

やはりこの転校生は普通とは少し違う。

「あ、あはは。そうだね。でも、せっかく読んだんだし、それに相手から聞いてくるかも知れないよ?」

でも僕はこういう人間だから。

「んー…その時は断るかな。」

「ちなみに、どうして?」

気になった。

「私は私が好きな人としか居たくない。わがままだけど誰もが思う事だと思うよ。でもそうはいかないのが学校だし。

だからもし、仮に私が誰かと付き合うとしても、

その人はたぶん私が好きになって私から告白した人だと思うの。」

結構、ロマンチックなんだな。

「そうなんだ。」

答えを聞けたので大人しく昇降口まで僕もいく。

「まあ、理想なだけだけど。さ、早く帰りましょう。今日は疲れたわ。」

「そうだろうね、放課中ずっと囲まれてたの?」

それから僕が先行して転校生を案内するようにゆっくりと歩いた。

「ええ、うるさいのなんのって。同じ質問を次から次へと、まったく…そういえば、あなたは教室に居なかったわね。」

「そうだね、君と理由は同じ。うるさい時は今日みたいに図書室なんかに行って暇を潰してるよ。」

「へぇー、私もそうしようかな。」

「君の場合は人がたくさん付いてきそうだけどね。」

「そうね、うるさくてかなわないわ、ほんと。」

久々に会話が弾んだ。

お互いに見合う事なくただゆっくり歩きながら話している。

そうこうしてるうちに着いた目的地は、いつもの公園。

転校生はここからの道なら覚えてるというのでここで別れた。

今日も公園はいつも通り人気がなく、遠い闇に沈む夕日が占領して染めていた。

公園を眺めていても変わらない、何もないから僕も家へと帰った。


ちょっと社畜社畜しすぎて日付感覚が狂っている合間に12月。

なんとか1ヶ月空ける前に更新できて良かったです、とともに遅れた事に謝罪を、すみませんでした。

今回も本当は次話とひとまとめにするつもりだったのですが、時間が押し迫っていたのと区切りがいいので分けます。

やはり書いていると自然にストーリーが追加されて想定と少し違うけどだいぶ違う量になってしまいますね。

まあ書いてて楽しいから良いんですけどね。

それでは今月は休みが多いので更新が早めに出来そうですが早くできるとは限りませんとあらかじめ。

ですが頑張るのは変わりなく、それではそれではまた次回。

新キャラ(?)も登場でまだまだ翻弄する拓人くんです、

今話も読んでいただきありがとうございました。



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