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拾いふだ  作者: lycoris
24/27

ボク

掃除が終わり、自分の席に着く。

後片付けを終わらせた生徒から段々と着席をしていく。

席に着いてもなお、周りの友達と話しているのも居る。

俺はボーッと、友慈の周りにいつもよりも多く集まっている生徒たちのガヤを聞き流すように窓の外を見ていた。

中には隣のクラスの生徒も紛れている。

それだけ友慈には人脈があった。

誰とでも気兼ねなく接する姿勢は多くの友人を作った。

だが、友人は多かったが、誰とも、文字通り隔てなく平等に接してきたからこそ親しい友人は数えるほども居ないようだ。

それは、友慈が思う親しい友人、そこに俺は含まれているだろうか。

儚い希望が少しだけ胸の中に渦巻く中、先生の号令により友慈を取り巻いていた生徒たちが散らばる。

教室から余所者がいなくなり、全員が席に着いたのを確認して、

今日は特別に、と先生は友慈に学級委員の仕事を任せた。

本来の学級委員も是非にと友慈を推して、それに負けて友慈は普段の学級委員のように普段とは少し違和感を覚える号令をクラスのみんなにかけた。

それにみんなもいつも以上にピシッと答え一斉に立ち上がった。

俺はまあいつも通りだが。

そして統率の取れてなかった礼のタイミングも今日は一体感がみられた。

だが、ここで気が緩んで着席のタイミングは見事にいつも通り。

そんな細かい事は一々誰も気にしないだろう、

先生がいつも通り連絡事項を坦々(たんたん)と伝える。

プリントも一列分を最前列の生徒に私、それぞれ前から順に取って後ろに回していく。

まだ四月。

今学年も同じクラスにはなれたが、残念ながら間に1人他の生徒を挟んでいる。

この子ももちろん友慈の友達ではあるが、俺とは初めて同じクラスになった。

という事は友慈ともだが、既に前から知り合っていたようだ。

連絡事項を全て伝え終え配布物も予備のだけ。

そうしてまた友慈の号令を経て帰りの会が終わる。

友慈は明日は当然忙しいようで日曜日は夕方にはこの町から出立をする。

向こうには一足先に着いて荷物は月曜日の朝には全部揃うそうだ。

それで引越しは完了。

なので今日は学校とは別に、隣のクラスの生徒も集めてお別れパーティーを開くそうだ。

俺も主催者に一応と誘われはしたが、返答を考えると言ったすぐ後に友慈本人に断ってくれと頼まれた。

頼まれたからには今日は断ったので、帰って宿題でもやる。

その代わりにと、日曜日のお昼に公園で待ち合わせをされた。

暇だし、別れの言葉も言いたいので素直に承諾。

理由は尋ねない。きっと向こうから語ってくれるから。

そうだ、今日は暇だし、何か餞別代わりのプレゼントでも買いに行こうか。

友慈には結構世話になってばっかりだし。

そうしよう。

「またな。」

すれ違う友慈が言った。

「またね。」

返事はすぐに自然と出た。

そのまま、教室に残る友慈を尻目に先に教室から出る。

教室から出たら廊下がある。

廊下の角に階段がある。

そこを(くだ)って、間に踊り場を挟んでまた階段。

階段の先にはまた廊下と下駄箱がある。

昇降口をくぐると運動場が広がり、脇には東西南北、位置としては不正確だが4つある。

そこを出れば、通い慣れた通学路。

朝の班とは違う道を通って帰る。

わざわざ遠回りするのは面倒だ。

去年までは帰りも数人で固まって帰っていたが、

今年からはそこまで縛りは無い。

ルールはあるが、先生が見て無いので関係無いようなもの。

まだ春だ、これから段々と日がしぶとく落ちなくなる。

それに去年も何回か一人で帰っていたし。


そういえば、去年の今頃は何を楽しみではしゃいで帰って、

それで途中から何を嫌って一人で帰ったんだっけ。

確か、公園で…


気がつくと公園の横道を歩いていて、立ち止まって公園の中を覗き込んだ。

日はまだ暮れてない。

子供達もまだ見受けられ無い。

公園には誰も居ない。

本当に?

何故か、どうしてか、『誰も居ない公園』が嫌で、認めたくなくて、否定するために近づいた。

が、入り口で足が(すく)んだ。

無意識に手を伸ばしていた、

誰も居ない、影すら座っていないベンチに。

誰かの面影を求めて。

ふと指がピクンと跳ねる。

そういえば、日曜日はここに集合だったな。

はは、何度もここで友慈と遊んだじゃないか。

それも、今度の日曜日で最後…

掌を返し何もないのを認識し、勝手に開いていた口で寂しさを噛み締め、何もない掌で虚しさを握り締めた。


公園に背を向けて立ち去る。

今はここに居るより、少しでも良いものを友慈にあげたい。

探さなきゃ、ここに居ても見つからない。


さようなら。


帰りの会で友慈は誰よりも深く丁寧なお辞儀をしていたのを思い出した。

友慈はまだ2年しか居ないけど、それだけ友慈に取って学校は、クラスは…

俺はどうなんだろう?

俺にとって…俺はどう思っているんだろう…


帰って来てすぐにベットに誘われ、少しだけ横になると起き上がれなくなっていた。

いつも通りやる予定の宿題には手をつけず、今日はと友慈へのプレゼントも探さずに、自問ばっかりを繰り返していた。

答えはあまり返ってこない。

答えはあまり出てこない。

探している筈なのに。

きっと何かが欠けているんだろうか。

部屋を照らす電灯に手を伸ばした。

もちろん届かない。届きはしない。

でも俺は、何かに(すが)って手を伸ばした。

何かを欲っして、求めて。

そういえば、夢、の中でも俺は手を伸ばそうとしていたな。


あ れ ?


燃え盛る教室の中で、「それでも」と涙を(こぼ)してまで手を伸ばした。

はずだ。

受け入れられないって、諦めずに。

なのに、既視感が。

何故、あの場でただ涙を拭っていたんだ?

わからない。

昔、僕は、。、あ、れ、?、

記憶の中にノイズが走る。

あの時、あの場所を嫌でも覚えている。

のに、自分の姿が思い出せない。

俺は確か、、、 。。。らかだは僕



_これ以上失わないように_ ̄失くしたものを後悔するだけで ̄

少しでも零さないように/散らばったものをかき集めようともせず

ただ立ち尽くしこれ以上を望まない\何とか拾えないかと必死になる

諦めている暇なんてない] [ただ結果を受け入れるだけ

そして-そうして

落としたものを拾えもしないまま


僕は|は俺



「お兄ちゃん?」

肩を揺すられた。

最近妹は、呼びかけただけでは中々起きなくなった僕を肩も揺すって起こしてくれる。

だから今も目を開けた。

「もう、昼寝ぇ?夜寝れなくなっちゃ、って!お兄ちゃん大丈夫!?」

急に口調が変わった。

「どうかしたか?」

驚く妹の顔を見つめる。

「目が赤いよ!すっごく!」

片目を閉じて手で抑えてみるが何も違和感はない。

ただ涙で濡れているだけ。

「そうなのか?」

「違うよ!逆、右目だよ!」

今抑えてるのが右目なので今度は左目を抑えてみる。

「何ともないけど?」

左目から映る妹を含めた景色が液体に邪魔されて見え辛い。

「えぇ?本当に?」

「うん」

「痛くて泣いてるんじゃなくて?」

「え?」

液体の正体は涙だと分かった。

「あ、あぁ、うん。あと眠くもないよ。」

「じゃあ何で泣いてるの?」

「えっと…」

答えに詰まる。自分でも分からないから。

「ゴミが入っちゃったから?かな。」

「そうなの?とりあえず、お母さんに言ったら?」

「いや、それほどの事でもないから、大丈夫だよ。」

「うーん…」

妹は何かを考えながら部屋の入り口まで行き、

「もうすぐご飯だから食べる気あったら降りてきてね。」

食欲か、あんまりお腹は減ってないけど…

「うん、わかった。」

最後に遠くから覗き込んで僕の部屋を出て行った。

少し間を空けて妹の後を追う。

風呂場ですれ違った時にはもう僕の顔を気にしていなかった。

僕は風呂場の洗面台で手を洗いながら自分の顔を鏡で確認する。

何もおかしな所はない。

ただ目が左目が紅く染まって、右目からはただ涙が(あふ)れているだけ。

涙を拭わないのなら泣かせておけばいい。

拭えないのなら(こぼ)れるしかない。

こぼれ落ちたものは拾えない。

僕にとっては当たり前の事だ。

でも、違う。

でも、違う。

僕は僕だ。

俺は、僕だ。

だから僕は涙を、俺の流した涙を拭わない。

この体は僕のだ。

この心は僕のだ。

何一つ俺のものなんて無い。

目を閉じる。

この世界に俺は居ない。

この世界は僕のだ!

過去に、前世とも関係無いこの世界は僕の世界だ。

誰が、例え先生が邪魔しようとしたって僕だけは。

おじさんはどう思うかな?

でも、僕はもう決めたんだ。

俺の世界はここじゃ無い。だから、ここは僕の世界。

俺は僕だから。

左目を(こす)る。

目を開けて鏡で確認する。

まだ赤が(にじ)む。

(よど)んで見えるから水で顔を洗った。

自分の中から自分を消す。

タオルで水気が取れるくらい軽く吹いてもう一度確認する。

赤が消えいつも通りの目。

「よし。」

心が軽くなるから体も軽くなる。


呼ばれる前にリビングに行き、夕食の準備を手伝う。

途中で呼び止められ目を覗き込むように見られたが、異常が無いと確認すると大盛りによそってあるご飯を手渡された。

自分の席に着いて各々が席に着いたのを確認して、

「手を合わせまして」

「「「いただきます」」」

妹が音頭をとるので家族でそれに応えた。

「ぬおおおおお!」

「うるさいよお父さん。」

「何!今日も我妻の飯が美味いのに感動してるんだ!な、拓人?」

「うん、僕もそう思うよ。」

父さんは一瞬目を見開いた。

「だよな!」

そして、それを誤魔化すように母さんの料理を褒め続けた。

我が家は食事中は基本無口だ。

父さんが話しかけるかテレビを付けてないとみんな食べるのに集中している。

「ごちそうさまでした」

今日は早めに食べ終え片付けてリビングに出ようとした時に、

「拓人、何かあったか?」

父さんに呼び止められた。

「ん?(なん)にもないよ?」

「そうか。」

伏し目がちに父さんは食事に戻った。

部屋に戻って窓を開ける。

椅子を窓際に持って行き月を探した。

曇りの夜。明日は雨が降るかもしれない。



長い夜を越え次の日の朝。

いや、今は昼頃だろう。

起こされないという事は妹は出かけているんだろうか。

昨日は夜更かしをしてしまったのでまだ少しボンヤリする。

立ち眩みに襲われながらも洗面台に向かう。

途中で何度かあくびをこぼして。

冷たい水で顔を刺激してやる。

目が醒める。

そう、僕は今日から僕なのだ。


さて、今日、と言っても少し寝過したのでもう半日もないだろうが友慈に何をあげるか決めないと。

考察を始めようとした時、昼飯が出来たと声をかけられたので、ひとまずリビングに向かった。

朝を抜いたので少し大盛りの焼きそばを食べた。

満足して、しばらくソファでボーッとしてると父さんが隣に腰掛けた。

「なぁ、何かあったか?」

「…」

「しつこいのは分かってるが、言ってくれないと分からない事もあるんだ。俺にだけでも良いから離してみろ。」

後ろで母さんが食器を洗っているけど。

「ないよ、本当に。」

じっと僕を見つめる。

「…少し前に、噂で聞いたんだが、」

堪え兼ねた父さんが切り出した。

「お前、霊感があるのか?」

「いや、ないよ。」

「ッ…それでな、誰かがお前が幽霊が見えるって事で気味悪がって仲間外れにしようって言うのを耳に挟んだんだ。」

「そういうのもあったね。」

「あったんだな?」

「でも、お払いを受けたってみんなに言ったら少しは戻ったよ。」

「て事は、まだ、その残りがあるって事か?」

「フッ、いいや、そんなんじゃないよ。確かに一部ではまだあるみたいだけど。」

「じゃあ「まず、僕はそんな事に気にしないからそんな事で沈んでもないよ。」

悪いけど遮らせてもらった。

だって本当の事だし、この世界の父さんは僕の父さんだ。

僕だけの父さんだ。

他のみんなだってそうだ。だから、この世界が僕の世界である限りそんな事は些細な、気に止めるようなことでもない。

「僕は大丈夫だよ。」

笑いたいけど上手く笑えそうにないので愛想笑いを浮かべた。

「そうか、ならいいんだが…」

父さんは僕が無理してないか疑ってるようだ。

でもそれは心配しているという事。

その事はとても嬉しい事。

「ありがとう。」

僕はお礼を言って立ち上がり自分の部屋に戻った。


僕があげられるもの。

でもどうせなら良いもの、大事なものをあげたい。

それならやっぱり答えは簡単に出た。

3枚のカードを机の上に並べた。

3枚ともあげたいけどあげたくない。

とりあえず1枚に絞るか。

ちょうどそこに、

「ただいまー!」

妹が帰ってきた。

妹はそのまま自室に向かった。

何となく呼び止めてしまった。

「あ、ちょっと。」

「何?忘れ物とりにきただけだから早くして。それか後にして。」

ダメだな。

僕が選ばなきゃ。

「ああ、わかった。やっぱり何でもない。」

「あそ。じゃ。」

慌ただしく、それでもしっかり「いってきまーす!」と残して忘れ物と傘を持って玄関から走り去って行った。

昔自分もこんな風に毎日飛び出して遊んでたのを思い出す。

でも、僕はあんまりそんな記憶は無いな。

僕の記憶じゃ無いものは要らないのに、どうしていつもいつも不意に思い出してしまうんだろう。

思い出とはそういうものなのだろうか、

それとも、これは、これが後悔なの?おじさん。

今度は僕の記憶を思い出す。

今みたいな曇りじゃなくてうっとしいくらいの日差しの夕暮れ。

そう、僕は公園で、おじさんと。

頭が痛む。

まだ俺が抵抗しているのだろう。

ベッドに寝転びまくらに顔を(うず)め、必死に自分で自分を消す。

もう、どの自分を消すかで迷わない。

もう自分は僕だ。

僕は自分を消す。俺を消す。

こんな過去は僕のじゃない。

あんな世界は僕のじゃない。

僕の今と世界はここなんだ。

邪魔させやしない、誰にも。

僕で俺を抑えつける。

ひたすら俺を否定して、僕を確立しようともがく。

足掻いているのはどっちだろうか。

滑稽だ。


結局、友慈にあげるカードは次の日の朝に決まった。

昨日の夜の事はあまり覚えてないし思い出したくも無い。

だから、今日の朝、夢見無い清々しい寝起きに常識的な考えで決着した。

昼飯を早めにちょうだい と母さんにねだり、珍しいと言われたが要望に応えてくれるようで安心した。

そして、着替えて簡単に遊びに行く用意をして、プレゼントも忘れず持って、リビングで食事が出来るのをテレビを見ながら待っていた。

今日はそうめんだ。

腹八分目まで食べると、少し急ぎがちに片付けて家を出ようとした。

母さんに呼び止められた。

「友慈くん、今日で最後なんでしょう?いっぱい遊んでらっしゃい、今日は少し羽目を外しても良いから。たくさん、たくさん遊んでらっしゃい。」

母さんは知っていたのか。

それにしても、どうしてそれで母さんが半泣きになるの?

友慈が居なくなるから?友慈のお母さんが居なくなるから?

それとも、僕が笑っているから?

思えば、こんなに自然と笑顔になるのは久しぶりだ。

何をやっても楽しい、何があるのか楽しみ。

楽しみで仕方なくて楽しい。

「うん!分かった。じゃあ行ってきます!」

荷物を持って笑顔で家を出る。

「行ってらっしゃい。」

母さんは笑顔だった。

震えながら言い終わった後にしゃくりあげていた。

それから後ろを向いて服の袖で顔を拭いていた。

僕はそんな事を気にもかけずに友慈との待ち合わせの公園に向かった。


公園に少し早く着きブランコに揺られて待っていると友慈も予定より早く少し大きな物を抱えて来た。

「なんだ、てっきりあっちに座ってるのかと思ったよ。」

「座ってるだけじゃ暇だから。」

「それもそうだな。」

友慈は少し笑って僕の隣の空いてるブランコに座った。

地面を蹴って左右に揺られる。

少しの間無言で揺られていると、

「なぁ、」

友慈が問いかけてきた。

「仲直りってどうすればいいかな?」

「謝るしか無いんじゃない?」

急にどうしたんだろうか。

「向こうにさ、昔喧嘩した奴が居るんだよ。だから、何とか仲直り出来ないかなって。でも、謝るって「気持ちがこもってればいいんじゃない。」」

適当に、僕が思ったことを言った。

「そうだな。」

「うん、だってそうするしかないだろ?」

「うん。」

「君の事だ、どうせ何かをあげるとかってのは考えてあるんだろう?」

「当たり前だ。」

「ふふ、じゃあやっぱり気持ちを込めて謝るしかないんじゃない。」

「そうだな、はは。」

友慈は立ち上がって、全身を使って勢い良くブランコをこぎ始める。

「よし、じゃあ靴飛ばしでもするか!」

こぎながらも器用に片方の靴を半脱ぎにする。

「いいよ!」

僕も半脱ぎにしてから、友慈に追いつくように立ち上がって加速させた。

2人のタイミングが重なった時「せーの」で一緒に靴を宙に蹴り出す。

友慈は上に力任せに高く高く。

僕は鋭く真っ直ぐ距離を稼ぐように。

結果、靴がバウンドして後ろに戻ってしまった友慈と勢い良く転がって行って差をつけて僕が勝った。

「もう一度だ!」

悔しそうに片足で飛びながら、敗者のペナルティとして自分の靴と僕の靴を取りに行った。

僕はだんだんと減速して、友慈の帰りを待っていた。

「次はもっと高く飛ばしてやる!」

僕に靴を返して、すぐにブランコの上に立ち上がって勢いをつけていた。

「ふふ」

楽しくて笑いがこぼれた。

「よーし、行くぞー!」

僕が勢いをつけたのをチラッと確認すると高々に宣言して、

「せーの!」

靴をまた高く高く飛ばした。

僕もさっきよりは高くなってしまったが作戦は変わってない。

友慈の靴が木に吸い寄せられるように飛んでいる。

僕のはバウンドして転がっている。

案の定友慈の靴は木の枝にひかかって僕の勝ちとなった。

ひかかって居なかったらたぶん負けていただろう。

「あっ!」

「ぷふ」

しょうがないので僕も自分の靴は自分で取りに行き、履き終えたら友慈に肩を貸して靴がひかかった木に向かった。

「あれ?どこ行った?」

「あそこあそこ」

友慈が指をさす。

「あー、あれー。ちょっと待って。」

石ころを探そうとしたら友慈がに木に向かっていき、もう片方の靴と両足の靴下を脱いでそのまま木に登り始めた。

「おー!大丈夫?」

「おうよ!」

そのままスイスイと枝を揺らしながら登って行った。

とりあえず、手に持った石ころを靴にぶつけてみた。

2回目で当たったが反射してデコに返ってきた。

「いった」

僕がデコを気にしてる間に友慈は自分の靴を取っていた。

「いくぞー」

そのまま靴を僕の方に投げてきた。

「おっと。」

なんとか受け止めた。

「ナイス!お前も登ってこいよ。」

「えー。」

口では否定するも少し惹かれてもいる。

「いー眺めだぜ。」

友慈に背中を押されたのなら行かないわけにはいかない。

僕は靴を履いたままなんとか友慈の下の枝まで登ってきた。

さすがに2人も同じ枝に乗ってたら危ないから。

足下を安定させてから友慈が薦める景色を見た。

見慣れた夕暮れの公園が脳裏に浮かぶ。

目の前にはまだまだ眩しい太陽が照らしている真昼の公園。

その違いも今だけのものだと、涼しい風に煽られながらしばらく物静かな公園を友慈と一緒に眺めていた。

「俺さ、やり残した事があるんだ。」

「今回でそれをやり遂げたいけど、少し自信が無くってさ。」

やめてくれ。

「やっぱり忘れてるってのは怖いもんだな。」

この世界は

「また忘れちゃうのかと思うと、」

僕の世界は

「不安で、次があるなんて考えたくないのにさ。」

次なんてない。

「前回は初めてだったけど、」

過去なんて、僕の世界には。

「これから先だんだん慣れていっちゃうのかなって、そういうの嫌なんだよね。」

「大丈夫だよ、」

「ありがとう。」

「うん、友慈ならやれるよ。それに次なんて無いかもしれないし。」

思わず意地の悪い事を言ってしまった。

「はは、それもそうだな。当たり前のように用意されてるって思ってたわ。ははは、俺はもう、自分で言ってて慣れてきてるのかもな、ははは。あっー…」

愛想笑いを浮かべながら片手で頭を抑えて落胆する。

「そうだよな。今回でやって見せるよ!また忘れちゃったとしても、今回のようにまた思い出せるかもしれない。いや、思い出す!」

「その粋だよ。」

「ああ!やってるさ!」

うおー!と叫んで友慈は木の上から飛び降りた。

見てるこっちの足まで痛くなってくる。

僕は嘘を吐いてしまった、友慈に。

僕は裏切ってしまった、僕を。

そのせいか、胸がズキリと痛む。

「さ!今は遊ぼうぜ!」

友慈の言う通り、今は遊んでおくしか出来ない。

そそくさと落ちないように木から降りて、

遊具鬼を始めた。


散々走り回って日が傾きかけた頃、

友慈が思い切り転んだ。

駆け寄ると友慈は思い切り笑った。

釣られて僕も笑い始めた。

友慈の手に誘われ、汚れなど気にもせずに一緒に寝転がって大笑いした。

近所迷惑なんてなんのその。

この時を…この時が…

僕の世界がここに…でもそれもすぐに、

笑い疲れて涙が出た。

それを機に一気に涙が溢れ出した。

自然に笑い声も嗚咽としゃっくり変わっていく。

それでも友慈は笑い続けている。

僕だって笑いたいのに、押し寄せる悲しみが止まらない。

今までの悲しみが、僕が背負うって決めていたのにこんなにあっさり、ここに雪崩れるなんて。

因果なものだ、公園(ここ)でいっぱい笑って、いっぱい泣いた。

でも、もうここではそんな事は起きないだろう。

だってもう、僕が一緒に笑って泣いた友は誰一人居なくなってしまう、みんな公園(ここ)から出て行ってしまう。

いつか僕も…

寂しさが体を寒くし、伝う涙が体温を温かくした。

「クッ…ソッ!…‼︎」

拭わないはずだった涙も、腕で隠して、一人寝転んで、笑っている友達の横で泣いていた。

(あふ)れる思い出が寂しく涙に変わる、笑いかけてくれる思い出たちが僕を励ましてくれる。

僕は泣きながらそれを繰り返していた。

次第に可笑しくなって友慈と一緒になってバカ笑いしてた。

それでも(こぼ)れる涙は止まず、それでも笑い声も止まない。

「あぁ…もっとここで遊んでみたかったなぁ…」

僕じゃない。

声が少し震えていた。

友慈が鼻水を啜った。

僕だって全く同じだよ。

「お前、この世界では何する?」

「僕は…ここは僕の世界だから、だから何もしないよ。」

「そうか…そう、か。」

「うん」

「…そういうのも有りだな。」

「ありがとう。」

「今度、またいつか、いつまで続くか分からないけど、いつ終わるか分からないけど、そういう風にいつか俺も。」

「分からないなら、今からじゃダメなの?」

「ははは、もう決めてるんだよ。だからいつか、さ。」

「そうだね、先は長そうだ。」

「いつか、やり残したことがなくなってから。」

「甘いよ。」

「そうか?」

「それじゃあ絶対に無理だよ。後悔しないなんて事は出来ないなんだよ。」

「じゃあ、なるべく後悔をしないようにやっていくさ。」

「それ自体が後悔だよ。『後悔したくない』って事がもう後悔なんだから。」

「手厳しいな。」

「それ以前に、きっと友慈には合わないよ。」

「そうか?結構羨ましく思えてきたぞ。」

「友慈には無理だよ、僕の知ってる友慈にも。だから友慈は今のままで良いと思うよ。」

「そっかなー。まあありがとう。」

「ううん、これは僕の生き方だから。この世界での。」

「結構強情なのな。」

「お互い様でしょ、ふふっ」

「はっはは、そうだな。ははっ」


それから色々と遊んだ。

僕と友慈の2人だったが色々遊び走り回った。

友慈が「せっかくだからもっといっぱいで遊びたかったが、」

と言うもんだから文句を言おうとしたら、

「今日はこれで良いな。それにそれは金曜日にやったし。」

言えなかった。

「でもあそこにお前がいれば俺はもっと楽しかったんだがな。」

「そうかな。」

「ああ、きっとだ。でも、それはまた今度でいっか。」

「そう、だね。」

それが出来るのは友慈だけ。【僕】には出来ない。

それにこれでよかったのだ、僕は。

だから。

「また、今度ね」

僕にとって二度と訪れる事のない約束をした。

これも、後悔。

胸に残るシコリ。

でも、これが、これこそが僕と友慈を繋げてくれるような気がして、この後悔をずっと。

散々遊び倒し、日が暮れ、街灯が(とも)り始めた。

ちょうど良い時間だ。

今はお互いに最初のようにブランコに揺られ他愛もない話をしている。

そして、友慈が切り出した。

「もう暗くなってきたな。」

「そうだね、少し寒いかも。」

「ははは、大丈夫か。なら、そろそろ帰るか?」

「…そうだね、そうしようか。」

楽しかった時間は早く過ぎる。

いつだったかその逆を経験していたのを少し思い出した。

でも、それは仕方のない事、時の流れは受け入れるしかない。

「最後に、お前に渡したい物がある。」

友慈が立ち上がって自分の大きいバッグから中身を取り出した。

「これは俺の父さんが大事にしている物だ。」

絵だった。

「だから俺に譲ってくれた。」

2人の青年が正反対を向いている絵。

「だから、これをお前にやる。」

片方が暗く、片方が明るい。

「ありがとう。」

受け取ってしばらく見ていると、

「どうだ?」と聞かれた。

絵には詳しくないし興味も無い。

だけれども、この絵を見ていると少し友慈を思い起こす、かもしれない。

「うん。ありがとう。」

「へへ。」

照れた友慈が笑う。

その絵を一旦置いて。

「じゃあ、僕からも。」

そう言って3枚のカードを取り出した。

「ん?」

たぶんこのカードたちを見た事が無いんだろう。

「僕にとってこのカードが大事な物だよ。

だから、友慈にはこれをあげる。」

渡したのは何も書かれてい無いカード。

「なんでそれなんだ?」

「これはとっても大事なカードなんだ。

僕にとっては等しく全部大事だけど、人によっては格付けしちゃうからしょうがないんだけどね。

それで、おそらく大体はこのカードかこっちの死神のカードが人気だと思うよ。」

「へー。何で?」

「ここだけの話、このカードは神と繋がれるカード。残念だけどあと1回しか使え無いけど。」

「お前が使ったのか?」

「いや、僕は拾っただけ。それにどれも大事だからどれも使って無いよ。」

「そんなカードを拾ったのか、相変わらず強運だな。」

「うん、自分でもそう思うよ。はは、本当に運が良かったよ。」

手渡したカードを友慈が受け取った。

「まあ、ありがとう。」

「使ってくれてもいいんだよ?」

「いや、さすがに使え無いだろ。」

「ふふ、ありがとう。」

「俺の方こそ。」

「でも、もし本当に必要だったら使ってね。」

「うん、まあその時は頼っちゃうかもしれないけど。」

「それでいいよ。」

残りのカードたちを見ながら言う。

「うん、じゃあそろそろ帰るね。」

「そうだな。」

友慈が手を差し出した。

「うん」

その手を握った。

「またね。」「またな。」

「次会う時は教室でかもしれないけど、せいぜいお互い頑張ろうぜ。」

「頑張るよ、僕は、この世界で。」

互いに握る力を強める。

力む友慈の顔が笑えてくる。

そして互いに笑い合って、笑顔で別れた。


これで、僕と友慈はお別れだ。

先に公園を出て行く友慈。

心が、夜風に吹かれた木々のように、ざわつく。


僕も帰らなきゃ。

2枚になった大事なカードをしまって、

絵を抱えて、大事に抱えて帰った。


今回は2話に、「ボク」と「大事な物」に分けようとしたのですが、くっつけたままでいいかと、普段に倍はあります。

更新が遅れた件に関しては主にこれのせいですかね。

すみません。


そんなわけで、贈り物「失墜」で友慈が友慈に見せたカードは、この『何も書かれていないカード』です。

結局使われはしないまま彼は死んでしまいましたが。

死んだ後に…

まあこれは後ほど回収するという事で、少しネタバレでしたが、贈り物の宣伝にと。


区切っても良かったなぁと今でも思ってますが、遅れた分はしっかり量はあると思うので、

でも、こんなに長いと所々ミスがありそうですが、

読んでいただきありがとうございました。

次も遅れる可能性はございますが、なるべく頑張ります。

それでは

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